LSD−リミテッド・スリップ・デフは、現在においても様々な機構の開発やセッティングの妙が競われる技術分野である。
NSXは、あらかじめ皿バネによって多板クラッチに圧力をかけるプリロード型を採用している。これは、直進性に優れている上、通常のコーナーでは適切に両輪を差動させるために過剰なアンダーステアを生じないという、きわめて快適な特性を持つ。今回、5速マニュアル車のために新開発されたトルクリアクティブ・プリロード型LSDは、プリロード型の快適な性能を保ちながら、いざハードなコーナリングに挑もうとした場合に優れた性能を発揮するものである。
その新機構は、プラネタリーギアをヘリカルギアにすることで空転する駆動輪のトルクによって反力を生み、その力で差動を制限する多板クラッチを強く押しつけ、もう一方の駆動輪へと適切にトルクを配分するというものだ。
その結果、スポーツ走行時のタイトコーナリングなどにおいて、立ち上がりの加速性と操作性が大幅に向上する。
オーナーが、この新LSDの性能を試したいのなら、鈴鹿サーキットでのオーナーズ・ミーティングに参加されるといい。テクニカルな南コースやジムカーナレッスンなどで、コーナリングワークが確実に向上することを確かめられるだろう。

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