基礎知識&準備編

2馬力ボートのルールと
マナー

免許は不要でも、
安全に楽しむためには
規則の順守が必要

2馬力ボートは免許不要で操縦できるが、たとえば海では「海上衝突予防法」などに定められた基本的な交通ルールに従う必要がある。そして、自らが〝船長(船頭)〟となって沖へ出る以上、海の状況や気象に対する判断は、すべて自らの責任で行わなければならない。少しでも不安を感じたら、計画を変更することも海のレジャーではとても重要だ。

なお、海上衝突予防法が適用されない湖や川についても、国土交通省が河川法にもとづいて定めているルールや、自治体が条例で定めているルール(ボートの持ち込みの可否を含む)があり、それらに従う必要がある。ここでは、海上衝突予防法に定められたものを中心に、まず覚える必要のある主な海上(水上)交通のルールやマナーを紹介する。

(参考)海上保安庁「海の交通ルール」をご存じですか?
陸上と違って水上には交通標識がない。免許が不要とはいえ、事前の予備知識や情報収集は万全にしておくことが求められる

基本のルールと心がけ

「行会い船は右側通航」と「横切り船は相手を右に見る側が避ける」

ボートを含む船同士がお互いを真向いに見て近づく場合を「行会い船」といい、海上では、両方の船が舵を右に切ってすれ違う「右側通航」が基本。
また、お互いの進路を横切ることが想定される「横切り船」になった場合は、相手を右に見る側の船に回避行動の義務がある。具体的には、速度を落として進路を相手に譲るか、舵を右に切って、相手船の後方に自分の船を向ける必要がある。これらのルールは海の交通法規の基本を定めた「海上衝突予防法」で決められている。

港の入り口では「右小回り、左大回り」

防波堤や埠頭などの構造物の突端は、船同士の見通しが利かないため、出会い頭の衝突や接触が起きやすい。そこで、これらの場所では、防波堤や埠頭の突端を右側に見る船は、なるべく近くに寄って小回りで進み、逆に左側に見る船は、なるべく離れて大回りで走るという、「右小回り、左大回り」の原則がある。また、港の入り口や航路は船の往来が多いので、ボートを止めて釣りをしてはいけない。

出航は許可されている場所を利用

2馬力ボートで出航する際は、必ず許可されている場所を利用する。漁港のスロープを勝手に利用するといった行為は厳禁で、人気(ひとけ)のない海岸から勝手に出航するといった危険な行為も慎むこと。マイボートの持ち込み利用を受け入れているマリーナや港湾施設が各地にあるので、そういった場所を利用して楽しむ。

無理な出航は絶対にしない

海では強風や高波に見舞われると命に関わる事故が発生する。一般にミニボートの場合、風速4m/s以下、波高は0.2m程度が安全に楽しめる目安。大前提として、前日、当日、そして海に出てからも天気予報をチェックし、天候や海況の変化には常に注意を払う。そして、コンディションがよくないときは出航せず、海況が悪くなったときは素早く帰港する。また、夜間や濃霧など見通しが利かない条件下でも出航はしない。

岸から離れて遠くまで行かない

2馬力ボートは、岸からは届かないやや深いエリアを、動力を使って気軽に攻略できるのが最大の魅力だが、遠い沖まで出るための乗りものではない。岸からの釣りと、本格的な船釣りの中間に位置するアプローチなので、天候の急変なども考慮して、岸や出航地が見える範囲(1km程度)を限度として楽しむようにする。

他の船、漁業者、遊泳者から離れる

2馬力ボートは、他の大きな船が通った際に発生する引き波を受けるとバランスを崩す恐れがある。また、その小ささゆえ周囲から視認されにくいため他船とは距離を置くようにし、衝突を避けるためのポールと旗を必ず立てる。漁業関係者に近づくのも仕事の邪魔になるため慎み、海水浴やシュノーケリング、ダイビングを楽しむ人の存在にも常に注意を払って、充分に離れることを心がけよう。

2馬力ボート利用の流れ
(例:葉山港の場合)

今回撮影を行ったのは神奈川県の葉山町にある葉山港。葉山は日本のヨット遊び発祥の地とされ、現在もマリンスポーツを楽しむ愛好家が集う。2馬力ボートを持ち込むビジターの利用も可能で、その際はホームページから事前に申し込みを行い、利用当日も所定の手続きに従う。

葉山は敷地内にビジターも利用できるスロープがある(事前の申請と当日の手続きが必要)
利用当日は事務所に立ち寄って書類の提出と料金の支払いを行い、各種注意事項についてのレクチャーを受ける

手続きを終えると指定の場所でボートの準備や片付けができ、スロープを利用してボートを海に浮かべられる。なお、クルマは準備を終えたら指定の駐車場に移動。詳しい利用法は葉山港管理事務所のウェブサイトで確認できる

葉山港管理事務所
住所: 神奈川県三浦郡葉山町堀内50番地
TEL: 046-875-1504
ウェブサイト:https://www.hayama-port.jp/
※このコンテンツは、2023年9月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。