NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
EXTERIOR


徹底した風洞実験から生まれた、
全身エアロフォルム。
M・R方式は、そのエンジン搭載位置から、ノーズが短かくでき、しかも低重心化できるなど、本来的にハンドリング性能と空力特性に適した駆動方式であるといえます。これをさらに高めるため、徹底した風洞実験を繰り返し実施。その結果、空力特性に優れたスタイリングをもたらしています。
一般的に空力特性が走行に影響を及ぼす要素としては、(1)空気抵抗の増大による走行性能の悪化 (2)揚力発生による操縦性の悪化 (3)横風による直進安定性の悪化、の3つがあります。
(1)はCD(空気抗力係数)及びCD×A(空気抗力係数×前面投影面積)、(2)はCD(揚力係数)、(3)はCYM(ヨーイング・モーメント係数)という数値によって、それぞれその性能を表わし、数値が小さいほど空力特性に優れているといえます。
NSXでは、空力テストを通じて最良の絞り込み量を設定したフロントボディ、気流に沿って絞り込んだリアボディ、長く低いテールエンド、前進キャノピー・デザインによるなだらかな傾きのリアウインドウが、CD低減に貢献しています。
また、CDの低減には、前に張りだしたフロントチンスポイラー、グループCカーのように横に張りだしたサイドシル、前進キャノピーのキャビン、長いテールエンドが貢献。また高速安定性に重点をおき、CDが前後でほぼ重量配分と同じバランスとなるよう、リアスポイラーの高さと角度を調節しています。
CYMの面でいえば、ミッドシップの場合、フロントが軽くなるため、なるべく空力の中心点を後方に寄せることが、必要です。そのためテールエンドを長くすることで、風圧の中心位置と車体の重心位置を近づけ、新タイプのLSDとも相まって、優れた横風安定性を確保。サイドエアインテーク、リアスポイラーもCYM低減に寄与しています。
CD、CL、CYMが、高い次元でバランスされた優れた空力特性をもつ、全身エアロフォルムを実現しています。

CD (空気抗力係数):0.32
CD×A(空気抗力係数×前面投影面積):0.57
CL (揚力係数):0.02(フロント)0.03(リア)
CYM (ヨーイング・モーメント係数)[30DEG]:0.24

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ミッドシップ・レイアウトをさらに強調する、
コンパクト偏平ノーズとロング・テールエンド。
M・R方式の特長を生かし、乗員を前に寄せた前進キャノピー・デザインとしたうえで、フロントは、小径タイヤ、コンパクトなリトラクタブル・ヘッドライトの採用などにより、より低く短いノーズとしています。
また、リアには大きめのラゲッジスペースを設けることで、比較的長いテールエンドを実現。コンパクト偏平ノーズとロング・テールエンドが、フロントからリアに流れる美しいフェンダーラインを形成。前進キャノピー・デザインとともに、高性能な走りを予感させる動的なフォルムを創造しています。
大きな形状のサイドエアインテークは、ミッドシップならではのサイドビューをいっそう強調。空力特性を大きく向上させるリアスポイラーと、インテグレートされたリアテールランプは、超音速小型ジェット機の排気孔のような、オーバル形状のコンビネーションデザイン。リアビューに、かつてない鮮烈な印象をもたらしています。

優れた配光特性、コンパクト化、空気抵抗低減、を同時に成しとげた
プロジェクター4灯式リトラクタブル・ヘッドライト。
安全な夜間走行のために、配光効率がよく、しかもコンパクトで、空力性能にも優れた、まったく新しいリトラクタブル・ヘッドライトを独自に開発しました。
これまでのリトラクタブル・ヘッドライトに比べ、ポップアップ時の高さを最小限に抑え、空気抵抗を低減するため、プロジェクター4灯式を採用しています。バルブからの光を前方に出すためのリフレクターを、従来より大幅にコンパクト化。一旦、絞った光を凸レンズ及びアウターレンズによって適切な配光に。またシャッター・プレートによって上半分の光をカットすることで、光を拡散させず、幅広く均一な配光を可能にしています。これにより、ユニットの高さは約90mm、幅は210mm。ライトを上げた状態でもスタイリッシュで、しかも空力にも効果的なリトラクタブル・ライトです。
  プロジェクター4灯式リトラクタブル・ヘッドライト

■ボディ一体インテグラル・リアスポイラー
高速走行時のボディ後端部の整流効果を高めるため、ボディと一体化したインテグラル・リアスポイラーを採用。CD、CL、CYMのベストバランスにセッティングすることで、優れた空力特性をもたらしています。スポイラー本体は、軽量化のため、樹脂素材を採用。LED式ハイマウント・ストップランプも内蔵しています。
 
■多重レンズ式リア・コンビネーションランプ
超音速小型ジェット機の排気ダクトのような、強烈な印象のリアビューを実現するために、多重レンズ式を採用。各ランプの色調を近づけ、一体感のあるリア・コンビネーションランプを実現しています。
 
■アルミ・ドアレギュレーター
ドアガラスの昇降装置であるドアレギュレーターに、アルミによるワイヤー式U字チャンネルフレームを採用。軽量化とコンパクト化を図っています。
 
■ピンガイド・サッシュレスドア
高速走行に対応、これまでドアのベルトラインの下にあったピンガイドおよびサッシュホルターをロングスパン化し、ベルトラインより上に突出させています。これによって高曲率の三次元曲面サイド・ウインドウに対する支持力を上げ、風洩れを防止するとともに、サイド・ウインドウを開けている場合もしっかりと支持しています。
このドア内ガラス収納スペースの有効活用により、低いベルトラインを可能とし、前方斜め方向の視界も充分に確保しました。
 
■アルミ・ドリップモール
モールにもアルミを採用し、軽量化を図っています。押し出し成形とプレス成形で加工されたアルミ・ドリップモールに、ボディ同様の表面処理を施してフラッシュ・マウント。空気抵抗を低減しています。




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