2008年7月発表 2016年3月終了モデル
この情報は2016年3月現在のものです。
広告紹介雑誌広告1 2003年12月掲載
2003年10月、Hondaは氷点下20℃での始動が可能な次世代燃料電池スタック「Honda FC STACK」を新開発した。このスタック(発電機)を搭載した「FCX」は9月24日に国土交通大臣認定を取得し公道走行テストを開始、本格的実用化に向けて動き始めた。2004年1月、第80回東京箱根間往復大学駅伝競走で大会本部車をつとめるHonda FCX開発者に聞いた。
燃料電池と聞いても「携帯の新しい電池なの?」という認識が、あながち間違っていない範囲に燃料電池は来ているようだ。近未来は燃料電池車の時代が来るのかもしれない。人間が緑の地球で生きていくための選択でもある。動力を生む電気を、水素と酸素の結合で作り出す燃料電池の技術を車に積み込んでしまったのが燃料電池車「FCX」。「エネルギーの循環型社会を目指すと、その全てが解決できるのが燃料電池の技術なんです」ところが自動車搭載に適した燃料電池システムは、低温での発電が苦手という欠点を持っていた。「水素イオンが通過するイオン交換膜は、0度ぐらいからイオンが通りづらくなって、発電が出来なくなってしまいます。今回ホンダが開発したイオン交換膜はマイナス20度でも、今までの倍以上の水素イオンを通すことができます」なにやら専門的になってきたが、ようは弱点を克服し、より多くの地域の人が使えるクルマを開発したということなのだ。
また、自動車である限り走行性能という側面も大切だ。「あまりに遅い」とか「長距離は走れない」では困るのだ。従来のガソリンエンジンだと燃料の持つエネルギーの20%くらいしか動力として取り出せていないそうだが、水素から電気をつくると効率は大幅に向上できるそうだ。「燃料電池出力の向上、モーター出力の向上もあります、でも燃料電池効率を50%に持って来れたので、航続距離を延ばすことができました」このホンダFCXは航続距離が395km(LA4モード)もある。さらにホンダはウルトラキャパシタという独自の補助電源システムを開発。この装置のおかげで加速時の瞬発力がターボのように得られ、ガソリンエンジン車並みの加速も可能にしている。
「戦前はクルマのサイズの半分くらいがエンジンで占められていました。コンパクト化、軽量化の技術がクルマの歴史。FCスタックも、どれだけ小さなクルマに積んでいるかで技術の進み具合がわかるんです」ホンダがコンパクトカーサイズでFCスタックを開発している訳がここにある。「低温での発電も、マイナス20度まで来たということです。世界を考えるとマイナス30度とかマイナス35度を実現しなければいけない。技術的にはまだ通過点です」ホンダの燃料電池車FCXは、もう6代目になるそうだ。安全性能でも高圧水素タンクを含め全方位衝突安全性能を確保している。
2004年1月の第80回箱根駅伝の大会本部車を担当するのも、ランナーを排出ガスゼロで守るFCXならではの役割。「FCXは今までのクルマの用途を、がらっと変える可能性がある。環境だけでなく、クルマの世界が広がっていく可能性を秘めた技術だと。そのあたりが燃料電池の面白いところなんです」と、たんたんと語る加美主席研究員の眼には未来のホンダが見えているようだ。「まだまだ壁はあります。箱根駅伝では往路で5区間ありますが、我々はそれを4区間と考えています。第2区間が低温起動、第3区間がインフラ、つまりどうやって水素を手に入れるか。第4区間がコストです。今の1/10くらいにしないと。復路はまだ分かりませんが、でもまだ往路の第2区間を走っている所です」 とはいえ先は見えたようだ。「ホンダって面白い会社です。競争になると負けん気が力になる。子供っぽいところもあります。技術者としては働きやすい会社です」 なにやら故本田宗一郎氏の笑顔がまぶたに浮かんだ。