NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
CONCEPT

生産技術 生産技術

ひとつのクルマを開発するために、
それを生みだす工場と、
そして生産技術の開発から始める。
NSXは、そうすることでしか創造しえなかったスポーツカーでもあります。
 
元来ホンダには、新しいメカニズムを導入するさいには、必ずそれをつくる工作機械づくりから始めた歴史があります。
NSXでは、さまざまな高品質設計条件を充たすため、新たな工作機械づくりにとどまらず、専用の工場をつくることから始めました。オールアルミボディの採用にともない、アルミ熔接専用マシーンを用いて、精度を高めていくことに加え、徹底して品質にこだわり、人間の創造力にもこだわる、近代的な意味でのクラフトマンシップの確立をめざしたからです。
たとえば、鏡のような塗装面での仕上げや、ドアの快い開閉フィーリング、さらにはチリ段差など、ディティールの一つ一つに到るまで。それらは最終的に、人間の手と眼と耳を通して綿密にチェックされ、吟味されるべきものです。
すなわち、一般に生産方法には2通りの考え方があり、大量生産を前提として品質の安定を図るには機械化と自動化の比率を高めることが不可欠であり、逆にNSXのような高性能車の場合は、少量生産を前提とする、より人間の創造力を生かす方向が適しているといえるわけです。
そしてNSXは、一日25台、年間約6,000台という少量生産体制をとっています。具体的には、全工程をわずか190のセクションとし、それぞれが機能保証をする、インライン工程保証システムを導入。各々のセクションでは、その過程において完全なものを次へトスし、同様に次のセクションでは完全なものしか受け取らないことを徹底。各工程ごとに、しっかりとNSXの品質を創りあげていくシステムとなっています。
人間が工程の主役であり、設備は人を助ける道具とする考えが、それです。従って、いわゆるベルトコンベアもなければ、大量生産のための工作ロボットも存在しません。高い処に上ったり、クルマの下にもぐる代わりに、クルマの方をつねに適正な位置、自然な姿勢で作業できる位置に移動させ、人間が感じるストレスを可能なかぎり取りのぞいています。それが最もクォリティの高いものを生み出す、最良の方法でもあるからです。

NSXは、専用工場をもつスポーツ。




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