ルマンに挑んだNSX
して'94年型モデルを煮詰め上げ、ルマンでは非常に有効となる信頼性を武器にクラス優勝を遂げたのがチーム国光、ノバエンジニアリングによるGT2のNSXだ。もう一度、ここでそのスペックをおさらいしておこう。
'95年型で最も注目すべき点は、「GT1カー」でも採用されたエンジンのリジッド・マウント化である。その理由がドライブ・シャフトのトラブルを防ぐ点にあることは、前述のとおり。ただし、GT2カーはエンジンが横置き型となるため、独自の開発が必要になったことは言うまでもない。ギアボックスは、従来型をベースに内部のパーツを強化するとともに、シフトリンケージをそれまでのワイア式からロッド式に変更している。これはエンジンのリジッド・マウント化に伴って可能となったもの。また、エンジンがボディと強固に連結されたため、パワーユニットそのものをフレームの一部とみなすことができ、これを利用してリア・セクションの剛性アップを実現できたという。RX-306 E5と呼ばれる3000ccV6エンジンは、レスポンスの向上を狙って吸排気系が改善され、最高出力は'94年型に10PS上積みされて390PS以上となった。
ボディ関係では、ロールゲージの基本構成などは不変のまま、小変更によって剛性を改善することに主眼が置かれた。具体的には、サイドシルに、'95年に登場したエンジンタイプT用の強化型を用いたほか、室内に取り付けられたカーボン製補強材のサイズアップ、ロールゲージの追加などが挙げられる。サスペンションはほぼ'94年型のまま、エアロダイナミクスもフロントスポイラーがより滑らかな形状となった程度で、いずれも大きな変更点はない。ちなみに、昨年、ナイトセッションで使用されたボディ先端の補助灯は、今年はヘッドランプに光量を大幅にアップさせるための放電管を採用することで不要となった。
限りなくスタンダードに近い仕様が採用されたGT2のNSX。このNSXがGT2クラス優勝を果たしたことは、ベースモデルの優れた資質を示すものといって差し支えなかろう。


          

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NSX Press vol.16は1995年8月発行です。