ドゥーハン、今季5勝目!!ホンダ勢、上位4位を独占する走りで、早くもマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得!!
シーズンも残り5戦となったイモラGPは、タイトル争いで上位につけるイタリア勢の地元ということもあって、初日からヒートアップした。125ccのM.メランデリ、250ccのV.ロッシ(A)は、頭髪を赤、白、緑のイタリア国旗に染め上げて注目を集める。ロッシは、レーシングスーツもイタリアカラーにして、イモラに駆けつけた地元の観客の喝采を浴びていた。イモラはボローニャから車で約40分の距離にあって、一周4.930km。アップダウンに富んだテクニカルコースで、毎年、接戦が繰り広げられる。昨年は7月の開催で、青木宣篤と拓磨の兄弟が、500ccクラスでグランプリ史上初の同時表彰台という記録を達成している。今年は開幕前のテストで拓磨が負傷、現在もリハビリを続けているが、治療の合間を縫って今季初めてサーキットを訪れ、関係者の大歓迎を受けていた。また、予選前日にはグランプリライダーで結成する「オールイタリアン・チーム」と、プロ女子チーム「イモラ」のチャリティゲームが開催されて、オールイタリアンが2─1で勝つなど、様々なイベントで盛り上がった。
予選初日、天候は晴れ。気温は30度を越える暑さとなったが、イギリス、ドイツ、チェコと、7月から8月にかけて冷夏の中でグランプリが開催されていただけに、選手には歓迎ムード。しかし、2日目は天候が急変して生憎の雨となった。午前中のフリー走行はウエットコンディション。125、500、250の順で繰り広げられる予選は、ウエットからドライへと路面が変化する難しい状況となり、500ccクラスは、初日の予選タイムでグリットが決まった。500ccのPPを獲得したのは復帰2戦目となったバイル(Y)で、以下、A.バロス、タイトル争いを演じるM.ドゥーハン、M.ビアッジがフロントロウにつけた。もうひとり、タイトル争いに加わっているA.クリビエは予選6番手、岡田忠之は9位、S.ジベルノーは13位と、雨のために、2日目の挽回のチャンスを得られないまま、後方グリットからのスタートになった。最後のタイムスケジュールで行われる250ccクラスの予選は、セッション終盤にセミウエットから完全にドライになり、目まぐるしく順位が入れ代わった。そんな状況の中でPPを獲得したのは原田哲也(A)で今季4回目。しかし、セッション中に転倒して左足首を負傷。決勝に向けて厳しい状況となった。2番手にはこのサーキットを得意とするO.ジャック。以下、L.カピロッシ(A)、宇川徹、イタリアの人気者V.ロッシ(A)と続いた。125ccクラスは、2日目の予選が完全にウエットとなり、初日のタイムで決まった。PPを獲得したのはM.メランデリで、ドライ、ウエットともにトップタイムと絶好調の状態で本番を迎えることになった。以下、眞子智実、L.ロカテリ、徳留真紀(A)と続いた。
迎えた決勝レース。500ccクラスは、前戦チェコGPの優勝でランキングトップに立ったビアッジがホールショットを奪ったが、1周目3番手のドゥーハンがジリジリと追い上げて、4周目にトップに立つ。そして6周目にはドゥーハンの後方から追い上げてきたクリヴィーレがビアッジを交わして2番手に浮上と、レプソル・ホンダが1-2を形成した。その後、ドゥーハンは快調にペースを上げる好走で後続を引き離す。中盤までハイペースでドゥーハンを追い上げたクリビエも、ドゥーハンのハイペースにはついて行けず、次第に遅れた。終盤になると、序盤にペースを挙げられず3番手に落ちていたビアッジがペースアップ。クリヴィーレの約2秒後方まで迫ったが、順位に変動はなかった。結局、ドゥーハンは2位クリビエに約6秒の大差で今季5勝目(通算51勝)を上げて、ランキングトップのビアッジに4ポイント差に迫った。2位のクリビエはランキングこそドゥーハンに抜かれて3位に落ちたが、首位ビアッジとの差を7ポイントへと縮めた。前戦チェコで首位に立ったビアッジは3位に終わり、タイトル争いはますます混沌。終盤の戦いは、ますます厳しさを増すことになった。中盤までビアッジを追撃したバロスは、終盤になってビアッジに振り切られて4位。バロスと競り合っていたバイル(Y)は、終盤に大きく遅れて5位に終わった。前半にバロス、バイルと激しい4位争いを演じていた阿部(Y)はコースアウトを喫して6位。その後方から阿部を追撃した岡田忠之は、今回は優勝争いに加われず7位。わずかの差でジベルノーが8位という結果だった。
