オールアルミボディ実現のためには、さまざまな難問が待ち構えていました。熔接も、その一つです。NSXでは、鉄の場合と同様に、スポット熔接を基本としました。
スポット熔接は、熔接する2つの素材の両側を電極ではさみ、瞬間的に電流を通し、素材と素材の抵抗により発熱させ、それぞれの素材を溶かし、冷却後に接合した状態とする方式です。
しかし、アルミは電気をよく通し、熱伝導率もいい、という2つの特長をもち、鉄に比べてスポット熔接しにくい材料です。そこでホンダは、まず材料からのアプローチを行ないました。
熔接したさいの高い強度と安定性を条件に、数多くのアルミ合金のなかからスポット熔接に最も適した特性のアルミ合金を選択、ボディ素材として使用しています。
また一方で、ボディの開発と同時に、新しい熔接機の開発に取り組みました。というのも、鉄が7,000〜12,000アンペアなのに対し、アルミは瞬間的に20,000〜50,000アンペアの電流が必要であり、相対的に鉄よりも板が厚く、へこみタフネス性も高いため、加圧も鉄の200〜300kgfに対しアルミは400〜800kgf必要でした。
従来の2次ケーブルスポットガンでは、電圧を電流に変換するトランスの後ろに、長い2次ケーブルがあり、これでアルミに必要な電流を流すと、電流が大きいために電流損失が多く、効率が非常に悪いわけです。そのため、ガン自体にトランスを内蔵させた、専用トランス内蔵式スポットガンを新たに開発。この問題をクリアしています。
このスポット熔接に加え、たとえば細く長い形状のフロントピラーなど、フランジレスで熔接が必要な部位については、アーク熔接を採用しています。 |