それは、次代への進化
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おそらくほとんどが若者だと思うけど、タイヤは太い方が何もかもいいと信じている人が多いように感じる。タイヤは望むべき運動性能が得られるなら、むしろ細いほうがいいんです。太ければ重くなり、路面抵抗が増えてパワーをロスするし、何よりもウェットが弱くなりますから。

僕は機会があるたびに、ドライビングとはタイヤと対話することだと話していますが、もし、しっかりと対話ができていればミスマッチのタイヤを履くことはないはず。必要以上に太いタイヤをつけていることは、ドライビングの方はまだまだと主張しているようなもの。ただ、正しいタイヤをつけていても、雨は不測の事態を引き起こすことがあるから十分注意しなければならない。そんなことを考えていたから、今回のツイントレッドの誕生は喜ぶべき進化だと思いました。
このタイヤは、細いトレッドのタイヤが2本並んで接地するようなもので、細いタイヤのウェットに強いメリットをうまく引き出すタイヤだと考えてもらえばいい。ウェットかいいから、トレッドのグルーブを少なくしてスリックに近づけているため、ドライ性能も十分確保できています。
ドライの運動性能を高めるためにニュルブルクリンクで開発が行われたとき、走り込みに参加しました。はじめ、サスがボトミングするぐらいのニュルの激しいコーナーで、強い荷重がかかったときの縦バネ剛性に若干の弱さを感じました。しかし2回目に乗ったときは、それも問題なく仕上がっていて、後は細かなチェックをするだけでスムーズに開発は進んだようです。
ただ、ご存じの通りベルト形状から設計を変えている本格的なつくりなので、剛性を高めるためのチューニングもそうですが、試作タイヤをつくれるようになるまでの技術蓄積は相当大変だったと聞きます。仕上がるまでに、相当な苦労を開発スタッフは乗り越えたんだと思います。
きちんと比較してませんが、タイムでいうと、標準タイヤに比べてニュルで5秒ぐらいの違い。筑波に換算するとたぶん0.5秒ぐらいの差になるでしょう。ほぼ9割近いドライ性能をもっていることになりますね。もう、完全にハイパフォーマンス領域のタイヤです。
だから、タイムアップを狙うのではなく、コントロールを楽しむぐらいのスポーツドライビングなら、難なくこなすパフォーマンスをもっているといえます。
コンパウンドは変えてませんから、うっすら濡れている路面ではほぼ同じで、水があるほど格段のウェット性能を発揮します。NSXで雨の高速をよく走るオーナーにとっては、非常に高い安心感を得られるタイヤに仕上がったと思います。



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NSX Press vol.15は1995年3月発行です。