色とりどりのマシンがアクセルをフラットアウトするホームストレートからコンクリートウォールを隔てたこちら側が、多忙を極める彼らの闘いの場である。テストをこなし、ベースファクトリーで仕上げたマシンを持ち込むのがレースウィークの木曜日。微に入り細にわたるチェックを行いながら翌日のフリー走行に備えてマシンを組み上げる。 金曜日はフリー走行、土曜日は予選が同じく午前と午後に1時間ずつ行われ、決勝を行う日曜日は、朝8時30分からのフリー走行のあと午後にレース。この間、ブレーキやクラッチオイル系のエア抜き、サスペンションアライメントのチェックから、ボディを彩るカッティングシートの切り貼りまでありとあらゆることを行う。ドライバーのフィーリングによっては、エンジンの積み降ろし、ギアボックスやクラッチのオーバーホール、ダンパーの交換、痛んだボディの修正など重整備を行わなければならない。 NSX GTマシンのシャシー製作を手掛ける一方でチームとしてレースにも参加している童夢(小誌vol.20でも紹介)では、メカニック6人、エンジニア2人、テクニカルディレクター1人の計9人がチームの走らせるマシンのセットアップに関わる。 納得のいく仕上がりにならなければ、決勝レースのスタートまで彼らの作業は途切れることなく続く。彼らが異口同音に口にするのは、勝利の感動は、苦労のすべてを忘れさせてくれるほど大きいということ。それが、唯一無二のモチベーション源であるという。 そして、他の国産コンペティターのなかで唯一のリアルスポーツカーであると自負するNSXを手掛けるプライドが、彼らの胸に漲っていた。
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NSX Press vol.22は1998年8月発行です。