天野 三三雄 氏
『ルアーパラダイス九州』編集長
天野 三三雄 氏
2009年から2014年まで月刊『Basser』の編集長を務め、現在は隔月刊誌『ルアーパラダイス九州』編集長。『アオリイカ地獄』、『ロックフィッシュ地獄』などソルト系ムックの編集長も兼務。2015年春より九州営業所に勤務。

夏の風物詩から超ロングランターゲットへ

佐世保側に外海とつながる細い瀬戸が2本あるだけで奥行の広い大村湾はまるで湖のように穏やかなことで知られる。このような流入河川の河口付近はとくにクロダイが多い
佐世保側に外海とつながる細い瀬戸が2本あるだけで奥行の広い大村湾はまるで湖のように穏やかなことで知られる。このような流入河川の河口付近はとくにクロダイが多い
長崎県の中央に位置する大村湾は、南北約26km、東西約11km、面積約321km2の奥行のある大きな海域だが、外海である佐世保湾と繋がっているのは針尾島西岸の針尾瀬戸と東岸の早岐瀬戸だけ。その瀬戸も川のように細長で、もっとも狭いところは針尾瀬戸で180m、早岐瀬戸では10mほどしかない。そんな閉鎖的な湾内にいくつもの河川が流れ込んでいるため内湾性のスズキクロダイボラマゴチ、コノシロ、アカエイなどが多い。なかでもクロダイは全国屈指の魚影を誇り、クロダイの多い九州でも一、二を争う人気のクロダイ釣り場である。
そんなクロダイをルアーでねらう釣りが人気である。とくに九州ではポッパーペンシルベイトを使うトップウォーターゲームの人気が高く、夏の風物詩としてすっかり定着しているほどだ。
ちなみにこのクロダイ、東日本と西日本で少し性格の違う魚のような気がする。性格というよりも食性が違うというべきか。カニやエビなどの甲殻類、カラスガイやフジツボといった貝類を好む性質は変わらないものの、カタクチイワシなどの小魚を好んで食べる魚食性に関しては、明らかに東よりも西のクロダイのほうが強いという気がする。気がするだけではなく、トップウォータープラグへの反応のよさからもそれは間違いない。また、東日本には少ないキビレが西日本に多いことも関係しているだろう。キビレはクロダイよりも貪欲でさらにルアーへの反応がよいためだ。
しかし、夏の風物詩と書いたように、トップの釣りが楽しめるのは7~8月の2ヵ月限定と言ってよく、梅雨明けからが本番になる。
対して梅雨前からクロダイをねらえるルアー釣りがある。それが、ジグヘッドワームを組み合わせたボトムゲームだ。九州ではトップウォーターゲームの人気が高かったこともあり、ボトムゲームを楽しんでいる人はまだまだ少数派だが、水温が上昇する前の春から楽しめ、水温が下がる秋いっぱいねらえるとあってファンが急増中だ。

