NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
CONCEPT

たとえば200kg軽くつくれれば、
馬力にして40ps
に相当する。
これは、スポーツカーづくりの新しい方向として、
NSXコンセプトを具体化する最大のポイントでもありました。
 
別の視点から、見てみましょう。
速いことがすべてに優先される、いわゆるピュアスポーツという言葉で語られる世界があります。これは性能の追求を第一とするために、人間の居住空間やドライビング時の快適性をどこかで切り捨て、何よりメカニズムを優先させたところで成立させていく方向です。
今ひとつは、量産メーカーによる、マスプロダクションスポーツのジャンルがあります。これは逆に、快適性や信頼性などを盛りこむため、必然的に性能面で妥協を迫られることになりかねません。
NSX開発にあたり、まず、すべての妥協を捨て去るところから始めました。世界一級のパフォーマンスをそなえ、かつハンドリング性能とブレーキ性能、空力性能、視界、快適性、信頼性、安全性など、すべてを高い次元で両立させてこそ新世代のスポーツカーであると考えたからです。
そのため、三軸図と呼ぶ、いわば3つのテーマを掲げました。
「走る」「曲がる」「止まる」の高次元バランスをめざしたビークル・ダイナミクスVehicle Dynamicsと、人間のための快適で最適なドライビングをもたらすヒューマン・フィッティングHuman Fitting、さらにはさまざまな天候や道路、走行時の環境に適合するためのロードコンディション・アダプタビリティRoad Condition Adaptabilityがそれです。そして、これら3つの輪を、最大限に広げることをめざしました。
しかしそれは、簡単なことではありません。そのいずれにおいても、確かな技術の裏づけと、絶対的なボディの軽量化がなければ、まったく成りたたないテーマだからです。
ホンダは、開発の過程でさまざまな新素材の導入や軽量化の試みを繰り返してきました。そして、それらの集大成として、量産車として世界で初めて、オールアルミ・モノコックボディの開発に着手。しかもボディだけにとどまることなく、エンジンからサスペンション、さらにはシートフレームに到るまで、トータルな考えをもって導入に成功したのです。
元来アルミは、航空機のボディに用いられるように、鉄よりも遥かに軽く(アルミ合金の比重は鉄の約3分の1)、しかも腐蝕に強いだけロングライフであり、また何度でも再利用できるなど資源面からみても、きわめて優れた素材です。しかしながら、重量当りのコストが鉄の約5〜6倍になることや、成形や熔接に高度な技術が要求されるため、容易に具体化できなかったものでもあります。
そのため剛性を高める新たなアルミボディ構造の開発や、専用工場による新しい生産加工技術を確立することで、ついにこれを実現。その結果、ホワイトボティの重量はなんと210kgとなり、スチールボディと比べて140kgも軽量化。エンジンやサスペンションまでも含めれば、200kgという、エンジン出力に換算して約40ps(*パワーウエイトレシオ5kg/psで算出)に匹敵するほどの驚異的な軽量化を達成し、スポーツカーのテクノロジーに新たな可能性を拓きました。

NSXは、オールアルミボディ。

三軸図
 
三軸図


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