ルマンに挑んだNSX
ディ剛性の重要性は、ロードカーでもレースカーでも変わることはない。NSXの場合、既存のアルミ・ボディをさらに強化したオープントップのタイプTが先頃デビューしており、'95年ルマン仕様もこれをベースとした。室内には、安全性と高剛性を確保する目的でカーボン製の補強部材とロールゲージが張りめぐらされたほか、低重心化のため量産車よりさらに30mm低いカーボン製フロアが新設された。
GT1規則に従って'94年型に比べてトレッドがフロントで135mm、リアで145mm拡大された4輪のサスペンションは、センター・モノコックから前後の伸びるアルミ製フレームに取り付けられる。特にリアのロア・・アームはボディと剛体結合されるエンジン・ギアボックス部に固定されているのが特徴的だ。ブレーキ・キャリパーはAP製(フロント:6ポット、リア:4ポット)。これには、ドライバーの負担を軽減する目的で、ABSが組み合わされている。
ルーフやドアを除くボディ・パネルの多くは、コンポジット材料の中でもとりわけ軽量なケブラーで作られた。グラマラスなボディを彩るのは、蛍光色の強烈な「赤」。これは2輪のロードレース世界GPを席巻するホンダ・レーサーと同じ塗色で、NRレッドと呼ばれる。その燃え立つような色合いに、ホンダの技術者たちの熱い情熱を垣間見てしまうのは、あながち筆者ばかりではあるまい。
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NSX Press vol.16は1995年8月発行です。