軽いボトムタッチで土煙を上げるスローリトリーブが効く

クロダイのボトムゲームにも種類はいくつかあるが、もっともシンプルで入門しやすいのはジグヘッドとワームを使ったジグヘッドリグの釣りである。ジグヘッドのウエイトは1.5~5gと幅広いものの、ワームは1.5~3inとやや小さめなのは、捕食しているカニなどの甲殻類が小さめであることと、シーバスなどのように口が大きくはないからだ。
リフト&フォールボトムバンピング、シェイク、ズル引き、スローリトリーブなど、通常のジグヘッドリグと同様、多彩なテクニックを用いるが、とりわけクロダイに効果的なのがスローリトリーブである。
といってもメバル釣りのように中層をゆっくりと巻くのではない。ボトムゲームゆえ、基本的にボトムとコンタクトしながらのスローリトリーブであり、それを成立させるための、牡蠣殻などにスタックしにくい形状のクロダイ専用ジグヘッドを使うと根掛かりを回避しやすい。
ほとんどメバルタックルが流用できるが、ジグヘッドはクロダイ専用タイプを使ったほうが根掛かりは少なくフッキングも決まりやすい。とくにボトムで土煙を上げながらスローにリトリーブする釣りではシンカーが盾になって牡蠣殻などをかわしてくれるタイプが使いやすい
ほとんどメバルタックルが流用できるが、ジグヘッドはクロダイ専用タイプを使ったほうが根掛かりは少なくフッキングも決まりやすい。とくにボトムで土煙を上げながらスローにリトリーブする釣りではシンカーが盾になって牡蠣殻などをかわしてくれるタイプが使いやすい
状況によってシンカーの形状を変える。右はスローに沈下して、起伏のあるハードボトムでも転がりにくい台形タイプ。中央は牡蠣殻などを乗り越えやすい万能タイプ。左は1点シェイクなどの誘いが入れやすいフットボールタイプ
状況によってシンカーの形状を変える。右はスローに沈下して、起伏のあるハードボトムでも転がりにくい台形タイプ。中央は牡蠣殻などを乗り越えやすい万能タイプ。左は1点シェイクなどの誘いが入れやすいフットボールタイプ
牡蠣殻の中にはクロダイの大好物であるカニやエビやイソメなどがたくさん潜んでいる
牡蠣殻の中にはクロダイの大好物であるカニやエビやイソメなどがたくさん潜んでいる
河口付近は基本的に泥底だが、クロダイが多いのはその中でもこのような牡蠣殻がびっしりとあるハードボトム。軽すぎるウエイトのジグヘッドを使えば浮き上がってしまいアタリが減る。重すぎればこのように根掛かりが増える。適正ウエイトだとコンタクトしながら障害物をかわすことができる
河口付近は基本的に泥底だが、クロダイが多いのはその中でもこのような牡蠣殻がびっしりとあるハードボトム。軽すぎるウエイトのジグヘッドを使えば浮き上がってしまいアタリが減る。重すぎればこのように根掛かりが増える。適正ウエイトだとコンタクトしながら障害物をかわすことができる
大村湾は波静かな内湾であり、基本的にボトムマテリアルは砂や泥だが、クロダイが好むのはカニの隠れ家になりカラスガイが付着しやすいハードボトム。ここ大村湾では牡蠣殻のガレ場がそれにあたる。

クロダイをねらったルアーの先駆けであるMリグもそうだが、やはりクロダイにはボトムを掻いて土煙をあげることが効く。シャコやカニやエビといった底生の生き物たちが動くことで上げる土煙にクロダイは敏感に反応するためだ。ボトムに軽くタッチする程度の一定速度でジグヘッドリグを巻くだけで、ロッド操作で跳ね上げたりするよりもリアルに底生の生き物らしさを演出できる。
ボトムで土煙を上げるだけなら7gなどの重いジグヘッドを選べばいいのだが、それでは根掛かりが増えてしまう。牡蠣殻などにコツっと触れた瞬間に軽くスイミングして乗り越えてくれる軽いジグヘッドがいい。しかも、よくあるフックポイントが剥き出しになったラウンドヘッドのジグヘッドではなく、ヘッド自体がこうした牡蠣殻をかわす盾の役割を果たし、フックポイントはワーム内に埋めて隠すことができるオフセットセッティングができるタイプを選ぶことで根掛かりは圧倒的に少なくなる。

