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NSXについて、オールアルミでボディが長持ちすることがよくフィーチャーされますが、ボディだけ長持ちしてもだめなんです。その点NSXは、トランスミッションが壊れないし、ディファレンシャルギアやブレーキも壊れない。 |
エンジンも丈夫だよね。ものすごく信頼性が高い。そこがオールアルミボディと同じくらい重要なところだと思います。 |
アルミは比重が鉄の1/3です。同じく剛性に関わる数値である弾性係数(ヤング率)が鉄の1/3なので剛性は低い。でも強度は同じです。 |
それはともかく、アルミは、ビール缶でいえばリサイクルしやすいから環境に優しいわけじゃないですか。だからリサイクルまで考えると、これからクルマのボディもアルミが有力になるのではと感じています。NSXが30年乗れて、ボディをもう一回リサイクルして生まれ変われるとしたら、50〜60年も乗れるということです。まさにグリーンNSXですよね。燃費もいいですし。 |
たとえば初代のタイプRでいえば、もともと280馬力のエンジンで、400馬力クラスのクルマの速さを追いかけたわけです。クルマの「走る・曲がる・止まる」の性能で言えば、「曲がる・止まる」の性能が高い。 |
つまり、シャシーの運動性能がすごく高いわけです。 |
さきほどの話で、シャシー馬力よりもエンジン馬力が高いクルマって、ストレートは気持ちいいけどコーナーは恐いんです。なんとなく「飛び出しそう」といった感じがある。その点NSXは、コーナーで補助輪がついてるような踏ん張り感があるじゃないですか。だから安心してコーナリングができるし、それが楽しさに繋がるのだと思います。 |
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マニュアルトランスミッションのクラッチを電子制御してクラッチペダルをなくした2ペダルのMTは、速く走るためのウェポンであって、楽しく走るための道具ではないですよね。クルマには、進化の過程で分かれ道があり、「速さか?」「楽しさか?」という選択を迫られるのではないでしょうか。 |
あえていえば、ロータスなんかもライトウェイトでパワーを抑えてクルマを軽くする意味で「楽しさ」の選択なんです。 |
サーキットでも、MTで一周走ると軽く汗をかくのですが、2ペダルだと汗をかかないんですよね。ということは、2ペダルの方が周回を多くしないと同じよろこびは得られないんです。 |
MTだったら5周も走ったら一杯いっぱいになるけど、2ペダルは楽だから5周走っても余裕でしょ。つまりMTの方がエコなんです。そういう意味でもMTはいい。 |
MTのシフトノブを、ゲートから抜いて次のギアの入り口まで持っていくと、スッと食いつくように入る。そういう感覚が気持ちいいですよね。しかもその前に「いつクラッチを踏むのか?」という自分の判断があるわけですから。回転計を睨みながら、リミッターが働く瞬間にクラッチを切って…というところを狙っているわけじゃないですか。 |
その行為が楽しいよね。クルマとの対話なんですよ。 |
今回、ここで述べたことをすべて含めてスポーツカーそれぞれの個性なわけです。ポルシェのRRの手なづけ方も、フェラーリの荒々しさも個性。NSXはそれを真似ず、まったく新しい個性を打ち立てたから世界が一目置いたわけです。批判するのではなく、お互いに認め合わなければいけないと思います。 |
ですから、オーナーのみなさんがNSXを楽しむコツとしては、自分とNSXとの対話をより緊密にできるよう安全な場所で走行を重ねることです。そして、おそらく霞がかかっていて見ることのできないNSXの走りのよろこびに満ちたエベレストの頂をめざして、楽しみながら一歩一歩登っていってください。NSXは、まさに一生モノです。 |
NSX Press > NSX Press vol.34 > The truth of NSX #2 |
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