LiB-AID E500 for Music
開発者インタビュー

変えないデザインも一つのこだわり
持ち運べるオーディオ電源という提案

また外観についても、オーディオ機器との調和をはかるため、メタル調のシルバー色を使った仕様に仕上げています。本体のパーツは内側には電磁波シールド、外側にはシルバー塗装と、かなり手が込んでいるのです。

小野寺 : 外観がオーディオ然としないという意見もいただきますが、例えばご自宅と別荘でオーディオを楽しんでいる方が、両方にバッテリー電源を置くのは大変かもしれませんが、E500 for Musicなら簡単に持ち運んで使っていただけるのではないかと考えています。

LiB-AID E500 for Musicなら場所を選ばず電源からサウンドにこだわることができる。

進 : 開発時には、「オーディオ製品に取っ手はないよね」という意見ももちろんありました。ですが、我々は使いやすい製品が第一と考えて、敢えて残しています。このように、Hondaはお客様が使い易いことを第一に考えており、安心して信頼して使っていただける製品を常に目指しています。

アウトドア用に開発した蓄電機と同じく、敢えてハンドルを残した。

悩んだ分だけ、試した分だけ良くなる
試行錯誤から生まれるHondaのモノ作り

鈴木 : ここまで色々な話を伺いましたが、E500 for Musicの開発で一番苦労した点は?

小野寺 : コンセントなどの部品を変える度に試聴を行いわずかな音の変化を聴き分けていくのも大変でしたが、それよりも難しかったのは電磁波シールドでした。いきなりシールド材を試しても効果があるか分からないので、最初は進とふたりで樹脂ボディの裏にアルミテープを貼って、効果を検証しました。手作業で貼った後に音を聴いて、さらに放射ノイズが減っているかを測定して、効果があることを確認しました。

鈴木 : そこまで実証しなくてはいけないのですか?

小野寺 : 効果も分からないのに、いきなり試作をすることはできませんから、まずは検証をしてからということがほとんどです。私は普段からそういう仕事をしていたのでアルミテープもすぐに貼れたのですが、進は設計部門で図面を引く仕事なので、貼るのに時間がかかっていました。

進 : 私がひとつ貼る間に、小野寺が残り全部やってくれました(笑)。もともとの部品は樹脂材で電気が流れない素材なので電磁波が透過してしまうのですが、そこに導電性のアルミ材を貼れば電磁波を遮蔽するはずなのです。でも、効果があるか実際に製品でのシールド効果を確認し、自分たちの考えが正しいことを証明する必要があります。

樹脂ボディの内側にアルミテープを貼った試作パーツ。電磁波に対するシールド効果を検証し、材料や製法の検討を進めた。

鈴木 : シールドには反射するタイプと、吸収する物がありますが、今回はどちらを使っているのでしょう?

進 : 高周波を遮蔽するタイプを採用しています。

小野寺 : 放射ノイズを測定するのは電波暗室で行ないますが、部屋自体もかなり大きくなくては正確に測定できません。

小さな小部屋をイメージされるかもしれませんが、車一台が入るどころではない大きさです。小さめの体育館くらいはあるでしょうか。天井も高く、出入り用の扉も厚さが30cmほどあります。その真ん中にE500 for Musicをぽつんと置いて計測しました。

鈴木 : さすが自動車メーカーですね。それだけのテストをしているとは思いませんでした。

Hondaの研究開発施設内にある電磁波測定室(電波暗室)。写真は業務用発電機を測定している様子だが、E500 for Musicでも同様の測定を行なっている。

小野寺 : 強度という意味では、ベースの蓄電機では限界性を知る意味で落下試験を行ないます。またボートで使う方もいらっしゃるかもしれないので、水の中にも落として何が起こるかも把握しています。

基本的にはE500 for Musicも作業現場で使われるHondaの発電機と同等の評価を行っていますので、ちょっとのことでは壊れませんし、仮に壊れたとしても危険なことにはならないように設計されています。

進 : ボディのベースが樹脂なので簡単に壊れるのではないかと思われるかもしれませんが、合わせ構造を工夫して作っていますので、薄い鉄板よりも強いくらいです。表面のメタル調シルバー色についても、外に持ち出す可能性があるので、簡単に変色しないなどの配慮をしています。

お客様の期待に応える電源を目指して

鈴木 : 気になるのは、E500 for Musicの後にHondaからどんな製品が出てくるかですが、そのあたりはどうお考えですか?

進 : 社内でもE500 for Musicの価値を認める人と認めない人がいました。しかしこの価値に賛同いただき購入いただいたオーディオ愛好家の方が満足していただくのが、確実な評価だと思います。E500 for Musicを購入していただいた方のリアルな反響を集めていきたいと思っています。

小野寺 : 個人的には、いい製品ができたので次につなげたいと思っています。電源の重要性、綺麗な電気を求めているお客様や業界もあるでしょうから、色々な用途に応えられる発電機も含めた電源を作っていきたいと考えています。

進 : E500 for Musicで、音にどのような影響を与えられるかは正直分からなかったのですが、Hondaとして世の中に出したときに、オーディオ愛好家に“駄目だね”とガッカリさせたくないと思っていました。

最終的には鈴木さんを始めとするプロの皆さんからも効果があると言っていただき、自分たちが行ってきたモノ作りが間違いでなく正しかったと安心しました。200台のE500 for Musicを提供する中で、実際に使ってもらい、音に関するフィードバックをもらって、それから次に進めたいと思います。

小野寺 : オーディオ愛好家の方々がどんな感想を寄せてくれるか、今から楽しみにしています。

オーディオと電源をテーマに話が尽きない鈴木裕さんと開発陣