GT2の頂へ。

フィニッシュ直後、表彰台に向かった3人のドライバーを見送ったホンダのピットは、観客の乱入を防ぐためにシャッターを閉め、ビールを掛け合っていた。結果の残せなかったGT1のメカニックも監督のホンダのサポート陣もGT2の栄光を称え、吠えた。
あちこちで握手が交わされる。声を上げて泣くTCPのメカニックの肩をホンダのプロジェクトリーダー橋本がぽんと叩いた。とにかくNSXとして一つ結果を残せたじゃないかと心の中の声が聞こえてくる。確かにそうだ。出走した48台中20台完走。半分以上が脱落していった。重量不足で失格となり涙をのんだチームもある。無念のスピン、予期せぬトラブルで次々と戦列を離れたすべてのマシンに携わった数百におよぶ人間が、また声援を送っていた数え切れない人々がこのルマンという一つのレースで深い溜息をついているのだ。
しかしNSXファンは素晴らしい感動のフィナーレを迎えることができた。GT1の2台が潰いえたとはいえ、これは喜ぶ結果といえるだろう。世界のモータースポーツ史に、日本のチーム、日本人ドライバー、そして日本のGTカーが初のクラス優勝を成し遂げたという快挙がNSXによって刻まれたからだ。同時に、猛威を振るったマクラーレンに乗り、日本人ドライバーとしてはじめたの総合優勝を成し遂げた関谷組も素晴らしい。同じ日本人として拍手を贈りたい。
スタートの時、84番のGT2NSXがピットスタートとなったときはあわやと思った。これまで大きなトラブルはなかったとはいえ、忘れた頃に…と、不運が突然襲いかかってきても不思議ではない。
とくに今年のNSX、ホンダのピットにはそうした空気が漂っていた。
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NSX Press vol.16は1995年8月発行です。