このGT1NSXは、ホンダがエンジンとシャシーベースを提供しTCPによって仕上げられる。したがってエントリーは、TCPホンダ・レーシングっとなる。TCPは英国古参のコンストラクターで、昨年もルマン仕様のNSXの製作を行い全車完走に貢献している。その実績により今回のジョイントとなった。
ロンドンの郊外、北西へクルマを約1時間半ほど走らせたノーザンプトン近郊にTCPはある。シンプルなプレートを掲げた煉瓦づくりのこぢんまりとした建物。そこたTCPの社屋でありファクトリーである。従業員は社長のジョン・トンプソンを含め10名。スタッフの多くは年齢が高く、職人集団といった感じだ。かつてマーチのチーフメカニックだったクリス・チャールズと現代表ジョン・トンプソンで設立。トンプソン・チャールズ・プロトタイプ社、TCPをスタートさせた。設立間もない頃、父の急死でクリスは祖国ニュージーランドに帰国。現在はトンプソン氏のみの経営だが、社名はそのままにしてあるとのことだ。
今回NSXチームの総指揮もつとめたトンプソン氏は、非常に温厚な紳士といった感があるが、その経歴には目を見張るものがる。'40年に生まれマクラーレンで8年間溶接工として働いたあと、コスワース、マーチを経て'71年TCPを設立。'76年フェラーリF-1のモノコックフレームをはじめ、マクラーレン、ロータスなど名門チームのF-1シャシーフレームを手がける。ルマンには10年前から携わり、Cカーの製作も手がけている。さらに、ラリーカー、ツーリングカーの世界でも活躍し'92年のDTMでルートビッヒのAMGやBMWを製作した。また昨年のWRCチャンピオンカー、セリカのサスペンションコンポーネンツは彼の設計によるものだ。そして、NSXの仕事に専念する現在に至る。彼はNSXがルマンにおいて最高のベースマシンとなるとみていたため、今回のチャレンジでギアボックスのテストが不十分で、結果を残せなかったことを静かに悔いていた。
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NSX Press vol.16は1995年8月発行です。
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