Fマチックは、一見してわかるようにスポーツATである。近年、様々なスポーツカーが積極的に取り組んでいる技術ファクターだ。しかし、NSXのそれは、知るほどにきわめて独自の世界を築き上げていることに気づかされる。
その独自性とは、やはりコンセプトだ。Fマチックは、通常のATのイージードライブとマニュアルモードによる極めてスポーティなシフトフィールの両立にある。つまりDレンジではこれまで通りのATの顔をしている。しかし、それをひとたび3/Mレンジにセレクトレバーを叩き込むと、ロックアップ領域を拡げ、シフトのタイムラグを縮めてレブリミットまで吹き上げる痛快なマニュアルモードが顔を出すのである。
スポーツATでありながら、結局レブリミットまで回せない歯痒さや、イージードライブ性をスポイルすることは、高性能と快適性の融合を求めるNSXでは考えられないことなのだ。
そのFマチックの操作は、ステアリングコラムにあるシフトスイッチで行う。ここにも、当然ながらNSX独自のこだわりが生きている。それは、シフトチェンジ時もステアリングワークに集中できること。これはいうまでもなくドライビングにとってプラスの要素となる。Fマチックというネーミングは、近年のF-1のように手元でシフトチェンジできることから、フォーミュラ・マチックとした開発呼称に由来している。ただ、F-1のようにステアリング上のボタン操作としなかったのは、ロードゴーイングカーの場合、1回転以上ステアリングを回すことがあるため、操作の混乱を避けてのことである。
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