モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > MotoGPで戦う日本人ライダー > 尾野弘樹
Moto3クラスに参戦する尾野弘樹選手は、2011年にMotoGPの125ccクラスにフル参戦を開始しました。しかし、チーム事情により第5戦カタルーニャGPの直前にシートを喪失し、参戦断念を余儀なくされた悔しい過去があります。
グランプリへの復帰を胸に誓い、挑戦を再開した尾野選手は2012年から戦いの場をHondaのCBR250Rで争うアジアドリームカップに移しました。2012シーズンは序盤に大きな怪我を負いながらも優勝争いに加わり、シーズン5勝を挙げてランキング2位を獲得。翌2013年は10戦中7勝を達成して見事にチャンピオンを獲得しました。2014年はCEVレプソル選手権(旧スペイン選手権)に参戦。ここでも尾野選手は連続表彰台を獲得し、めざましい活躍を披露しますが、シーズン終盤に左手舟状骨を骨折してしまいました。2レースが行われる最終戦バレンシアは文字どおり手負いの状態で臨み、予選まではなんとか走行したものの、決勝レースを走れる状態ではありませんでした。やむなく欠場を決断して年間ランキング総合3位でシーズンを締めくくりました。平素の尾野選手は会話の受け答えも穏やかで、いつも微笑を絶やさない好青年です。しかし、上記の戦歴を見ればわかるとおり、厳しい状況に追い込まれても決して諦めずに最後まで戦い抜く、強靱な闘志の持ち主です。持ち前の明るさと芯の強い意志を武器に、2015年シーズンの尾野選手は再びMotoGPに挑戦を開始し、Moto3クラスを戦うことになりました。所属チームはレオパード・レーシング、マシンは昨年のチャンピオンマシン、Honda NSF250RWです。
2013年
2014年
2015年
開幕戦カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット) - 予選:15番手 決勝:リタイア
開幕戦のカタールGPで、尾野選手はポテンシャルの高さを発揮し、フリープラクティスでは総合2番手タイムを記録したのです。尾野選手は「ステップ位置を少し高くしたことで自分の重心位置が変わり、それがかなり効果的でした。明日もこの調子を保ちながら、さらに上げていきたいですね」と、少し照れたような笑みを見せながら、翌日以降のセッションに向けた強い意気込みを語りました。決勝レースは15番グリッドからスタートし、少しずつ順位を上げながら前の集団を追いかけて周回を重ねました。が、自己ベストタイムを更新した次の8周目に転倒を喫してしまい、せっかくの好走を結果に残すことはできませんでした。
第2戦アメリカズGP(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ) - 予選:17番手 決勝:リタイア
第3戦アルゼンチンGP(アウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンド) - 予選:9番手 決勝:13位
第2戦のアメリカズGPと第3戦アルゼンチンGPは、尾野選手にとって初体験のコース。今シーズン初のウェットセッションも経験しながら少しずつ順応を重ねてゆきました。決勝レースは転倒リタイアとなってしまいましたが、次のアルゼンチンでは3列目からスタートし、激しい大集団バトルの中で13位フィニッシュ。3ポイントを獲得しました。
Moto3クラスのマシンHondaNSF250RWは、チームや選手による仕様差がほとんどありません。上位選手たちの実力差も接近しているために、どのレースでも十数台が入り乱れる激戦になることが多く、その手に汗握る展開は多くのレースファンたちをうならせています。しかし、選手にとっては僅かなミスで大きく順位が入れ替わるため、一瞬の隙も許されない状況です。しかし、そんな中でも尾野選手はクリーンなライディングで、正々堂々とした清々しいバトルを続けています。
第5戦フランスGP(ル・マン・サーキット) - 予選:32番手 決勝:11位
第5戦のフランスGPの開催されたルマンはCEVレプソル選手権時代にも表彰台を獲得している相性の良いサーキットです。予選では32番手と大きく沈んでしまいましたが、日曜の決勝レースでは後方から着実に追い上げる展開となり、21台を抜き去って最後は11位でゴールしました。レース後「ここ数戦は転倒が続いていましたが、今季ベストリザルトでフィニッシュしたことで今後の課題も見えてきました。次のイタリアGPはシングルフィニッシュを目指したいと思います」と語りました。
