八木 健介 氏
月刊『FlyFisher』編集長
八木 健介 氏
編集アルバイトとして2001年から月刊『FlyFisher』の製作に参加。その後、副編集長を経て2010年10月から編集長を務める。休日の釣りは専らフライフィッシング。近所のコイ釣りから、渓流のヤマメ・イワナ釣り、本流のニジマス釣りと、フィールドに合わせた旬の対象魚を追う。

釣り人のイーハトーブ

渓流釣りのファンにとって、東北地方はいつの時代も憧れの土地。
コンディションのよいヤマメイワナが数多く泳ぎ、美しい川から、盛んに毛バリを追う魚たちが飛び出してきます。

東北地方は雪深い地域が多く、全体に釣りのシーズンとなるのは6月以降。雪代(ゆきしろ)と呼ばれる雪解け水が川を洗い、場所によっては川に近付けないほどの増水が起きます。この時期が終わると、今度は一転、川の虫も魚も活性を上げるようになり、各地で釣りが楽しめるようになります。

今回紹介する岩手県は、美しい渓流が数多く流れ、人気のある行き先のひとつ。
盛岡に近い北部エリア、太平洋沿岸に注ぐ川からなる東部エリア、そして東北道が縦貫し、北上川の主要な支流が多くある中・南部エリアに大きく分けることができますが、なかでも東部エリアには、上流部に高原が広がるなだらかな川が多く、車道が川に沿って走っていて、入川地点までのアクセスが楽な川が多いのが特徴となっています。
海岸近くは昨年3月の津波の影響が残っている場所もありますが、どの川も4~5km上流からは有望なフィールドとして今までどおり釣りが楽しめます。
地元の人も通常通りの生活をしており、大いに歓迎してくれます。
川は集落の中、もしくは県道のすぐ横を流れていてどこからでもアクセスしやすい
川は集落の中、もしくは県道のすぐ横を流れていてどこからでもアクセスしやすい
彩りがきれいなヤマメのアベレージサイズ。魚影は多く大ものも充分にねらえる
彩りがきれいなヤマメのアベレージサイズ。魚影は多く大ものも充分にねらえる

小本川支流岩手大川

東部エリアの代表的な河川は、北から安家川(あっかがわ)、小本川(おもとがわ)、閉伊川(へいがわ)など。今回紹介する岩手大川(いわておおかわ)は、小本川の上流部の支流にあたり、県内でも有数の広さを誇る岩泉町を流れる川になります。
夏に東北地方に釣りに出かける際、気を付けたいのが「アブ」と「アユ釣り」です。アブはお盆を中心として1~2週間、おもに日本海側の川に大量に発生するのですが、これにあたってしまうと、まともに釣りができません。また、アユの友釣りが盛んな川では、川の中で広くラインを前後に伸ばして釣りをするフライフィッシングは実質的にできないか、あるいは川を管理している漁協のルールで禁止されるといったケースが出てきます。
釣りのライセンスになる遊漁券は、川に入る前に道路沿いの雑貨店などで購入。「遊漁証取扱店」などのノボリが出ているのですぐ分かる。岩手大川の日釣券(1日券)は1000円だ
釣りのライセンスになる遊漁券は、川に入る前に道路沿いの雑貨店などで購入。「遊漁証取扱店」などのノボリが出ているのですぐ分かる。岩手大川の日釣券(1日券)は1000円だ
その点、太平洋側の上流部にあって、アユ釣りとの競合もない岩泉町周辺の岩手大川は、夏期でも渓流釣りが楽しめるという大きなメリットがあります。さらに、南を流れる閉伊川ともクルマで30~40分で往復できるので、時間があればその両方を回ったりもできます(ただし釣りのライセンスになる遊漁券は、2つの川を管理する漁協が違うので、それぞれ別に購入することが必要です)。

長期滞在の場合、閉伊川沿いにある「静峰苑(岩手県宮古市鈴久名4-5-4/TEL 0193-74-2444)」を利用するとよいでしょう。
集落のあるあたりでは、流心の速い流れにヤマメ、その脇の少し緩い流れにイワナが付く。最上流部になると釣れる魚のほとんどはイワナになる
集落のあるあたりでは、流心の速い流れにヤマメ、その脇の少し緩い流れにイワナが付く。最上流部になると釣れる魚のほとんどはイワナになる
フライはテレストリアルと呼ぶ陸生昆虫が魚の主食になる季節ですので、黒っぽいパラシュートフライやエルクヘア・カディスの#14~16が最適。そのほかのタックルは、渓流で一般的な8フィート前後の3番ロッドと、それに準じた3番のフローティングラインがあればまず問題ありません。リーダーシステムは全長でロッド2本分くらい(16フィート前後)で、先端は6Xでよいでしょう。
川沿いの集落がある最上流地点くらいまではヤマメが主体で、たまにイワナが混じり、その上流になって川の周囲が完全に山に覆われはじめると、イワナの比率が徐々に高くなってきます。川にアクセスできる場所は、橋の前後をはじめ、実際に目で見てそれと判断できる分かりやすい場所がいくつかありますので、迷うことはないでしょう。

岩手大川での釣りは、県内の渓流が全域禁漁になる9月いっぱいまで楽しめます。
今回ご紹介したエリア
岩手県/岩手大川のヤマメ・イワナ釣りMAP
アクセス
東北道の盛岡南ICから、県道36号線を経由して宮古方面(国道106号:閉伊街道)へ。区界(くざかい)峠を越え茂市(もいち)に近づいたら、国道340号を北に左折し、途中岩手大川にぶつかったところで左折して川を上流に向かう。釜津田の唐地集落あたりから上流が釣りのポイント。盛岡南ICからおよそ2時間。
※このコンテンツは2012年8月の情報をもとに作成しております。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。