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タイヤフォース・マジック
問題1。
ステアリングを切るとなぜクルマは曲がるか?前輪が向きを変えた方に転がろうとするからか。交差点を曲がるクルマを見ているとそう思いたくなるが、事実としては不正確である。
ステアリングを切って前輪の向きを変えると、それまで進行方向に気持ちよく転がっていたタイヤは路面に横から押される。その横力によってクルマのフロントは前進しながら横から押されることとなり、直進から円運動に移行するのだ。そのときタイヤがたわむため、実際にタイヤの向いている方向とクルマの進行方向にはズレが生じる。それをスリップアングルという。
しかし、日常はそれがきわめて微少であるため無視できる。
問題2。
クルマはステアリングを切れば切るほど曲がるか。これも日常では正しいが、限界状態ではそうならないことがある。
ステアリングを切ってもフロントが思い通りに回頭しない状態、つまりアンダーステアのとき、ステアリングを切り増しても曲がらないどころか、さらにアンダーステアが強くなることがある。切っているのに曲がらないということは、先ほどのスリップアングルがかなり大きい状態だ。
曲がる力は、スリップアングルが増えるにしたがって大きくなるが、ある限界を超えると逆に小さくなる。これはタイヤの基本性質であり、どんなクルマでも避けられないことなので覚えておきたい。
問題3。
では、アンダーステアが出たらどうしようもないか。
出さないようにできないか。
もちろん対処方法はあり、アンダーステアが出たらステアリングを切り増すのではなく、アクセルを戻したり適度なブレーキングにより荷重をフロントに移してグリップの回復を待つのである。
荷重が増えるとタイヤのグリップ限界は高まる。これもタイヤの基本性質で、ドライビングで荷重移動が重要なのはグリップの増減に直結し、クルマの挙動を大きく左右するからだ。
タイヤのグリップ限界の大きさは、円の大きさで模式的にあらわし、これをタイヤの摩擦円と呼ぶ。NSXオーナーズ・ミーティングの講議では、この摩擦円が登場するから覚えておいていただきたい。
そして、アンダーステアを出さないようにするには、適切なスピードで進入することが第一。そして、進入時のブレーキングによってフロント荷重になることを利用し、ステアリングを切る時点までわずかにブレーキを残してフロント荷重を保つと、前輪の摩擦円が大きいので回頭性がよくなる。
しかし、あまりフロント荷重にするとリアのグリップが減ってお尻を出してしまう。アンダーステアの対処でも、急激なフロント荷重にしたときステアリングを切ったままだとイン側に切れ込む。
これをタックインというが、おこりやすい現象である。
とにかく一朝一夕にはいかない。走り込みが必要である。
ぜひNSXオーナーズ・ミーティングに参加し、NSXという高質な道具を操るよろこびをより深く安全に味わっていただきたい。
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