250ccクラスは、2列目スタートのV.ロッシ(A)が2周目にトップに立つと、一度も首位を譲らず今季2勝目。そのロッシを中盤まで追い上げた原田哲也(Y)は、予選の転倒の影響で転倒を喫する波乱。再スタートを切るも10位に終わった。その後方では、一周目の戦いをリードした、S.ペルジーニ、宇川徹、O.ジャック、L.カピロッシ(A)が激しい2位争い。最後は、その集団から抜け出したカピロッシが2位になり、宇川との激しい戦いを制したペルジーニが、地元の意地を見せて今季2回目の表彰台を獲得した。過去2年連続で表彰台に立っている宇川は惜しくも4位。優勝候補だったジャックは、終盤にペースを落として5位に終わった。
125ccクラスは、PPスタートのM.メランデリと2番手スタートの眞子智実の一騎討ちとなったが、中盤にファステストラップを連発した眞子が、メランデリの追撃を振り切って今季3勝目。ランキングトップの坂田和人(A)とラストラップまで激しい戦いを演じた東雅雄が、最終ラップに坂田を逆転して今季3回目の表彰台を獲得した。
M.ドゥーハン(500cc/優勝)
今回の優勝はクリニカモービルのドクター・コスタの故郷だったし、そういう意味では特別なレースだった。というのも、コスタ先生は、いつも僕のために最善を尽くしてくれるし、お陰でこの仕事に専念出来ているからね。コスタ先生は僕の友達だし、ここで勝てたことは本当に嬉しかった。それにイモラは、エンジンパワーで勝負が決まらないし、テクニックの差が出るところだから好きなサーキットだ。今回はスタートも上手く行った。最初のうちはフロントタイヤが上手くグリックしなくて苦労したが、それ以上悪くならなかったし、そのままペースを維持することが出来た。ホンダとミシュランがいい仕事をしてくれた。最大の問題だったのは、ストップ・アンド・ゴーが多いので、タイヤのスピンを抑えるためにクラッチとブレーキを多様するので左手が疲れた。でも、それでペースを落とすこともなかったけどね。
A.クリビエ(500cc/2位)
予選ではベース車の方に問題をたくさん抱えていた。電気系の調子が悪くて、いろいろとチェックをして解決するのに時間を費やした。きちんと動くようになったのは決勝になってからだった。スタートは割りと良かったが、ストレートの終わりで問題が出て来た。他のライダーと接触してタイムをロスした。出来る限り挽回しようとしたが、その接触でミックとビアッジに離されてしまった。それでビアッジを抜くのにすごく時間がかかったし、ミックに楽をさせてしまった。それに今日はいくつかのミスもあって、最後は2位でいいと思うようにした。今日の結果はそんなに悪いとは思わない。次のバルセロナは得意なサーキットだし、いい結果が残せると思うからね。
M.ビアッジ(500cc/3位)
レース序盤は、フルタンクの状態で、うまくペースを挙げることが出来なかった。それは朝のウォームアップでフルタンクをテストした時に感じていたことで、結局、いい状態を見つけることが出来なかった。それが原因で、本来のペースで走ることが出来なかった。しかし、ガソリンの量が減ってからは、上手くコントロールすることが出来た。3位というのは、何もないよりいい。今回もいつも同様、ベストを尽くしたと思っている。それにポイントでも、まだ、リードしているしね。
A.バロス(500cc/4位)
今日はスタートでミスをしてしまった。その後でシケインでドゥーハンと接触した時に、岡田と阿部がラインを塞ぐ恰好になって、もう少しでクラッシュするところだった。僕のハンドルバーがカウリングに当たって、アクセルを戻さなければならなかったし、それで前の3人にかなり遅れてしまった。その後で何とか挽回しようと思った。1周目は8番手だった。その後、必死で前を追いかけた。阿部はバイルを抜くのにすごく手こずった。ヤマハは速くなっているし、もうストレートで抜くのは非常に難しくなっている。ストレートでバイルを抜くことが出来たのは、バイルがコーナーの立ち上がりでミスをしたからだった。終盤、何とかビアッジに追いついたが、何回かミスをしてビアッジを捕らえることは出来なかった。スタート後のトラブルがなければ、ドゥーハンに十分ついていけたと思う。
