9時53分ピットイン。ドライバーは飯田選手から国光選手に交代。飯田選手はサッとヘルメットを脱ぎ、ガムテープをひっつかんでボディをテーピング。振動が気になったのだろう。まさに全員の情熱でNSXはピットアウト。83番との差を2ラップまで広げることに成功した。しばらくして、シフトする左手に湿布を張り付けた土屋選手があらわれた。表情は疲れているが、「さっきマクラーレンに抜かれるとき中指立てられたよ。こっちもレースしてるんだ、コーナーのなかで譲れるわけないよな」などといい、周囲を笑わせている。11時。順調に走らせた国光選手からステアリングを土屋が引き取った。30分後には、83番との差を3ラップにひろげる。土屋選手はまだ攻める。

イメージ 「僕がここに呼ばれたのは、攻めるためだと思うんです。ただ走ればいいだけなら、僕じゃなくてもいいと思ってる。ホンダも僕がただ周回を重ねるドライバーだったらOKを出さなかったと思う。もっと若い奴もいるしね。でも僕は選ばれた。だったら120%やってやろう。そう考えてますね」と、土屋選手はいった。国光選手も彼のいない所で、「彼ぐらい一生懸命やるドライバーはそういないですよ。個人タイトルをとるレースでもないし、普通はほどほどにやるもんです。しかし彼は違うね。本当に力を出し切る。もちろんアキラも違う」と語っていた。

 とそのとき、GT2トップの79番がガレージへ引き込まれた。NSXのピットは騒然とする。メカニックマネージャーが79番のピットまで見に行く。しかし大したことはなく、すぐにピットアウト。「うーん」という溜息がNSXのピットを満たす。


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