張りのある高感度ティップで根掛かり回避

カニや貝をエサにする堤防の落とし込み釣りでもロッド操作などで誘いを加えない自然な落下姿勢がもっともアタリが多いが、ボトムを横方向に探る釣りにおいても止めずに一定速度で巻いたほうが捕食スイッチを入れられることが多い。
汽水の河口や下流域はクロダイが多く、ヘチ寄りで食うときもあれば、潮位が低いときには流心でも食ってくる
汽水の河口や下流域はクロダイが多く、ヘチ寄りで食うときもあれば、潮位が低いときには流心でも食ってくる
真夏になればポッパーやペンシルベイトでも釣れるクロダイだが、ジグヘッドリグのボトムゲームなら春先から晩秋までロングランで楽しむことができる
真夏になればポッパーやペンシルベイトでも釣れるクロダイだが、ジグヘッドリグのボトムゲームなら春先から晩秋までロングランで楽しむことができる
甲殻類を模したワームを使ったスローリトリーブで食わせた良型。水温が上がると、このサイズがルアーにチェイスするようすが何度も見えるから興奮する
甲殻類を模したワームを使ったスローリトリーブで食わせた良型。水温が上がると、このサイズがルアーにチェイスするようすが何度も見えるから興奮する
上唇にガッチリとフッキングが決まった。ご覧のように口の中には何列も堅い臼歯が並んでいるのでアタリはあってもフックが滑りフッキングさせることはなかなか難しい
上唇にガッチリとフッキングが決まった。ご覧のように口の中には何列も堅い臼歯が並んでいるのでアタリはあってもフックが滑りフッキングさせることはなかなか難しい
適正ウエイトのジグヘッドを選択することで根掛かりが減るだけでなく、絶妙なタッチ感と絶妙な浮遊感が得られ、クロダイのアタリも引き出してくれる。
2g前後のジグヘッドと2in前後のワームを使った釣りだけにタックルはメバルやアジなどのソルトのライトタックルのほかバスタックルも使えるものが多い。しかし、ひとつだけ注意したいのは軟らかすぎるティップはNGということ。
スローリトリーブといえばメバルの定番テクニックであり、そのためのロッドは巻き続けてもアタリを弾かない乗りのよい柔軟なティップのロッドが多いが、アタリを弾かないという特性はボトムの起伏は乗り越えにくくフッキングしやすいことを意味する。張りのあるティップを搭載したファストテーパー気味のロッドを使ったほうが根はかわしやすくボトム感度も高い。
ボトムの釣りであっても、好機は水温の高い時期である。そのころになると、大村湾内の各所でクロダイを見ることができ、しかもそうした見える魚がルアーによく反応し、浅いところではルアーの背後を追尾する姿もよく見かける。
水温がそこまで高くなっていない梅雨前や梅雨中のタイミングはトップに誘うにはまだ早いが、ボトムゲームならば問題なく成立する。
リトリーブでもリフト&フォールでもクロダイのアタリは明確だ。感度のよいロッドとPEラインを組み合わせていることもあって『カツッ!』とか『コンッ!』とか『ガツガツッ!』という金属的なアタリなのでわかりやすい。基本は即アワセで対応するが、リトリーブのときはクロダイが反転するので向こうアワセになるケースも多い。

長ザオを使い、カニなどのエサを流れに乗せながら底を取っては再び流れに乗せる前打ちの釣りに似ているところもあるが、やはり本物のカニではなく軟質プラスティックの偽物でクロダイを騙して口を使わせることは容易ではない。しかし、あの神経質で臆病で老獪なクロダイを擬似餌で騙せたら痛快だ。しかもライトタックルのショートディスタンスの釣りだからファイトもスリル満点。トップが楽しくなる盛夏まで待てないアングラーはぜひボトムゲームを楽しんでみるといい。基本的に潮が動いていれば、朝夕マヅメはもちろん、日中でも夜でも行なうことが可能だ。
金属的なアタリが伝わるボトムゲームは日中でも夜でも楽しめる
金属的なアタリが伝わるボトムゲームは日中でも夜でも楽しめる
装備はいたってシンプル。ジグヘッド各種とワームはヒップバッグやショルダーバッグに収納。ロッドは7~8ftのティップに張りのあるアジングロッドが適しているほかバスロッドやメバルロッドも使える。ラインはPE0.4~0.5号、リーダーはフロロカーボン4~5Lb。ラインが細く足場が高いのでランディングネットは必需品
装備はいたってシンプル。ジグヘッド各種とワームはヒップバッグやショルダーバッグに収納。ロッドは7~8ftのティップに張りのあるアジングロッドが適しているほかバスロッドやメバルロッドも使える。ラインはPE0.4~0.5号、リーダーはフロロカーボン4~5Lb。ラインが細く足場が高いのでランディングネットは必需品
今回ご紹介したエリア
長崎県/大村湾のクロダイMAP
アクセス
大村湾全域がクロダイ釣り場と言えるが、アクセスがよくクロダイも多いのは長崎自動車道が並走する東岸部。福岡方面から九州自動車道利用の場合は鳥栖JCTから長崎自動車に入り東そのぎICから諫早ICにかけての流入河川の周辺がおすすめ。
お問い合わせ
ポイント諫早店
(TEL 0957-32-8601)
※このコンテンツは2016年7月の情報をもとに作成しております。