CITY - 1982.09

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●エンジン(7)

〈検出〉スピード・デンシティ方式の採用

検出の基本は吸入空気量を測ることですが、大きく分けて、マスフロー方式とスピード・デンシティ(速度・密度)方式があります。
マスフロー方式は、空気量をコントロールするスロットルバタフライの上流に設けたエアフローメーターで空気量を検出する方法であり、スピード・デンシティ方式は—
   速度=エンジン回転速度
   密度=吸気マニホールド内の空気の圧力
の2つを検出し、吸入空気量を算出する方式です。
PGM-FIは、後者のスピード・デンシティ方式を採用。次のようなメリットをもっています。
検出位置が吸気マニホールド内にあるので実際の空気量変化に即応して検出することが出来る。
図1のように、マスフロー方式だとピストンが吸入行程に入ったときに実際に吸入される空気量を測定すべき検出部が、「吸気マニホールド」→「スロットルバタフライ」→「吸気管」→「検出器」とエンジンからの距離が遠く、吸気マニホールド内の圧力が変化してからいくぶん遅れて吸気管内の空気量が変化するために、原理的に応答性が阻害されます。
それに比べ、スピード・デンシティ方式は吸気マニホールド内での圧力検出を基本としているため、検出部がスロットルバタフライの下流、つまりシリンダーに近いところにあり、応答性にすぐれていると言えます。

マスフロー方式/スピード・デンシティ方式

検出器がシンプルで応答性にすぐれている。
マスフロー方式で使用するエアフローメーターとして、現在考えられるいくつかの方法は、いずれも構造が複雑になりやすく、空気量の変化に対して検出器の応答安定性に難があります。
一方、スピード・デンシティ方式で使用する吸気圧力センサーは、構造がシンプルで、検出器自身の応答性もすぐれています。
このように、検出機能が原理的にも構造的にも応答性にすぐれているということは、正確なコントロールの基本であり、たとえば微妙なアクセルワークにも、スピーディに、しかも的確に応えるためのベースとなるものです。
ハイパーターボ用PGM-FIは、吸気マニホールド内の圧力が、通常の負圧域から高過給圧域まで大幅に変化するため、低圧力検出用と高圧力検出用の「2つの吸気圧力センサー」を用いて、検出精度を高めています。
さらに、やはり吸入空気量の算出のために必要なエンジン回転速度検出機能と、後で述べる4気筒順次噴射方式のベースとなる各シリンダーのクランク回転角度検出機能をあわせもった「クランク角度センサー」を採用しています。
この2種類の基本的なセンサーに加えて、
空燃比領域の設定に寄与する「車速センサー」
理論混合比領域の空燃比を精度良くコントロールする「O2センサー」
加速および減速時の燃料コントロールに寄与する「スロットル開度センサー」
吸入空気温度による空気密度の変化に対応して燃料の量を補正する「吸気温度センサー」
冷気時の燃料増量に寄与する「水温センサー」
アイドリング時の空燃比の調整に有効な「アイドル調整センサー」
以上の6種類のセンサーを採用。
このようにPGM-FIは、検出機能として、じつに8種類もの新しいセンサーをもっています。

〈制御〉デジタルコンピューターの採用

大衆車で初めて採用!
8ビット高精度デジタルコンピューター。
基本制御作動図

燃料噴射制御部は、マイクロコンピューターにより各種信号を受けて計算し、燃料の量を制御します。マイクロコンピューターには、アナログとデジタルがありますが、PGM-FIは、複雑な計算や多くの情報に充分対応しうるデジタルコンピューターを、大衆車で初めて採用しました。
その特長は、次のとおりです。
コントロール精度が、高い。
入力信号をそのまま用いるアナログコンピューターと異なり、デジタルコンピューターでは、入力信号をまずアナログ→デシタルに変換し、0,1信号に変えてから計算を始めるため、読み取り誤差がほとんどなく、変数が増えても計算の精度が高いと言えます。
多様なコントロールが可能となる。
入力信号に対して一義的な制御しか出来ないアナログコンピューターと比べて、デジタルコンピューターは入力信号に対していかなる計算処理も可能であり、エンジンの要求に応じた多様なコントロールを行なうことが出来ます。

コンピューターユニットとマップ・プログラム方式
PGM-FIシステムの頭脳にあたるコンピューターユニットは、最新の半導体技術を導入した8ビットの高精度デジタルコンピューターで、CPU(中央処理部)、メモリー(記憶部)、I/O(入出力部)から構成されています。
この高度なハードウェアをベースに、ソフトウェアとして独自のマップ・プログラム方式を新たに採用しました。
具体的に言いますと、各種の運転状態や環境条件に応じて最適な空燃比が得られるよう、まず、記憶部に5つのマップ・プログラム(2次元の索引表)を記憶させておきます。
そして、各種センサーから中央処理部に送られてきた信号によって、どのマップで計算するかを選定し、その選ばれたマップにもとづいて最適な燃料の量が拾い出され、さらに一部の補正をほどこしてインジェクターに電圧パルスを送るしくみとなっています。
この計算処理の核をなすマップ・プログラム方式は、グラフ方式に比べ、より多様なコントロールをするのに適した方法です。したがって、運転状態や環境条件に応じてつねに最適な空燃比にコントロールすることが出来ます。
もちろんこの考え方は、CVCC-IIいらいのラピッド・レスポンスコントロールの概念を基本に、大きく発展させたものです。クルージング走行時に最適な希薄混合気領域は、さらに薄くして燃費性能を高め、加速走行等に最適な理論空燃比領域では、O2フィードバックを使ってより正確にコントロールし、パワー&レスポンスを高めています。
さらに、過給域においても最適空燃比コントロールを行なうことにより、ターボの能力を最大限に引き出し、あわせて減速時の不要な燃料をきめ細かくカットするコントロール機能を身につけ、燃費性能も大幅に向上させています。



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