東京湾はシーバスパラダイス
お手軽、お気楽で魚が釣れるの3拍子揃ったガイド艇
冬の夜明けは遅い。まだ暗いなかをクルマは首都高速から湾岸線に入り、横浜ベイブリッジを渡って横浜に入った。
前日が仕事で遅かったという助手席のみっちぃは、乗り心地がよいためか、すっかり夢の中だった。
ここで東京湾の
シーバスフィッシングについて、簡単に説明しておこう。シーバスとは
スズキのことで、サイズがよくて引きが強く、ルアーでよく釣れることから、ルアーフィッシングの好ターゲットになっている。東京湾は日本一シーバスの数が多いといわれるほどのシーバスパラダイスなのだ。岸からも釣れるが、湾奥と呼ばれる東京・横浜などのベイエリアでは、釣り禁止や駐車場の問題などから、釣りができる場所は限られている。そこで、船からの釣りも盛んに行なわれているというワケ。乗合船なども出ているが、人気が高いのはガイド艇と呼ばれる、ゲストがボートと船長も兼ねるガイドをチャーターして釣らせてもらうシステム。お金はかかるが、よく釣れるし、大ものだけをねらいたい、このルアーで釣りたい、お台場の夜景を見ながら釣りがしたいといったゲストのニーズにも応えてくれるので人気が高い。今回チャーターした神奈川区から出船するジョイマリンさんもそのうちのひとつだ。
「カノジョがいれば、横浜でのボートシーバスは最高なんだよな。まずは朝から釣りを楽しんで。ベイエリアをクルージングしてるって感じもあるから、釣り以外でもカノジョに楽しんでもらえるし。上がったら、近くのお洒落スポットでデートもできるし、三浦半島までドライブしてもいいし、夜になったら夜景を楽しんでもいいし」
落合さんのひとりごとだったのだが、目を覚ましたみっちぃに聞かれていた。
「へー、落合サンって釣りのことだけ考えてる人じゃないんですね。ちょっと意外かも」
「うわー、意外ってなんですか。ヒドイなぁ」
「へへ(笑)。カノジョいるんですか?」
「い、いませんよ(汗)。でもいるっていえばいるような……」
「おっと、いるんですか?」
「魚がカノジョみたいもんです、ボクにとって」
それを聞いて大笑いするみっちぃ。そんな話をしているうちに集合場所に到着。
ボートシーバスで使うルアーとタックルは?
「さてと、今日は落合サンとのバトルでしたよね? 本気出していいんですよね?」
「アワワ、なんですか、本気って? ふだんは違うんですか?」
「言ってみただけですよ。ワタシはいつも本気です! 過去に某テスターさんに釣り勝ったのも今ごろの時期だったかな?」
「ぎょえー、勝っちゃったんですか??(そんな話、聞いてないよ。編集長、ひどくない?)」
勝負は釣りをする前から始まっていた。みっちぃの先制パンチに落合さん、ヤバくないか?
時期によって当たりルアーは変わるが、ふたりが用意したのは3タイプ。ひとつは鉛などが素材の棒状のメタルジグ。次が小魚を模したボディーの後ろに葉形状のブレードが付き、動かすとブレードがクルクル回るテールスピンジグ。そしてボディーが小魚に似たバイブレーションだ。
メタルジグはフォール(落ちるとき)のヒラヒラした動きで誘うこともできるが、基本的にはリールを巻くと魚を誘う動きをし、その動きの違いで釣れたり釣れなかったりする。巻くスピードの違いによっても釣れたり釣れなかったりするので、いろいろな誘いを試して、その日の当たりを見つけるのが釣果を伸ばすコツだ。
早くも差をつけるスゴ腕つり女子
桟橋を離れ、最初の釣り場に着く頃にはすっかり明るくなっていた。
船長にシーバスの状況を聞くと、産卵から戻ってきたシーバスが沖の
ストラクチャー(人工的な構造物)周りにいるという。水深が20~30mと深いため、重めのルアーを使うといいとのこと。
「よーし、ワタシはメタルジグでいきます!」とみっちぃ。
「ボクはテールスピンジグで勝負!」と落合さん。
魚群探知機で底から5mほど上に反応アリ、と船長がアドバイス。それを参考に釣りを始めると、なんと2投目でキタ! ロッドが曲がっているのはみっちぃだ。魚を
バラさないよう慎重に魚との間合いを詰める。魚とのやり取りも堂に入っていた。やはり、ただのつり女子ではないようだ。
「イエーィ、1尾目! ジグをフォールしているときにコツコツと
アタリがあったんで、集中してアタリを取ったら釣れましたヨ」
50cmくらいの
フッコサイズに喜ぶみっちぃ。ちなみに、スズキはセイゴ→フッコ→スズキと成長段階で名前の変わる出世魚。だいたい30cmくらいまでをセイゴ。60cmくらいまでをフッコ。それ以上がスズキと呼ばれる。
「落合サン、メタルジグのほうがいいかもデス!」
親切にアドバイスするみっちぃ。しかし、落合さんはルアーを変える気配もない。エスコートもミッションのうちだったのに、釣りを始めて肉食系に変わった彼の頭からは、その5文字はすっかり消えてしまったみたいで。
アタリが続かないため、釣り場を移動。次の場所でも釣れたのは、またもみっちぃ。同サイズのフッコだ。
「2尾目、やりぃー! 落合サン、速く巻いた後のフォールに反応がいいみたいですヨ!」
「………」
「ちょ、ちょっと、聞いてます?」
聞いていなかった。というより、聞こえなかったみたいで。1尾ならまだしも、2尾も差をつけられる展開は落合さんにとって想定外。頭の中は真っ白だったのだから。
「しようがないなぁ」
呆れ顔をしながらも、みっちぃは雰囲気を察したようで、黙々と釣りに集中することに。どちらがエスコートしているのかわからない。
※撮影:浦壮一郎/文:西義則/撮影協力:横浜赤レンガ倉庫
※このコンテンツは、2012年2月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
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