岡田 忠之(500cc/7位)
予選からサスのセッティングに悩んでいた。いろいろとトライして、決勝前のウォームアップでもあまりいい状態にならなかった。それで決勝で思い切ってセッティングを変えたら、失敗してしまった。それにペースを上げようと思うと、5月のイタリアで傷めて、まだ完全に回復していない左手首が辛かった。左右の動きはいいのだが、ハンドルを押したり引いたりという作業が出来なかった。前回のチェコでは復帰戦で優勝争いが出来たのに、本当に残念だった。
S.ジベルノー(500cc/8位)
スタートはすごく良かったが、いくつかのコーナーを過ぎた所で、前を走るライダーがぶつかり合って、それを避けようとスローダウンしなければならなかった。それで大きく、タイムをロスしてしまったし、最終シケインでブレーキングミスをしてグラベルに突っ込んでしまった。その後、頑張って追い上げた。こういう状態で8位になれたことには満足している。それに今回は、予選でもっといいところにいないとだめだということを痛感した。今回の予選では車体のセッティングを詰めるのに多くの時間を費やして、エンジンをうまく調整することが出来なかったのが悔やまれる。
S.ペルジーニ(250cc/3位)
地元イタリアで表彰台に立てたのは嬉しい。終盤は宇川と激しい戦いになったが、何とか前でゴールすることが出来た。今回はスタートも良かった。トップグループに離されてしまったのは残念だが、今回のレースには満足している。
宇川 徹(250cc/4位)
ここは2年連続で表彰台に立っているサーキットだったし、今年も行けると思っていた。タイム的には去年よりも遅かったが、激しいレースになった。終盤はペルジーニとジャックの3人で激しい戦いになったが、ジャックはタイヤが辛そうだった。ペルジーニには勝てると思ったが、強引な突っ込みをしてきたので、こっちが引かなければならなかった。本当に残念。悔しい限りです。
0.ジャック(250cc/5位)
3ラップぐらい後から、バイクの調子がおかしくなった。バイクの前後がバラバラになっているような状態で、そのためにコーナーを上手く走ることが出来なくなってしまった。チェッカーフラッグを受けた後、グラベルでバイクをチェックしてみたら、ステアリングが上手く動かない状態になっていた。ステアリングダンパーが壊れてしまったのかも知れない。でも、最後まで走ることが出来て良かったし、何もなくてホッとしている。
青木 治親(250cc/6位)
スタートに大失敗してしまった。一周目が終わった時には/14/番手前後で追い上げが苦しかった。でも、タイム的にはまずまずの走りが出来たし、あのバッドスタートで6位になれたのは、良かったと思う。
眞子 智実(125cc/優勝)
今日は絶対に前に出て、後ろを引き離しやろうと思っていた。おそらく、今回の戦いはポールを取ったメランデリとの勝負になると思っていたし、予想通りの展開になった。中盤にペースを上げて引き離せなかったので、途中ペースを落として見た。それでも抜いてこないので、最後は突き放すことにした。最終ラップの最終コーナーで抜いてきたが、完全にオーバースピードで、抜き返せると思った。今年はこれで3回優勝したが、一番、嬉しい優勝だった。
M.メランデリ(125cc/2位)
今日の眞子は、いくつかのコーナーで、自分よりもいいラインを通っていた。眞子はレース中にペースをわざと落としたりして、僕を先に行かせようとしていた。最終ラップに眞子を抜こうとして頑張ってみたが、抜いた後に立ち上がりではらんでしまった。眞子は驚いていたようだが、自分のミスで抜き返されてしまった。イモラは地元だし、ここでは何としても勝ちたかったが、2位という成績には満足している。タイトル争いでも坂田に近づくことが出来たしね。
東 雅雄(125cc/3位)
最終ラップまで坂田と激しい戦いになった。最終ラップに2度抜かれたが、その度に抜き返すことが出来た。前回のチェコで優勝寸前で転んでいたし、少しは悔しさが晴れたような気がする。今年はこれで3回目の表彰台だが、今度こそ勝ちたい。
●次戦は、9月20日 カタルニアGP(スペイン)です。
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