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T.R.-C.ABS・M.A.-C.ABS
 
前・後輪連動ブレーキシステムとABSについて

 前・後輪連動ブレーキシステムとABSはその目的と効果、そして、システムの基本となる考え方も全く異なります。

前・後輪連動ブレーキシステム(Dual Combined Brake System)
 二輪車は、ライダーのコントロールによってバランスをとるという、四輪車とは異なった走行上の特徴があり、前・後輪のブレーキを別々に操作することが要求されます。スクーターを除く二輪車では、右ハンドレバーで前輪のブレーキを操作し、フットペダルで後輪のブレーキを操作するようになっています。
 前輪と後輪のブレーキ特性は異なっており、前輪のブレーキは高い減速度を得ることができますが、ブレーキのかけすぎによる車輪ロックで、車体コントロール性が低下する場合があります。一方、後輪のブレーキは高い減速度を得ることはできませんが、車輪がロックしても、直進状態であれば車体コントロール性の低下は前輪の場合と較べ大きくありません。
 ライダーは、路面状況や走り方に合わせて、これら特性の異なる前・後輪のブレーキをレバーとペダルで適切に配分し、コントロールしています。特に、制動性能を最大限に発揮させようとした場合、このことは非常に大切です。
 二輪車の制動時には、減速度の増加に伴って前輪と後輪の分布荷重が変化します。一般的には図1のように減速度が増大すると、前輪の分布荷重は増加し、逆に後輪の分布荷重は減少します。
 路面とタイヤとの間に発生する摩擦係数(μ)毎に、前・後輪が同時にロックする直前に得られるそれぞれの車輪の最大制動力値をつないだ理想制動力配分特性図は図2のようになります。つまり、この特性に沿った配分をライダーが行えば、前・後輪がロックする直前に最大減速度を得られることになります。したがって、滑り易い(μの低い)路面では、前・後の制動力配分をほぼ同じように配分し、逆に、滑りにくい(μの高い)路面では後輪の制動力を減らすような配分が効果的なブレーキ操作となります。このような理想的制動力配分に近づけるようにレバー/ペダルの操作をより簡便にすることを目的としたものが前・後輪連動ブレーキシステム(Dual Combined Brake System)です。

図1 減速度と前・後輪分布荷重の関係   図2 理想制動力配分特性
図1 減速度と前・後輪分布荷重の関係   図2 理想制動力配分特性

ABS(Anti-lock Brake System)

 急制動時や滑り易い路面などで、ブレーキのかけすぎ状態になった時、車輪はロックし車体コントロール性が低下する場合があります。
 この車輪ロックを回避するのがABSの機能であり、車体コントロール性と制動性能を維持する効果があります。タイヤと路面間の摩擦特性は、「走る」「曲がる」「止まる」という走行性能の基本的部分を果たしており、ABSを考える上でも考慮する必要があります。

 タイヤと路面間の摩擦特性は、車体速度と車輪の回転速度の差を車体速度で割った数字、すなわちスリップ率に依存します。

スリップ率 = 車体速度-車輪の回転速度

車体速度

 惰性走行(ブレーキをかけていない状態)時は、車体速度と車輪の回転速度は等しくスリップ率は0%となり、車輪が完全にロックした時、スリップ率は100%になります。
 一般的に、タイヤと路面間の摩擦特性は図3のようになります。横軸がスリップ率を、縦軸がタイヤと路面間の摩擦によってタイヤに発生する力を示したものです。
 タイヤの縦方向(進行方向)に発生する力(制動力)は、スリップ率が10〜20%の間くらいで最大となり、それ以上のスリップ率では低下してしまいます。タイヤの横方向の力はスリップ率が0%の時が最大であり、100%の時はほとんど0になります。この時、四輪車ではハンドリングが不可能となり、二輪車では、車体コントロール性が低下する場合があります。従って、車体コントロール性と制動力を適切に得るためには、縦横両方向の力が確保できる10〜20%ぐらいのスリップ率になるようにブレーキ操作を行うことが必要となってきます。
 このようなスリップ率の範囲に保てるようなABS制御を示したものが図4です。ブレーキをかけると車輪の回転速度とともに車体速度も低下します。ブレーキ入力が過大になり、キャリパーの液圧が必要以上に高くなると、タイヤの回転速度と車速の差(△Ve)が大きくなり、その差がある程度に達したときABSは作動を開始し、キャリパー液圧を下げます。これによって車輪の回転速度が回復すると再びキャリパー液圧を上げ、スリップ率が10〜20%の間になるよう、制御を繰り返します。

図3 スリップ率とタイヤに発生する力の関係   図4 ABS制御特性
図3 スリップ率とタイヤに発生する力の関係   図4 ABS制御特性

 以上のような原理で作動する前・後輪連動ブレーキシステムとABSの目的を整理すると以下のようになります。

   前・後輪連動ブレーキシステム : 前・後輪のブレーキ配分を適切にすることによって、簡便な操作で高い減速度や車体挙動の安定性を得やすくする
   ABS : 直進ブレーキ時の過大入力による車輪ロックを回避することで、車体コントロール性と制動性能を維持する

 このように、前・後輪連動ブレーキシステムとABSという2つの機能を融合させることで、それぞれの効果をより高いレベルで同時に実現することを可能としました。




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