そうしてずば抜けたパフォーマンスを獲得したベースパッケージを、世界一過酷といわれるニュルブルクリンクで鍛え上げ、強靭かつナチュラルなコーナリング特性を実現。さらにその上に快適な視界と絶妙なウエイトバランスを提供するフォワードキャノピー、ロードコンディションへの対応を助けるABS、TCSなどの先進制御機構を搭載した。それがNSXなのだ。
そして誕生後は、'92年に走りを際だたせたタイプRを追加してバリエーションを拡げるとともに、'93年には助手席エアバッグを設定し、'94年にはインチアップホイール&タイヤ、強化ブレーキなどを開発。また、それらとあわせ、軽量化やサスペンションチューニングなどが常に施されてきた。進化は、不断に行われてきたといえる。
そして今年、5年目の進化を迎えた。1995年のめざすところは、NSXの水準を次代のものとする大きな進化である。そのために、ボディ剛性が高められた。これは、本年バリエーションに加えられたオープントップモデルのタイプTのために強化された部材を使用したもので、NSXのベーシックなパフォーマンスを高めることに大きく貢献している。そして、これからご紹介するように、DBW、Fマチックといった進化技術、ATの新たなギアレシオ、マニュアルカーのLSD新機構、新TCSなどの数多くの仕様変更が加えられた。妥協を排すという思想が強く感じられるのは、こうした様々な変更を行いながらも、重量を決して増やさないことだろう。スペックでは語られない、微に入り細にわたる軽量化が舞台裏で行われていたのである。
次代への進化をめざして登場した今年のNSX。もちろん、進化は今後も果てしなく続けられるが、1995年はその大きな節目としてNSXの歴史に刻まれることだろう。
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