
一方、46番のGT1NA(自然吸気)マシンもおかしかった。予選1日目スターターモーターがトラブルを起こすものの、リカバリーして出走するが一向にタイムが上がらない。NAである点を差し引いてもである。エンジンそのものに問題なかった。原因がなかなかつかめない。と、そのうちにギアレシオがうまくマッチしていないことがわかった。その日はそれで走り切り、翌日のアタックにかけることとなった。ところがである、あろうことかギアボックスを交換したエンジンを始動させる際、ドライバーのファーブルがアクセルをあおりすぎタイミングベルトをなめてしまうという思いもかけない事態が起こったのだ。それで再び修理となり、45分遅れで出走。ギアの入りが硬い点を除けばそこそこの仕上がりとなったが、ピットインをくり返し充分なアタックが行えない上に、予選未参加の47番のドライバー、ベルトラン・ガショーとイワン・カペリを乗せて走ることとなったのだ。
不運に見舞われた46番だが、とにかくも決勝スタート前には問題なしの状態まで漕ぎつけた。「47番先行、46番じっくりと完走」ははじめから描いていた作戦である。完走できれ勝機はある。
しかし、クラッシュするというシナリオはなかった。スタートから1時間45分。ピットにやってきた46番はそのままガレージへ。ポルシェコーナーで後続車に身をゆずったことによるコースアウト、クラッシュ…このアンラッキーもファーブルだった。
46番のダメージはシャシーにまでおよんでいた。普通ならリタイア。しかしNSX陣営はあきらめなかった。シャシーリペアはTCPのおハコでもある。さっそく修復作業にかかる。叩きに叩き、ピット裏で溶接作業まで施し約9時間半。午前3時に再び46番を走らせたのだ。岡田だ「よし」と喝を入れ雨のコースに走り出していった。それから10時間、ゴール前3時間まで46番は走り続けた。しかし作業をくり返したギアボックスがやはり耐えきれず、再びストップ。最後の数ラップだけでも走るためにギアボックスの修復にかかる。この時点で46番はトップの70%という完走周回数を満たすことは不可能だったが、最後は執念の姿を観客にアピールすべく作業にとりかかったのだ。そして終了15分前に再度出走。歓喜の観衆の前に姿を現した。
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NSX Press vol.16は1995年8月発行です。
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