Estrella Galicia 0,0 Marc VDSのジャック・ミラーは、第8戦オランダGPで劇的な優勝を遂げ、続く第9戦ドイツGPも7位で終えましたが、サマーブレイク後の後半戦は苦しいレースが続きました。
第10戦オーストリアGPの決勝日午前のウォームアップ走行で転倒し、右手を負傷したことが、その後のレースに大きく響いてしまったのです。当初はとう骨(前腕の骨)のき裂骨折という診断で、チェコGPを欠場してサンマリノGPには鎮痛剤を使用して参戦しましたが、中手骨(掌の骨)にも骨折があると判明。土曜日の予選まではがんばって走ったものの、決勝レースは欠場することになりました。
「ミサノ(サンマリノ)はシルバーストーン(イギリス)よりも肉体的に厳しいコースで、右手の状態は日々悪化していきました。マシンから降りるたびに、腫れはひどくなっていました。痛みは大丈夫なのですが、ハードブレーキングで十分に力を入れることができません。昨夜、一晩じっくり考えて、この状態で28周のレースを走るのは安全ではない、という結論に至りました。今は回復に専念し、一刻も早く完ぺきな状態で復帰したいと思います」
次のアラゴンGPも欠場したミラーは、終盤戦の第15戦日本GPで復帰を果たしました。
復帰後初走行のFP1では16番手。土曜日の予選では14番手につけ、日曜日の決勝は5列目からスタートすることになりました。レースでは、トップ10圏内を目指して激しいバトルを続けていましたが、残念ながら7周目の1コーナーでフロントを切れ込ませ、転倒リタイアとなってしまいました。
「些細なミスで1コーナーのブレーキが少し遅れ、フロントから転倒してしまいました。レーシングラインを維持するつもりだったのですが、進入速度が速すぎてフロントが切れ込んでしまいました。(スコット)レディング選手(ドゥカティ)や(ダニロ)ペトルッチ選手(ドゥカティ)、(アルバロ)バウティスタ選手(アプリリア)、(ステファン)ブラドル選手(アプリリア)たちのグループでいいバトルをしていた最中に転んでしまい、そこですべてが終わってしまいました」
翌週のレースはオーストラリアGP。ミラーにとってホームグランプリです。フィリップアイランド・サーキットは、例年通りの荒れた天候になりましたが、、その中で初日は総合3番手につけました。
「今日のコンディションは最悪でした。こんな中でもサーキットに来て僕を応援してくださるファンの皆さんに、まずはお礼を言いたいと思います。朝の走行では、レイン用のセットアップを探るという意味で、悪くないセッションでした。しかし、午後はあまりにも水量が多く、危険な状態でした。午後に皆さんの前で走りを披露できなかったのは残念ですが、セッションがキャンセルになったのは安全上妥当な判断だったと思います。皆のためにも、明日は天気がよくなってほしいですね。今朝のウエットでは速さを発揮できていたので、明日のプラクティスと予選がウエットなら、いい走りをする自信があります。例え明日がドライでも、全然大丈夫ですよ」
その言葉通り、土曜日の予選では5番手タイム。ミラーにとって、MotoGPのベストグリッドになりました。
「いいスタートポジションになりましたが、最終コーナーの立ち上がりでゼブラに乗り上げていなければもっといいタイムを出せていたと思うので、100パーセント満足しているわけではありません。水がまだ残っていてスピンしてしまい、だいぶタイムをロスしました。それでも、ホームレースで、いつもよりずっといい位置であるフロントローの直後からスタートを迎えられるのは気分がいいです。ここは天気が予測不可能なので、ドライのレースになるかどうかはなんとも言えませんが、僕はどちらでも準備OKです」
日曜日の決勝レースは、路面温度も33℃と少し改善し、ドライコンディションのレースになりました。ミラーは、最後まで激しいバトルを繰り広げ、10位でチェッカーフラッグを受けました。
「本当に激しいレースでした。緊密なレースでとても楽しめました。だれがイン側にねじ込んでくるか分からないので、ヒヤヒヤするときもありましたよ」
レースを終えたミラーは、充実した内容の27周の戦いをそのように振り返りました。




「なにより、いい順位で終えてポイントを獲得できたということが意義深いですね。地元のファンの方々は僕が懸命に走った姿を見てくださったと思うので、入場料の値打ちは十分にあったんじゃないでしょうか」
この勢いで臨んだ翌週のマレーシアGPでは、さらに上位の8位でフィニッシュ。Honda勢最上位のリザルトでした。
「いつもさらに上を目指して走っているのですが、マシンの上に座り続けることすら難しい今日のトリッキーなコンディションを考えると、このリザルトは上出来だと思います。今回のレースウイークは、ウエットのセットアップが今一つだったので、トップ10圏内のHonda最上位で終えられてハッピーです。最終戦のバレンシアまで少し休めるので、シーズンをいいかたちで終えたいと思います」
その最終戦バレンシアGPは15位でフィニッシュ。
「望んでいた結果ではありません。スタート直後から序盤はフルタンク状態で苦戦し、思ったように攻めることができませんでした。これで前との差が開いてしまい、中盤にペースをつかんだころにはもう離れていました」
フライアウェイの3連戦を上り調子で締めくくっていただけに、このリザルトにはやや不満げな様子でした。
「それでもポイントを獲得できたのはよかったし、火曜日から始まるテストでは来年に向けたニューパーツをテストするつもりです」
最終戦後の火曜日と水曜日は、定例の事後テストを実施。2日間で121周を走り込みました。大半の選手はこのテストを終えて冬休みに入りましたが、ミラーは、さらに次のテストを行うべく、スペイン南部のヘレスサーキットへ向かいました。ここでさらに23日と24日の2日間、テストを実施しました。来季に向けて準備を万全にしたミラーは、さらにたくましさを増して頂点を目指し、2017年シーズンに臨みます。


