八木 健介 氏
月刊『FlyFisher』編集長
八木 健介 氏
編集アルバイトとして2001年から月刊『FlyFisher』の製作に参加。その後、副編集長を経て2010年10月から編集長を務める。休日の釣りは専らフライフィッシング。近所のコイ釣りから、渓流のヤマメ・イワナ釣り、本流のニジマス釣りと、フィールドに合わせた旬の対象魚を追う。

ざわめく海面にボートで直行

首都圏にあって誰にでも身近で魚影豊富なフライフィッシングのフィールド。そのひとつが「東京湾」だ。代表的なターゲットといえば、まずは年間をとおしてねらえ、ルアーフィッシングでも人気のあるシーバス。だが、今回はもうひとつの隠れたターゲット、そして実はこれからの季節にフライフィッシングの好対象魚になる、青物についてご紹介したい。
関東ではブリを小さいサイズからワカシ(20cm前後)、イナダ(30~40cm)、ワラサ(50~60cm)、ブリ(それ以上)と呼ぶ。この釣りの対象魚はもっぱらイナダだ
関東ではブリを小さいサイズからワカシ(20cm前後)、イナダ(30~40cm)、ワラサ(50~60cm)、ブリ(それ以上)と呼ぶ。この釣りの対象魚はもっぱらイナダだ
釣り人が「青物」と呼ぶ魚は、アジの仲間、サバイワシブリ、マグロなどがいる。その中で、今回紹介するのはブリの若魚。サイズでいうと40~50cmの「イナダ」だ。ここ数年、東京湾では10月を過ぎて11月に入り秋が深まってくると、イナダの群れがカタクチイワシや2cmほどの小型のシラスなどのベイトフィッシュ(エサ)を追い、日中から各エリアの海面近くでボイルする光景がよく見られるようになってきた。その時、それらのベイトフィッシュに似せたフライにも、イナダが盛んに反応するのである。
東京湾にはいくつかの港があり、ベイトフィッシュの群れが特定のエリアにつくと、イナダもしばらくその付近を回遊する
東京湾にはいくつかの港があり、ベイトフィッシュの群れが特定のエリアにつくと、イナダもしばらくその付近を回遊する
シーバスのガイドボートのホームページなどで、「イナダも釣れ始めました」といった釣果報告が出始めたら、しばらくは安定してボイルが起きるチャンス。2011年も11月の中旬頃から釣果が聞かれ始め、しばらくは数釣りが楽しめた。
弾けるように沸いている海面にほかの釣り人を気にせず直行でき、視覚的にも興奮度の高い釣りにじっくり取り組めるのはボートフィッシングならでは。さらに、目がよいとされる青物は盛んに捕食行動を起こしている時でも、フライを意外なほどよく見るので、魚がその時食べているベイトフィッシュにしっかりフライを合わせて釣る、ゲーム性の高い釣りが楽しめる。

ロッドは8番以上でラインはフローティングを用意

タックルは高番手のシングルハンド・ロッドでフローティングラインのシステムがあれば大丈夫。その際、ロッドの番手は最低でも8番を用意したい。イナダは青物としては小型の部類に入るが、フライロッドでやりとりする魚としては充分にパワーがある魚といえるので、これから買いそろえるのであれば9~10番がおすすめだ。長さはいずれの場合も9フィート程度が扱いやすい。なお、それらのロッドはシーバスの釣りにもそのまま使える。
ヒットの直後から高番手のシングルハンド・ロッドが曲がる。スピーディーな動きをする青物の連続ヒットは、シーバスともまた違った楽しさがある
ヒットの直後から高番手のシングルハンド・ロッドが曲がる。スピーディーな動きをする青物の連続ヒットは、シーバスともまた違った楽しさがある
フライラインはロッドの番手に合わせたウエイトフォワードのフローティングを用意しよう。その先にはフロロカーボンテーパーリーダーとティペットを接続。02X・9フィート程度のテーパーリーダーに、0Xのティペットを1mほど接続する。号数表記なら02Xは4号、0Xは3号に相当する太さだ。フローティングラインのほかに若干海中に沈むインターミディエイトや、さらに深場を探るシンキングラインでも釣りはできるが、日中にボイルをねらうイナダのフライフィッシングでは、フローティングライン1本でまず楽しめる。

フライはイワシをイメージしたフローティングミノーと呼ばれるタイプや、そのほかのイワシを模したベイトフィッシュパターンを用意。イワイミノー、デシーバー、クラウザーミノーなどの比較的小型のサイズのもの(全長で6cm前後)が標準的だが、イナダがさらに小さなシラスなどを捕食している場合に備えて、メバル用のパターン(全長で3cm前後)もあるとよい。いずれにしてもガイドボートを予約する時点で、キャプテンに効果的なフライのパターンやサイズを確認するようにしよう。自分で巻くのも楽しいし、それらのパターンはフライフィッシングのプロショップや通信販売でも手に入る。

ボイルの進行方向にキャストしゆっくりリトリーブ

釣り方はシンプル。ボイルは一度発生すると一定の方向に向かって進む。するとキャプテンがボートをその進行方向に先回りするように付けてくれる。ボイルしながら自分のほうに向かってくるイナダの群れが、ボートに近づきすぎないうちに、周囲に気を付けながらフライをキャストしよう。あとはラインを張らず緩めずの状態にしておくか(それでもボート自体が潮流によって動くので、フライはある程度動く)、あるいはリトリーブをして積極的に動かしてみる。ボイルしている群れがフライのすぐ近くまで来たと思った段階でいろいろ試してみて、より反応のよいパターンを探ろう。なお、ガイドボートの釣りでは風が吹くこともよくあるので、その際はなるべく自分の身体より風下側でロッドを振れるように、ボート内で立つ位置を柔軟に変えることも意識しておくとよい。たいがいはキャプテンが風向きも考えたうえで釣りやすい場所にボートを付けてくれる。
画面の中央付近、海面の数ヵ所が白く波立っているがイナダのボイル。この状況にめぐりあったら釣りのスタート
画面の中央付近、海面の数ヵ所が白く波立っているがイナダのボイル。この状況にめぐりあったら釣りのスタート
キャストしたフライがベイトフィッシュのサイズに合っていれば、「ズドン」という感触とともに一気にフライが引ったくられるはずだ。フライをくわえたイナダは、一気に深場へ潜っていこうとするので、ロッドのバット部分(グリップに近い部分)に魚の重さを乗せるようにして、しばらくその引きをいなしたあと、徐々に魚を海面まで浮かせよう。最後は同船者かキャプテンにランディングネットで魚をすくい上げてもらう。フライロッドを使ってそのままで魚を海面から抜き上げるのは、破損のリスクが非常に高いので絶対にしないほうがよい。

ガイドボートは1艘を4~6時間チャーターして料金は3~4万円。フライフィッシングの場合、スペースの関係で2人での釣りがベストだが、その場合ならひとりあたり1万5000円~2万円の予算があれば楽しめる。首都圏からであれば交通費がほとんどかからず、チャーターした時間中はガイドが魚のいると思われる場所を効率よく回ってくれるので、川や湖に出かけるのと比べても充分にリーズナブルだ。トラウトやシーバスとも違う、青物ならではのスピーディな引きをぜひ堪能していただきたい。
今回ご紹介したエリア
神奈川県/東京湾のイナダMAP
アクセス
「シークロ」
横浜市神奈川区のガイドボート。シーバスをメインに秋は青物にも対応している。
予約や釣況報告などの詳しい案内は以下のホームページで確認できる。
http://www.seakuro.com/