山根 和明 氏
月刊『つり人』編集長
山根 和明 氏
1994年つり人社入社。2006年より月刊『つり人』編集長を 務める。渓流釣り、アユ釣り、磯釣り、沖釣り、コイ釣りなどなど四季折々の釣りを楽しむ。コイ釣りニュースタイルマガジン『Carp Fishing』、渓流釣り専門誌『渓流』、トラウトルアー専門誌『鱒の森』編集長を兼務。

60cm級のマダラが3連ヒット

北海道南西部の渡島半島の沖合約20kmに、ぽつんと浮かぶ平坦な島が奥尻島です。人口は約3600人。島の周囲は約80km。
私がこの島を初めて訪れたのは、北海道南西部沖地震の津波により、島が甚大な被害を受けてから10年後でした。すでに島は復興を遂げていて、海もすっかり回復していました。
イカ漁船に乗せてもらい船釣りを楽しむ。地磯や堤防からもよく釣れますが、奥尻島の豊穣を実感できるのは、やはり船釣り
イカ漁船に乗せてもらい船釣りを楽しむ。地磯や堤防からもよく釣れますが、奥尻島の豊穣を実感できるのは、やはり船釣り
堤防の壁や岩場にはウニが至る所に付いていて、道端の所々にウニ殻が転がっています。カラスが食い散らかすというのです。
島ではスルメイカ漁が盛んで、イカ漁を行なわない日中に釣り客は漁船に乗せてもらえ、船釣りを楽しめます。秋から冬にかけてのターゲットはマダラ、ソイヒラメブリなど。
私は青苗港から行程15分ほどの室津島沖でサオをだしました。ねらうポイントは水深130~180mライン。エサは船長が前夜に水揚げしたスルメイカ。これをドウヅキ3本バリ仕掛けに装着し、150号のオモリをセットして仕掛けを投入。着底後、イトフケを取ると、サオ先がコツコツと上下します。すぐに巻き上げようとすると、「まだまだ。3本とも掛かりますから」と船長。
コツコツがゴツゴツになり、ガックンガックンとなったところで巻き上げると、60cm級のマダラが3本とも掛かっています。なんなんだ、これは!?

マダラのほか本州では滅多にキャッチできない50cm近いアイナメや30~40cmのホッケも多数釣れましたが、クーラーボックスに入りきらないからマダラ以外はリリースしたほうがいいよと船長がアドバイス。
サオをだしたのはほんの数時間でしたが、海底はマダラの絨毯になっているのでは? と思われるくらいの釣れっぷりでした。
白子がたっぷりと入った60cmのマダラ。こんなのが次々にヒットするのが奥尻島です
白子がたっぷりと入った60cmのマダラ。こんなのが次々にヒットするのが奥尻島です
本州なら喜ばれる良型のアイナメ。しかし、船長は「そんなの逃がしてマダラを持ってけ」とアドバイス
本州なら喜ばれる良型のアイナメ。しかし、船長は「そんなの逃がしてマダラを持ってけ」とアドバイス

全身がヒラメのエンガワのような食感

船は苦手という方には、地磯や堤防からの投げ釣りやルアーフィッシングがオススメです。ルアーではソイやカジカ、アイナメ、投げ釣りではこれにカレイも加わります。
一言でソイといっても奥尻島ではクロソイ、シマゾイ、ハチガラ、マゾイなどが釣りでねらえます。カレイもマガレイ、クロガシラガレイ、スナガレイ、イシガレイなどがヒットします。
向かって右がオウゴンムラソイ。左がトゲカジカ。イカゴロやサンマの切り身エサで釣れます
向かって右がオウゴンムラソイ。左がトゲカジカ。イカゴロやサンマの切り身エサで釣れます
カジカも数種がいますが、奥尻島でよく釣れるトゲカジカは「鍋壊し」の異名を持ちます。あまりに旨いので、箸で鍋底をかき回し過ぎて鍋が壊れてしまうということらしく、島でお世話になったペンションで、女将さんイチオシというトゲカジカの料理、肝入り味噌汁を作っていただきました。アンコウをしっとりとさせたような食感で、味噌と肝の甘味が、いつまでも口に残ります。鍋壊し、むべなるかなと言った感じです。

北海道でハチガラと呼ばれるオウゴンムラソイの刺身は、全身これヒラメのエンガワのようなシャキシャキした食感で、滋味濃厚。
釣りターゲットとしてはメジャーではありませんが、食材としては文句なしの横綱クラスといえるでしょう。
食欲の秋、豊穣の北海に美味魚を求めて、ぶらり釣り旅なんていかがでしょう。
カジカの肝入り味噌汁。弾力のあるプリプリの白身はアンコウのよう。よく、見た目が悪い魚は食べると美味しいなどと言われますが、アンコウもカジカもその筆頭に挙げられます
カジカの肝入り味噌汁。弾力のあるプリプリの白身はアンコウのよう。よく、見た目が悪い魚は食べると美味しいなどと言われますが、アンコウもカジカもその筆頭に挙げられます
オウゴンムラソイの刺身。東京湾や相模湾で釣れるムラソイとは、同じ種類の魚とは思えないほど味に違いがあります
オウゴンムラソイの刺身。東京湾や相模湾で釣れるムラソイとは、同じ種類の魚とは思えないほど味に違いがあります
今回ご紹介したエリア
北海道/奥尻島のマダラ、ソイ、カジカ
MAP
アクセス
島へのアクセス方法は、海と空からです。フェリーは江差町とせたな町から運航しています。予約をすれば、クルマを乗せることも可能。飛行機は、函館空港から奥尻空港まで定期便が運航しています。詳細は奥尻島観光協会のウェブサイトにて確認。
https://unimaru.com/?page_id=62
※このコンテンツは2012年10月の情報をもとに作成しております。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。