CIVIC - 1991.9


CIVIC

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シャシー




乗り心地と操縦安定性の高次元での両立をめざした、サスペンション・チューニング。
 
最良の乗り心地を得るためには、荒れた路面でも姿勢変化が少ないこと、振動をひろわないこと、が基本です。つまり、しなやかな乗り心地と高い安定性を両立しなければなりません。
そのため、まずサスペンションのバネレートをフロント・リアともに15〜20%下げて路面の変化をソフトに吸収させるとともに、フロントサスペンションのストロークをバンプ側で7mm、リバウンド側で15mm増加させ、よりスムーズにショックを吸収。しかも、バンプストッパーラバーを延長して容量をアップ。補助バネとしての役割ももたせることで、プログレッシブなバネ特性を生みだしています。接地性を高めることで乗り心地を向上させると同時に、悪路での追従性やコーナーでの喰いつきのよさなど、駆動時も制動時も安定した特性をもたせました。
そのうえで、減衰容量の格段に大きい高性能ガス封入ダンパーを開発して、前後に採用。シリンダーサイズをφ25mmからφ30mmへサイズアップし、ダンパーの効きを大幅に向上しています。そのため熱劣化が少なく耐久性に優れ、連続したハード走行でもダンパーの性能が変化しないという、大きな利点をもっています。
さらに、HPV(HONDA PROGRESSIVE VALVE)を採用し、応答性を高め、最適な減衰力をもたらすなど、乗り心地と操従性を向上させています。
DOHC VTECエンジンには、その高出力に対応し、HPVをピストン側だけでなくボトム側にも採用し、よりスポーティな乗り味をもたせています。

*シビックSiR・II、SiR、シビックフェリオSiR
 

フロントサスペンション上面図(左)後面図(右)
 

フロントサスペンション上面図(左)

フロントサスペンション後面図(右)


 

フロントのロールセンター高を下げ、コーナリング時の接地性を向上。
 
フロントのロールセンター高を下げながらも、プログレッシブなバネ特性とダンパーの高性能化を図ることで適度なロールを与え、いわゆる初期あたり性を解消。適度なロールを許容することで、結果としてアクセルON状態でのタイヤのスリップをおさえ、路面にしっかり駆動力を伝えることで、荒れた路面でも素直で安定したコーナリングをもたらします。

ロールセンター軸の改良
ロールセンター軸の改良


 

さらに安定性と乗り心地を向上させるための、最適ジオメトリーとフロントL字形ロアアーム。
 
より高度な操縦安定性を得るためには、アライメント変化を極力小さくすることが必要です。そのためシビックでは、まずサスペンションの取付け点の剛性アップを図るとともに、ロールセンター高を低くしてトレッド変化を少なくしたうえで、トー変化の見直しを実施し、タイヤがバンプしてもリバウンドしても極力変化が少なくなるように設定。よりリニアな特性をもたせました。キャンバー変化についても、従来からの特性を生かしきり、タイヤがつねに路面に対し垂直に接地するように設定し、直進時とコーナリング時の安定性を大幅に向上しています。
また、乗り心地を向上させるため、ひとつのサブフレームに一体で取り付けられたL字形ロアアームをフロントに採用。路面の突起を通過するさいなどにタイヤにかかる前後方向の外力に対し、L字形ロアアーム後端のコンプライアンスブッシュによってその力を吸収するなど、ほとんどの衝撃を内力化する構造にしました。また、タイヤからの前後入力を受け止めるサブフレームの位置を、剛性の高いサイドフレーム後端に設定することが可能となり、キャビンへの振動伝達を最小限におさえて乗り心地を向上しています。

 

■サスペンション・ジオメトリー(キャンバー変化)

サスペンション・ジオメトリー

■サスペンション・ジオメトリー(トー変化)安定化

フロント

フロント

リア

リア

 

スプリットμ路のブレーキスタビリティを向上した、ネガティブスクラブ化。
 
左右の条件が異なる荒れた路面でのブレーキングは、クルマの挙動が不安定になりがちです。そのさいも、危険な方向にステアリングが切れるのを助長しないために、フロントに-4mmのネガティブスクラブを採用。ブレーキスタビリティを高めています。

 

最小回転半径をおさえた、新開発の広角度ドライブシャフトジョイント。
 
シビックで+70mm、シビックフェリオで+120mmホイールベースが長くなっており、一般的に最小回転半径が大きくなりやすいと言えます。
そのため、タイヤの切れ角がいっぱいにとれ、サスペンションの動きにスムーズに追従できるドライブシャフトジョイントを開発しました。角度は、従来の46°から50°となり、クラス最大。その結果、最小回転半径の増加をおさえ、外輪でシビックが4.9m、シビックフェリオで5.0mと、FF車でしかも2,620mm(シビックフェリオ)ものロングホイールベース車でかつてない最小回転半径を確保しています。

*シビック、シビックフェリオともにSiRをのぞく

ドライブシャフト高角度アウトポートジョイント 
ドライブシャフト高角度アウトポートジョイント


 

より自然な転舵フィーリングを生んだロータリーバルブ式パワーステアリング。
 
新採用のロータリーバルブ式。人間の自然な感覚により近いフィーリングです。
オイルポンプは、小型・軽量ながら、容量を30%もアップした大容量のベーン式。それでいてエンジンのパワーロスを従来レベルにおさえ、素早い操作にもレスポンスよく反応。転舵追従性に優れたパワーステアリングです。




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