T.R.-C.ABS・M.A.-C.ABS - 1995.09

Technology
T.R.-C.ABS・M.A.-C.ABS
 
T.R.-C.ABS

New Dual Combined Brake Systemの構造および改良点

 CBR1000Fの場合と同様に3つのキーコンポーネントから構成され、それぞれにコンパクト化および軽量化を施しました。システムを図5に示します。

  
1) フロントキャリパーに発生する制動反力を、リンク機構を介して2次マスターシリンダーに伝達し液圧を発生させる「メカニカルサーボ機構」
2) 二輪車の理想制動力配分特性に合わせた特性を持つPCV(Proportional Control Valve)
3) 2系統の液圧で作動する3ピストンキャリパー

作動原理
レバーブレーキによる作動
   レバー入力によってフロント・マスターシリンダーに発生した液圧は、一般のブレーキと同様にフロントキャリパーに伝わり、両端のピストンに作用し、制動力を発生させます。
左側のキャリパーに発生した制動力は、リンク機構を介して2次マスターシリンダーに伝わり(メカニカルサーボ機構)ここで新たな液圧を発生させます。発生した液圧は二輪車の理想制動力配分特性に合わせた入出力特性を持つPCVによって制御され、入力に応じた出力がリアキャリパーの両端のピストンに作用します。
 
ペダルブレーキによる作動
   ペダル入力によってリア・マスターシリンダーに発生した液圧は2系統に分かれ、一方はリアキャリパー中央のピストンに直接作用します。もう一方の液圧は、フロントキャリパーの中央のピストンを作用させ、ここに発生した制動力でレバー入力時と同様にメカニカルサーボ機構で液圧を発生させ、この液圧はPCVを経て、リアキャリパーの両端のピストンに作用します。
結果的にペダル入力の場合、リアキャリパーの3つのピストンすべてが作用し、レバー入力の場合に発生する制動力より大きい制動力をリアブレーキに発生させます。

図5 Dual Combined Brake Systemの作動原理
図5 Dual Combined Brake Systemの作動原理

Dual Combined Brake Systemの制動力配分特性
 「Dual Combined Brake System」によって得られる前・後の制動力配分特性は、図6の特性線図に示す通り、レバーブレーキ操作による場合の配分特性を、一人乗車時の理想制動力配分特性よりも低めに設定しています。この結果、レバーによる入力が増加していくと最終的に前輪が後輪より先にロックするようになります。
 一方、ペダルブレーキによる制動の場合、その配分特性を最大積載時の理想制動力配分特性よりも高めに設定しています。この結果、ペダルによる入力が増加していくと最終的に後輪が前輪より先にロックするようになります。
 また、レバーとペダルの併用時には、それぞれの特性線に挟まれた範囲に前・後の制動力は配分され、理想制動力配分特性の特性線に近い配分を得ることができます。(図6)
 このようにレバー使用時には前輪からロックが始まり、ペダル使用時には後輪からロックが始まるというのは二輪車のブレーキが持っている基本特性であり、一般のブレーキシステムに慣れたライダーでも、違和感なしに「Dual Combined Brake System」を操作することが可能となっています。

図6 Dual Combined Brake Systemの制動力配分特性
図6 Dual Combined Brake Systemの制動力配分特性




← 前ページへ--- 目次へ--- 次のページへ →