情熱を持ち続けることは、夢を実現へと誘うパワーを発揮する。
十代の頃、様々な国内アマチュアレースを経験し、20年を経た今、再び走ることの楽しさに呼び覚まされた川越賢二氏は、東京都在住のオーナー。走行会の面白さにのめり込み、'93年、マカオGPのサポートレースである、マンダリーナダック・スーパーカーレースに挑戦、そして二度目の'94年、何と三位への入賞を果たした。クラブマンレース的な趣を持つこのレースで走りたいという、かねてから抱いていた願望は、1台のNSXとの出会いによって実現化された。
一昨年、VTRでNSX-Rの走りを見た瞬間に川越氏は、「これこそ自分の夢を実現してくれる唯一の車だ」と思った。納車と同時に、マカオに挑戦するため準備を開始。以後、国内のサンデーレース経験を重ね、'93年11月、ついにマカオへ。結果は11位で完走。その後、翌'94年に入るとすぐに再チャレンジへ向けて本格的に準備を始めた。「ホンダが鈴鹿サーキットで開催している『オーナーズ・ミーティング』や、『ドライビング・アカデミー』で、プロドライバーから、速くかつ安全に走るためのノウハウを教えられました。そして経験を重ねるうちに、冷静に自分のドライビングを分析することができるようになったのです。また、そうした集まりを通じて技術者のNSX-Rに対するこだわりと自信を知り、できるだけオリジナルに近い状態のまま走ろう、という思いが起きたのです」。
この1年間に学んだ多くのことは自分の体にしみ込んでいる、という自信を持って予選に臨んだ川越氏は、タイム・アタックで予選6位を獲得する。
11月20日、本戦。スタートからリスボア・コーナーまでが勝負。「今年は絶対に引かないぞ」、との固い決意でスタートにつく。午前9時20分、マンダリーナダック・スーパーカーレース、10ラップのバトルが始まった。今回、フェラーリF355の初登場が大きな話題を呼び注目を集めていた。しかし、レース序盤から川越氏のNSX-Rとポルシェとの間で繰り広げられた激しい競り合いは、観客席を大いに沸き立たせた。結果、3位でチェッカー。入賞した川越氏は観客に囲まれ、祝福を受けた。生中継された現地のテレビ画面にも頻繁に姿を現し、NSX-Rと川越氏の活躍はアジアの人々に熱烈な印象を残した。 「NSX-Rは、ホンダの開発技術者ばかりでなく、一人のオーナーにも25年の時の流れを越えて夢を与えてくれたことを深く感謝しています」と川越氏は語った。
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