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国内のサーキットと鷹栖のテストコースなどで磨きに磨き上げられたNSX-Rが、
第二の故郷ともいえるドイツ・ニュルブルクリンクに持ち込まれた。
かつて、NSX誕生と初代NSX-Rの鍛え上げに大いに貢献した過酷なサーキット。
激しいアップダウンと、厳しい路面のアンジュレーション。
2kmを超えるストレートでハイスピードも試せ、変化に富んだ百を超えるコーナーで走りを鍛え上げられるおよそ22kmの道。
ここで、最後の調整と走りの確認を行ったNSX-Rは、予想を上回る仕上がりを見せた。
その現場を統括した塚本亮司が記した記録をもとにレポートをまとめてみた。 |
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出発を前にした塚本の記録ノートは、こう書きはじめられていた。
「いよいよ出発の日が来た。なんだか前日までは、やり残したことがないか、あれこれと心配になり、なかなか帰れなかった。今回こそ、早めに帰宅して出発の準備をしようと思っていたが、無理だった。毎回こんな感じだから、特に珍しいことではないのだけど」
そして機中。「ここまで来ると、もう落ち着いたものだ。何とかなるだろう。事前の現地の天候情報だと、“雨”のしらせに、この先の不安が残る。ただ、今回の遠征スタッフは全員10年前にニュルでNSXをテストし、叩き上げてきたスタッフが揃った。体制は全く問題ない。あとは天気。過去に全日程、雨で何も出来ずに帰ってきたこともある」
しかしニュルは、かつてないほど気持ちのよい天気でNSX-Rの遠征スタッフを迎え入れた。「山の天気だから明日は不安」とのスタッフの心配をよそに、結局最後まで晴れ続けたのだ。これは奇跡的。
速さの質、つまりクルマの性能を存分に引き出せる優れた“コントロールクオリティ”を追求するHondaのスポーツカー開発を、ニュルの女神が祝福してくれたかのようなコンディションだったのだ。
今回のニュルブルクリンク遠征は、鷹栖テストコースや国内のあらゆるサーキットで鍛え上げたNSX-Rの走りの成果を確認することが目的。この“先の読めない過酷な山道”で、不安なく速く走れれば無敵。これまで研ぎ澄ましてきたNSX-Rのパフォーマンスとコントロールクオリティの高さが証明される。
ニュルブルクリンクとは、半世紀以上も前に自動車産業の将来性を予想したドイツ首脳が、失業に喘ぐ国民を駆り出してつくり上げた開発用のテストコースである。アウトバーンが存在しなかった時代ゆえ、2kmにおよぶ直線を有し、300mもの標高差のなかに自動車に賭ける執念とも思われる100を超えるコーナーとアップダウンの試練を詰め込んだ22kmにおよぶ超ロングコースだ。道幅はせいぜい10m。 |
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