NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
CONCEPT

運動性能(Vehicle Dynamics)

大パワーのエンジンは、ボディが大きくなって
重くなるという宿命をもちます。
新世代のスポーツカーは、パワーと同様、
運動性能(Vehicle Dynamics)こそ重要だと考えます。
 
新しい時代を見据えた、独自の、そして最高レベルのスポーツカーであるために。
ホンダは当初から、さまざまなスポーツカーの分析を繰り返してきました。そこで得られた私たちなりの結論は、「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能を極限まで高め、これらを高次元でバランスさせたビークル・ダイナミクス(VehicleDynamics・運動性能)の徹底追求にありました。
そのためホンダは、これまでスポーツカーが高性能の証しとしてきたパワーウエイトレシオのみに頼るだけでなく、スポーツカーづくりにおいて初めて、ホイールベースウエイトレシオ重視の思想を持ちこんだのです。
ここに、“天の川”と名づけた、一枚のチャートがあります。
世界中には、軽量で俊敏なハンドリングではあってもパワーでやや物足りないライトウエイトクラスから、豪快な大パワーではあるが、ハンドリングがややむずかしいヘビーウエイトクラスまで、さまざまなスポーツカーが存在しています。それらを、「走る」性能を知るものとしてパワーウエイトレシオを縦軸に、ホンダの新しい考え方であり、スポーツカーにとって最重要であるべき「曲がる」「止まる」性能を知るものとして、新たにホイールベースウエイトレシオを算出し、これを横軸に配したものがこのチャートです。と、それらは期せずして、あたかも“天の川”のようなゾーンを形成しました。そして、あの、モータースポーツの最高峰であり、飛びぬけた「走る」「曲がる」「止まる」性能をもつF-1マシーンは、当然ながら、まさに天の川と対峙する究極のところに位置します。
一般的に、「走る」性能を大パワーに求めれば、それだけ大排気量エンジンとなります。と今度は、それを支えるためにボディ全体が重く大きくなっていく。その大ボディを、再び大パワーで引っぱる。やがては、軽快なハンドリングをギセイにせざるを得なくなり、左頁の“天の川チャート”でいえば、右下方のヘビーウエイトクラスのゾーンにあたります。一方、左上方のライトウエイトクラスのゾーンでは、小パワーと軽量ボディとによって、ハンドリングは軽快で楽しいものながら、「走る」性能において物足りなさがつきまといます。そこでホンダは、それらの性能のバランスにきわめて優れたミドルウエイトクラスに着眼。そのうえで、スポーツカーとして数多くの利点をもつM・R(ミッドシップエンジン・リアドライブ)方式を基軸として、動力性能と運動性能を高度に両立しうる、新たな目標を設定しました。すなわち、パフォーマンスとハンドリングをいかに高めていくか。言い換えれば、F-1方向に向かって、いかに群れ(天の川)から離れていくかに挑戦したわけです。

NSXは、
ビークル・ダイナミクスを
極めたスポーツ。



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