「魚釣り」という言葉があるように、釣りといえば一般的に「魚」をねらいます。ただ、なかには例外があって、その代表格といえるのが「イカ釣り」です。

日本は世界的に見ても珍しいイカ釣り天国。釣り人がねらうイカの種類も多く、また、釣り方も一つではありません。
テナガエビマダコなど、魚以外の釣りの対象はほかにもいますが、この点が大きく違います。

たとえば近年人気の「エギング」は、餌木(えぎ)という疑似餌を使い、主にアオリイカをねらいます。

エギングは身近な海で気軽に楽しめるのが魅力。元は和製の漁具である餌木を使い、海中でチョンチョンと跳ねるように動かしてイカ(主にアオリイカ)に抱き着かせます

堤防や近くの磯など、陸からも気軽に楽しめるため、海釣りの中でもファンが多いジャンルとなっていますが、ティップランエギングといって、船から楽しむスタイルもあります。

ボートから楽しむティップランエギングは、ポイントを広く探れるので、大型のアオリイカも手にしやすい。餌木は陸から釣る時よりも少し重いタイプを使う
ボートから楽しむティップランエギングは、ポイントを広く探れるので、大型のアオリイカも手にしやすい。餌木は陸から釣る時よりも少し重いタイプを使う

このほかにも、スルメイカヤリイカケンサキイカカミナリイカスミイカ……など、釣りの対象になっているイカは枚挙にいとまがありません。ちなみにエギング以外のイカ釣りは、船から楽しむものがほとんどです。

沖合で楽しむ本格的なイカ釣り(スルメイカやヤリイカが対象)は、一度に何ハイものイカが仕掛けに付くことがある。その時の重量感は相当なもの。ちなみに仕掛け部分には餌木の代わりに、少しタイプの違うスッテと呼ばれる疑似餌を使う
沖合で楽しむ本格的なイカ釣り(スルメイカやヤリイカが対象)は、一度に何ハイものイカが仕掛けに付くことがある。その時の重量感は相当なもの。ちなみに仕掛け部分には餌木の代わりに、少しタイプの違うスッテと呼ばれる疑似餌を使う

イカ釣りの人気が高いのは、やはり食べて美味しいというのが大きな理由です。海外にもイカはいるのですが、日本ほど「イカ釣り」は行なわれていません。これには日本人の「イカ食好き」がやはり影響していると思われます。

食卓でもおなじみのスルメイカ。釣っても面白く、大型になるとかなりの重量感がある

「イカを釣るのも好き、食べるのも好き」を象徴する風景に、「船上干し」があります。釣ったイカ(主にスルメイカ)をその場でさばき、船に張ったロープに吊るして、風と太陽の力でうまみを引き出すのです。

新鮮なイカの持つ旨味が凝縮し、まさに「釣り人の特権」という味わいが楽しめます。他には釣ったイカを生きたままタレに漬け込む「沖漬け」も人気があります。

スルメイカの船上干しは、日本のイカ釣りを象徴する風景。釣ったイカをそのままタレに浸ける沖漬けも人気です

もちろん、釣りたてのイカは刺し身も抜群に美味しいので、そのまま持ち帰ることも多いのですが、イカはウロコや骨がなく内臓も少ないため、家に帰ってからの調理も楽で、食いしん坊の釣り人にとってはいいことづくめなのです。

釣りたてのイカは甘みが濃厚。刺し身はもちろんどんな料理にも使える

そしてもう一つ、忘れてはいけないのが、「釣り自体がとても面白い」ことです。
前述のとおり、ひとくちにイカ釣りといってもいくつかの種類があるので、それぞれの釣りの中で楽しい部分は少しずつ違いますが、

「触腕を伸ばしてエサに抱き着いてくる、繊細なアタリを感知する面白さ」
「ハリに掛かったあとの重量感」
「時にジェット噴射して逃げようとする強い引き」

これらは一度体験すると、他の魚釣りで味わえる刺激に勝るとも劣らないものであることが実感できます。

イカ釣りコーナーは各地の釣具店にも必ずといってよいほどあるので、興味の湧いた方はぜひ一度のぞいてみてください。

※このコンテンツは、2020年11月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。