全日本トライアル選手権第7戦は岐阜県坂内村「坂内バイクランド」で開催された。この会場は高低差のあるダイナミックなセクション設定が特徴である。水分を含んだ急勾配の沢もあり、見た目よりグリップが悪く、油断できないセクション群である。
今シーズン5勝1敗の藤波貴久(Honda)は、今日もライバル黒山健一(ベータ)との戦いに挑んだ。今年もタイトル獲得濃厚とはいえ、前戦の関東新潟における藤波の勝利は、黒山のミスによる辛勝だった。藤波としてはここでパーフェクトな優勝を遂げたいところだ。9月23日にフランスで開催されたデ・ナシオンへの日本チーム派遣中止により、藤波、黒山ら代表選手は渡欧することなく日本で十分に体調を整え今大会に挑んだ。
15セクション×2ラップによる競技がスタート、まず黒山が第3セクションで1点を失う。さらに黒山は第6セクションでも1点の失点。それを見ていた藤波は第8セクションまでたてつづけにクリーン。藤波は好調ぶりを見せつけていた。
しかし藤波は第9セクションで3点を失った。対する黒山はこのセクションを1点で通過している。ここから2人の熾烈なバトルが始まった。2人はじっくりセクションを下見し、周囲の選手の走りを観察してからセクションに入る。1点を争う接戦だけに下見は実に慎重である。前半の15セクションが終わったのは、競技開始から4時間程かかっていた。
1ラップ目の結果は藤波が合計8点でトップ。黒山は1点差の合計9点で藤波を追う接戦となった。一方、3位争いは1ラップ目を14点で消化した田中太一(ベータ)と17点の小川友幸(ベータ)である。特に田中は小川を抑え、際だった安定感を見せていた。
普段は10セクション×3ラップで行われる全日本選手権だが、15セクション×2ラップで行われるのは珍しいことだ。しかし世界選手権は通常15セクション×2ラップで行われているので、世界選手権に参戦中の藤波と黒山らはこの方式のペース配分には十分に慣れている。残り1時間強というところで2ラップ目に突入する。
2ラップ目の第2セクション。黒山が2点で通過したところを、藤波は3点。ここで同点で並ぶことになる。競技はさらに緊張感を増し、多数の観客が2人のかけひきを見守った。
第9セクションでは2人とも3点で通過。第10セクションは2人ともクリーン。ここまで同点である。続く第11セクションで黒山2点で通過したところを藤波がクリーン。ここで藤波が2点リードとなり、藤波優勝の兆しが見えていた。
1ラップ目に全員が5点になっている第13セクションは、今大会の最難関である。まったくの同点、残る3セクションで勝敗を決めなければならない藤波と黒山にとっては勝負所である。しかし2人ともこの第13セクションは5点となった。ちなみに、この第13セクションを成田匠(ヤマハ)ただ1人が、2ラップ目に3点で通過している。
さて、最終セクションを前にした第14セクションでハプニングが起こった。黒山は難なくクリーンした後に、藤波が登りでグリップを失っての大転落。まさかの5点であった。藤波のミスにより大逆転。黒山が3点リードでトップに立った。
最終セクションを藤波も黒山もクリーンで終え、3点リードで黒山が優勝。まるで前戦関東新潟大会で、最終セクションを前に黒山のまさかの5点が藤波逆転優勝となったことの、全く逆展開だった。
次戦、第8戦東北大会最終戦は2週間後の10月21日、宮城県スポーツランドSUGOにて開催される。
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