SPORTSCARS PARADISE!
もう峠は攻めません!
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もう峠は攻めません!
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もう峠は攻めません!
鈴鹿名物の130R。エスケープゾーンが少なく、ドライバーの度胸が試されるこの高速コーナーをクリアするために、F1は、ギアこそ6速のままだが、アクセルのワンオフか軽いブレーキングを強いられる。より速度の遅いF3000でも全開でいくことは難しい。セッティングがピタリと決まり、たとえ全開でいけるコンディションが整っても、アクセルを踏みつけている足の力が、意志に反し、わずかに緩んでしまうという。

しかし130Rを全開で抜けた度胸の男が存在する。日本一速い男の異名をとる、星野一義だ。それもかつてのF2時代にである。
この頃、タイヤはバイアスからラジアルへの移行期。当然グリップは少なく、ダウンフォースもわずか。そのF2マシンのコクピットに納まった星野は、130Rへの飛び込みと同時に、緩みそうになる右足を抑え込むべく、ヘルメットの中で叫び声を挙げなければならなかった。凄まじき闘争心である。

では、星野一義は恐いもの知らずか?答えは否である。彼は、限界で走ることの恐さを自ら語ることでも有名なのだ。
「スタートの直前には逃げ出したくなる」とか、「ル・マンのユノディエールのストレートではエンジンに少しでも異音が発生しないかビクビクしている」といった彼の言葉は特に知られている。
ユノディエールといえば、トラブルで時速60kmぐらいしか出なくなったために、マシンを止めた関谷正徳のことを思い出す。メカニックのひとりが「走れるんならピットまで戻って欲しかった」といったのだ。それを聞いた関谷は激怒した。「他のマシンが時速400kmで走るコース上を、時速60kmで走るのがどんなに危険かわかるのか!止まっているも同然なんだ」と。
レーシングドライバーは、ドライビングで無理をすることの恐さを知っている。 だから、一般道での彼らは実に注意深い。

NSXオーナーズ・ミーティングに参加されれば、その心境がわかる。
自分の限界、無理をすることの危なさを安全な場所で体験できるからだ。
初のドライビングレッスンを終えた参加者は、「もう絶対に一般道じゃ無理しない」と異口同音に語る。峠を攻めているときは、結構自分はうまいと思っていたけど、サーキットを走って自分のヘタさがわかったという人も多い。

一度挑戦すればわかるが、ブレーキもシャープに踏めないし、アクセルを開け過ぎて滑るし、リアが流れてもコントロールできないのである。私は、レーシングカートでかなり走り込んでいたので少々自信はあったがまったくの惨敗。しかし、楽しさは格別。場所をサーキットに変えただけで、こんなにもNSXを操る楽しさが膨らむのかと驚いた。心からNSXにしてよかったと思える。
ちなみに、黒澤特別講師によると、NSXで130Rを攻めた場合、typeSでも6速には入らず、5速から4速へのシフトダウンが必要とのことだ。このあたりのフィーリングも体験できる。

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NSX Press vol.23 1999年4月発行