近畿大会は、ここ数年恒例となった兵庫県猪名川サーキット。ミニバイクやカートのサーキットに隣設して、険しい沢が続いている。
元全日本チャンピオン山本昌也が設営した12のセクションは、最近の全日本では異例ともいえる難セクションとなっていた。第1セクションから、藤波貴久(Honda)が3点を喫すれば、第3セクション、第4セクションでは藤波の最大のライバル黒山健一(ベータ)が5点となるなど、波乱含みで大会はスタートした。また難セクションとあって、下見もいつも以上に念入りとなり、第1セクションを抜けたときにはすでにスタート後30分をすぎていた。
藤波は、難セクションに多くの減点を加算されながらも、手堅い走りでライバルをリードしていく。黒山はふたつの5点でやや遅れをとっていたから、序盤で藤波をおびやかす存在となったのは、成田匠(ヤマハ)だった。世界選手権参戦から引退して4年目となる成田だが、テクニックの冴えはこのところ復活の兆しを見せている。第6セクションを終えた時点では、藤波に1点差の2位につけていた。
しかし1ラップを終えたところで、やはり2位に浮上してきたのが黒山だった。成田は、随所でマシンを押し上げなければいけないハードなセクション設定に加え、突然初夏を思わせるような陽気もあってか、体力を使い果たしてしまって脱落していった。
2位に浮上した黒山だったが、しかし藤波をおびやかすまでにはいたらない。2ラップ目にはマシントラブルもあって、ペースまで乱れてしまった。
対して藤波は、もはやまったく死角なし。減点数やクリーン数だけでなく、5点をとった数を比べてみても、黒山が8つの5点を叩いたのに対し、藤波は3ラップを通じてたったの2つでしかない。ライディングテクニック、気力、マシン、すべての力がそろった藤波の圧勝だった。
「木の枝にひっかかって岩から落ちたりトラブルもありましたが、それが原因ではないです。今回は完全に敗北です」と試合後の黒山はさばさばと語った。次戦は、5月13日、熊本県矢谷渓谷で開催される。
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