近年、世代を問わずに人気が高まっている釣りにタナゴ釣りがあります。
タナゴ釣りといえば、ひと昔前までは、冬場の「寒タナゴ釣り」のことでした。他の魚があまり釣れない寒い時期に、霞ケ浦周辺などの水郷地帯にある水路脇で、東京の下町の釣り倶楽部などに所属するベテランが熱心に楽しむ釣りでした。

枯れアシに囲まれた小さな水路の横に陣取って、越冬中のオカメタナゴをねらう寒タナゴ釣り

しかし、近年では春に見られる美しい婚姻色(春の産卵期を迎えると、タナゴの仲間は鮮やかな色が体に浮かびます)なども注目されるようになり、四季折々の釣趣も楽しめることから、全国区の人気ターゲットになっています。

現在、日本には18種類のタナゴの仲間が棲息しています。そのなかの2種類は、外国由来のタイリクバラタナゴとオオタナゴですが、タイリクバラタナゴは、単にバラタナゴ、あるいはオカメタナゴとも呼ばれ、今ではタナゴといえばまずこの魚を指すくらい一般的です。タイリクバラタナゴは、1940年代に他の魚の輸入にまじって増えたといわれ、水際の1カ所に釣り座を構えるエンコ釣りでじっくりねらえることから、タナゴ釣りの主要なターゲットになっています。また、バラは「薔薇」のことで、オスのタイリクバラタナゴは特に婚姻色が鮮やかです。

鮮やかな婚姻色が出始めたタイリクバラタナゴ

タナゴ釣りは道具も魅力的です。元はヤリタナゴなどの在来のタナゴが主な釣り対象でしたが、小さな魚をねらう日本独自の釣り文化は、少なくとも江戸時代後期からは記録が見られ、この魚をねらうための専用のサオや道具類では、今でも職人技が生かされた和の道具が作られています。現代的な釣り道具でもタナゴ釣りはできるのですが、こうした他の釣りでは見られなくなったスタイルに惹かれる人も多くいます。

タナゴ釣り用の道具類。サオならカーボン製のものも販売されているが、和竿職人が丹精込めて作る小継ぎタナゴザオなどは惚れ惚れとする出来栄え。仕掛けも繊細なだけでなく見た目の美しさがある
タナゴ釣り用の道具類。サオならカーボン製のものも販売されているが、和竿職人が丹精込めて作る小継ぎタナゴザオなどは惚れ惚れとする出来栄え。仕掛けも繊細なだけでなく見た目の美しさがある

タイリクバラタナゴの大きさは、小さいものが1円玉に乗る2cm弱。大きいもので5〜6cmです。アタリがあってもフッキングが難しく、ハリはもちろん専用の小バリを使いますが、小さなアタリが感知できるように、仕掛けも繊細なものを準備します。とりあえず1尾を釣るのはそれほど難しくないのですが、そこから先になると、頑張って数10尾釣るのがやっとの人の横で、腕自慢のベテランが200~300尾釣れたりと、道具や腕の差がはっきり出る奥深さがあります。

これからタナゴ釣りを始めるなら、おすすめは産卵期を迎えて魚の活性が上向く春から初夏にかけてです。また、越冬に備えて食欲が高まる晩秋から初冬にかけてもよいシーズンです。近年は人気の高まりに合わせて、タナゴをねらえる釣り堀も登場してきたので、まずはこういった場所で釣りを体験してみるのもよいでしょう。

風除けフェンスで囲まれ、日向ぼっこしながら釣りができるタナゴ専用釣り堀(千葉県市原園)

なお、ヤリタナゴなど在来種と呼ばれるタナゴの仲間は、丸い体形をしたタイリクバラタナゴと少し違い、体が流線型で、流れのある小川や水路を好む傾向があります。釣り方は1ヵ所に腰を下ろして楽しむタイリクバラタナゴとは異なり、小さな群れで行動している魚を歩いて探しながら釣っていくのが一般的です。どこで釣れるのかあちこち歩きながら、ようやく釣れた魚のきれいな模様を目にする喜びは格別。「タナゴ釣り」にはそんな世界もあります。

里の小川での在来タナゴ釣り
腹部に真っ赤な婚姻色が出始めたオスのヤリタナゴ。少し長めのサオを使い、あちこちに仕掛けを入れて魚の居場所を探しながら釣る

最近はタナゴ釣りの仕掛けや道具を置いているお店も徐々に増えてきているので、日本が誇る「小さなゲームフィッシング」に、ぜひ挑戦してみてください。

※このコンテンツは、2021年5月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。