2台のNSXが戦列を離れたときのファンの落胆をつなぎ止めてくれたのが84番だった。ピットスタートの心配も安心した周回によって消えた。一時エキゾーストパイプの修理で30分近くピットインし、土屋のがんばりで17位まで上げた順位を落としてしまったが、飯田が着実な走りで徐々に挽回。続いて国光が第1回目のステアリングを握っているときだった。テルトルルージュで目前のマシンが突然スピン。ピットにも緊張が走ったがベテランは難なくクリアした。
そして夜、左側のヘッドライトを失ったNSXで、土屋は雨のルマンを力走した。 なんとGT1クラスを上回るタイムで目の前のマシンを次々の退け、ついに先行していたGT2のキャラウエイコルベットに迫ったのである。土屋はこのときのことを「雨で滑るし、クリップさえよく見えない。レース人生の中で最も怖い体験だった」と回想している。
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