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第1回サーキットベストへの挑戦
 
操縦性の質を向上させ、速さを引き出す「空力操安」への挑戦
NSX-Rが、市販車としては困難な前後マイナスリフトに挑戦したことをご存知だろうか。
マイナスリフトを導入し徹底した専用チューニングを行ったNSX-R。
その結果、「よく仕上げられたレーシングカーのようだ」と、ジャーナリストや
レーシングドライバーから評されるほどのドライバビリティを獲得した。
それではなぜ、NSX-Rが空力に着目し、
どのように空力をパフォーマンスに利用したのか説明してみたい。
 
1.マイナスリフトのしくみ
  マイナスリフトとは、空気の力によってクルマが路面に押しつけられ、
リフト(揚力=浮き上がろうとする力)がマイナス方向に働くということだ。
ではなぜ、リフト(揚力)が発生するのか?それは簡単。
浮き上がる側の空気の圧力が低くなり、圧力の高い側から(空気的に)押し上げられるからだ。
     
飛行機の翼も同じ原理。翼の上面の圧力が下面より低くなるため揚力が生ずる。翼の上面の圧力が低くなるのは、空気の流れが下面より速いため。流体には、速度エネルギーと圧力エネルギーの総和が不変という性質がある(ベルヌーイの定理:本来は位置エネルギーも含まれるが、話を簡単にするため省いてある)。
つまり、速度が上がると圧力が下がるという、トレードオフの関係にあるためだ。飛行機が滑走路で速度を上げると、翼の上面の流れがどんどん速まり、圧力が下がって翼が上に引っ張られ機体が浮くというわけだ。

この現象は簡単な実験でも確かめられる。イラストのように、紙テープの上面に沿うよう息を吹きかけて欲しい。すると紙テープは持ち上げられてたなびくだろう。これは、上面の流速が上がり圧力が低下することで、紙テープに揚力が働いたためである。 この揚力を逆向きにすると、マイナスリフトとなる。つまり、クルマのボディ下面の流れを良くし、圧力を上面より低くすることで、ボディを路面に押し付ける力を発生させるのである。
 

説明図1


説明図2

   
2.マイナスリフトの効果
  では、マイナスリフトを実現したNSX-Rは、どんな性能を身につけたのか、ご説明したい。
サーキットなどでの高速走行時、マイナスリフトによって
車体が路面に押しつけられることで得られるメリットは次の3つである
   

NSX-Rが狙ったのは、空力を積極的に操縦性の質の向上に活かすこと。
それが、NSX-Rで今回提唱した「空力操安」という新しい考え方だ。
これまで、マイナスリフトを達成した市販車はあるが、
それを操縦性の質の向上に積極的に活かした例はないだろう。
NSX-Rは、「空力操安」という明確な目的を持ち、前後重量配分とほぼ同等の
前後マイナスリフトバランスを実現。上記イラストのようなメリットを得た。
それは、サーキットでのラップタイム向上を意味する。
また、高速走行時の挙動安定性が高まるため、安心感も増し、
より限界に迫るドライビングが可能となった。
NSX-Rはまさに、空力によって操縦性の質、
すなわちコントロールクオリティを向上させることに成功したのだ。
   
3.マイナスリフトは発生のメカニズム
  NSX-Rは、ボディ下面にアンダーカバーを採用し空気の流れをスムーズにするという手法により、フロントのマイナスリフト発生の糸口をつかむ。
下面をアンダーカバーで、ただフラット化するだけでは、マイナスリフトは発生しない。NSX-Rは、左右のホイールハウスに下面流が逸れるのを防ぐために、カバーの左右に縦フィンをつけるなど形状を工夫。スムーズな空気の流れをつくりことに成功にしたのだ。

この手法により、地上高を下げるなど日常での走行性をスポイルすることなく、また空気抵抗を大きく増やさずに目標としたマイナスリフトを達成したことが、NSX-Rの空力のポイントである。リアはウイングタイプのスポイラーやディフューザーを中心にマイナスリフトを発生させているが、それらをミニマムな形状とすることで空気抵抗の増加を抑えている。
   
 
数値
 
マイナスリフトの導入によって、高速走行時の挙動安定性と限界性能を高めたNSX-R。
この高速時のマージンにより、中・低速域の旋回性を向上させるシャシーセッティングを可能にした。高速でより速く路面に吸い付くように走り、中・低速はアンダーステアが少なくコントローラブルに。全速度域において、操縦性の質、すなわちコントロールクオリティを向上させることができたのだ。
   
 
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