Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

MotoGP ジャック・ミラー Estrella Galicia 0,0 Marc VDS

MotoGP ジャック・ミラー Estrella Galicia 0,0 Marc VDS
Profile
生年月日
1995/01/18
出身地
オーストラリア
身長・体重
175cm・70kg
チーム(マシン)
Estrella Galicia 0,0 Marc VDS(RC213V)
2015年の成績
MotoGP 総合19位
Vol.2

最高峰クラス2年目を迎える21歳のジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)選手は、年間ランキング13位で2016年シーズンの前半を折り返しました。開幕前にはトレーニング中に右脚を骨折し、開幕後も第3戦アメリカズGPのフリー走行で転倒した際に右足の第五中足骨を負傷し、足首も打撲。体調が万全ではない中、ヨーロッパラウンドの序盤でも苦しい戦いを強いられました。しかし、第7戦カタルニアGPではMotoGPクラス自己ベストとなる10位フィニッシュを果たして、6ポイントを獲得。そして、続くオランダGPは激しい降雨で中断する難しいコンディションになりましたが、そんな中でも見事にレースをコントロールし、初優勝を挙げました。

 

「今の気持ちはとても言葉で表現できません」

 

レース直後にそう述べるミラー選手の表情には、言葉にならない思いを埋めてあまりある喜びがはっきりと表れていました。

 

「最後の3周は鳥肌が立ちそうで、とにかく1分50秒台をキープしてゴールすることだけを考えていました。その結果は、ご覧のとおりですよ」

 

ミラー選手は、Moto3時代に高い資質を評価され、2015年にMotoGPクラスへジャンプアップしました。初年度は最高峰クラスへの順応に時間を費やしましたが、この優勝により、自分たちの選択が間違いではなかったことをはっきりと証明したのです。

 

「今後のレースですべてがうまくいくかどうかはともかく、このレースウイークはうまく噛み合ったと思います。優勝できたことはとてもうれしく思いますが、実際のところ、僕はまだ学習段階の途上だという現実もしっかり認識しています。Moto3からMotoGPへジャンプアップするのは、かなり大きなステップですからね。でも、今回の結果で、僕はちゃんと頭を使ってバイクに乗れるんだということも証明できたと思います」

 

Moto3からMotoGPにジャンプアップさせるのは大きな冒険だったと思いますが、僕の能力を見込んでくれたHondaに、これでようやく少しはお返しをすることができました。また、6年前に僕をオーストラリアからヨーロッパに連れてきてくれた家族にも、感謝しています。やっとみんなに報いることができて、今は本当に感無量のひとことに尽きます」

続く第9戦ドイツGPは、レインコンディションからスタートして今季初のフラッグ・トゥ・フラッグとなる、難しいレースでした。ミラー選手は一時トップを走行しましたが、最後は7位でフィニッシュ。これにより、3戦連続のトップ10フィニッシュを達成しました。

 

「いいレースでした。リザルトにも満足しています。でも、正直なことをいえばチームを信じて、もう少し早くピットに戻ってバイクを交換するべきだったのかもしれません。今回も表彰台を獲得できるかもしれないと思うあまり、ウエットタイヤのマシンで少し長く引っ張りすぎてしまいました」

 

しかし、その失敗は今後に向けて大いに勉強になった、とミラー選手は考えています。

 

「スリックタイヤのバイクに交換してすぐに、『どうしてもっと早く換えておかなかったのだろう』と思いました。今回は自分にとってフラッグ・トゥ・フラッグ初体験だったので、とても勉強になったし、この経験は今後に活きてくると思います。ロッシたちと一緒にトップグループを走行していたときは楽しかったし、最終ラップにはペドロサを抜いてトップ6に入れそうなところまで迫っていました。スリックタイヤのマシンに交換したあとのペースはとても快調で、今後のレースに向けて大きな自信になりました」

 

レースのたびに多くのことを吸収していくミラー選手は、今後もますますその能力を大きく開花させるに違いありません。

 

後半戦のスタートとなったシーズン第10戦のオーストリアGPでは、初日に総合14番手と上々の滑り出しをみせます。しかし、翌日に行われた予選の開始直後に転倒を喫し、スペアマシンでのアタックを強いられた結果20番グリッドと悔しい結果に。さらに、決勝日午前のウォームアップ走行で再び転倒し、右手首と第6胸椎を負傷してレースを欠場。さらに、連戦となった第11戦チェコGPも回復が十分でないとして欠場となりました。

 

大きな期待を胸に臨んだ後半戦で、まさかのアクシデントを喫することとなったミラー選手。今は、9月4日に決勝が行われるイギリスGPからの復帰を目指し、回復に集中しています。