それは、次代への進化
専用のツイントレッドタイヤ誕生

フロント:215/45ZR16リア:245/40ZR17
フロント:215/45ZR16リア:245/40ZR17

このタイヤは、ブリヂストンとホンダにおける高性能タイヤの共同開発のひとつの形として生まれた。高性能と快適性を融合させるというベーシックコンセプトの進化に取り組むNSX開発陣が、雨の多い日本でより安心感の高いスポーツカードライビングの実現を求め、ブリヂストンは市場においてユーザーが高い関心を示すウェット性能の大幅進化を模索していた。開発目的の一致をみたのだ。
長い研究期間を経て、いよいよ試作タイヤがNSX開発陣に持ち込まれた。ユニークな外観は、見るからにウェット性能に優れているようである。ツイントレッドというコンセプトも新しい。しかし、はじめてこのタイヤを目にした開発スタッフは、ウェットは凄いだろうがドライの性能が出るかと少々不安を抱いたという。
が、予想以上にドライの運動性能は高かった。市街地の速度レベルではさほど問題はない。ただ、ハイスピードドライビングにおける剛性感は改善の余地があった。そこで、例によって過酷な道、ドイツのニュルブルクリンクでのドライ走行テストが開始された。
ニュルの容赦ない路面環境がツイントレッドに厳しい要求をつきつけた。しかし、開発陣の凄まじいまでの集中力と、万全の準備態勢により課題は次々とクリアされ、標準装着されるオリジナルの40/45タイヤと遜色のない、ほぼ同等のドライ運動性能を確保するに至った。
このように強靭な運動性能が得られたのは、トレッド面の凸凹を、トレッドゴムを盛り上げるだけの構成としていないためだろう。
左右それぞれのトレッドに沿うように、ベルト、キャップ&レイヤーが内部の骨格として存在している。内部構造から設計を変更し、ツイントレッド形状専用のベルト構造をなしているのがこのタイヤの設計面の特徴である。
こうした特徴的なベルト形状で剛性を確保するのも困難だが、製造する技術開発も多くの困難をのり越えなければならなかったという。その詳細は、当然ながら明かされていない。
雨が降れば、いかなるクルマでもドライビングに対する不安感が高まる。元F-1ドライバーのアラン・プロストが雨が苦手だったのは有名だが、彼に限らず、雨は誰にとってもドライビングに不安感をもたらす存在である。
その不安を軽減し、ウェット時の信頼性を高めるツイントレッドタイヤ。スポーツカーのオーナーにとって歓迎すべき進化といえよう。



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NSX Press vol.15は1995年3月発行です。