第5戦イタリアGP(ムジェロ・サーキット) - 予選:2番手 決勝:11位
その第6戦イタリアGPでは、走行初日のフリープラクティス1回目で10番手、午後のフリープラクティス2回目で6番手とまずまずの走り出しで、土曜午後の予選では総合2番手タイム。惜しくもポールポジションを逃してしまいましたが、トップタイムを記録したチームメイトのダニー・ケント選手から0.289秒の僅差という好内容でした。この結果に尾野選手は「初日からフィーリングよく走れて、予選でもうまくまとめることができました。決勝は混戦になると思うので、落ち着いて表彰台を目指したいと思います」と語りました。
決勝レースは予想通りの大激戦になりました。尾野は集団の中でバトルを続けていましたが、レースに中にハンドルバーが緩みはじめ、その状況に対処しながらライバルたちとも戦わなければならない状態でした。結果は11位。予選までの走りのレベルから考えると、このハンドルバーの問題がなければもっと高い順位で終われていたと思われるだけに、やや残念なリザルトであった感は否めません。
第7戦カタルニアGP(バルセロナ・カタルニア・サーキット) - 予選:10番手 決勝:リタイア
第8戦オランダGP(TTサーキット・アッセン) - 予選:22番手 決勝:14位
第7戦カタルーニャGPも予選ではまずまずの10番グリッドを獲得し、決勝ではトップグループにつけて果敢に攻めているさなかに転倒リタイアを喫してしまいました。第8戦のオランダGPは初体験のサーキットですが、セッションごとに少しずつコース攻略を果たし、決勝レースはポイント圏内の14位でフィニッシュしました。
第9戦ドイツGP(ザクセンリンク) - 予選:23番手 決勝:リタイア
前半戦の締めくくりとなる第9戦ドイツGPは、追い上げを狙った決勝レースで序盤に転倒を喫しました。いったんピットに戻ってマシンの修復を図りましたが、リアブレーキの損傷が大きかったたために、やむなくリタイアを決断することになりました。
このように、2015年シーズン前半戦の尾野選手は、プラクティスや予選で高いポテンシャルを発揮しながらも、決勝レースではその高い水準をまだ存分に発揮しきれない結果に終わることが多かったのです。Moto3は、MotoGP全3クラスのなかでも毎戦最も激しいバトルが繰り広げられるカテゴリーです。マシン差もないため、バトルでライバルに譲らない強い意志が勝負の分かれ目になることが多く、わずかな一瞬のミスでも順位は大きく下がってしまいます。どんなに激しい接近戦の中にあっても、尾野弘樹選手はライバル選手たちに対していつもクリーンな戦い方で真っ正面から勝負を挑み続けています。
前半9戦を終えてMoto3のランキング首位は、チームメイトのダニー・ケント選手。彼はシーズン序盤からうまく走れたことが自信になり、それが好リザルトを生む良い連鎖につながっていると語っています。彼と同じ環境で戦う尾野選手も、シーズン後半はさらに経験を重ねることで、予選までに発揮している速さを必ずやレースに結実させてゆくことでしょう。
MotoGPは3週間の夏季休暇を経て、8月7日からシーズン後半戦がスタートします。Moto2クラスとMoto3クラスに挑戦する中上選手と尾野選手という2人の日本人ライダーの報告は、第11戦チェコGP終了後に報告(予定)します。
「今シーズンの最初の目標はポイント圏内でゴールすること。次の目標はシングルフィニッシュですが、転倒などでシングルフィニッシュは達成できていません。フリープラクティスから予選まで調子良く積み上げてきても、決勝ではうまく噛み合わなかったり、セッティングの限界を超えたペースで走って転倒してしまったりと、まだ結果を残せていません。レースウィークを通してすべてがうまく運んだレースは、今年はまだないですね……。でも、セットアップが合わないレースでも、自分の引き出しは着実に増やせていると思います」
尾野選手は、2013年にアジアドリームカップで年間総合優勝を達成し、2014年はCEVレプソル国際選手権(旧スペイン選手権)でランキング3位を獲得しました。しかし、これらのレースでは決して恵まれた環境で勝利を重ねてきたわけではなく、厳しい戦いのなかで表彰台を勝ち取ってきたのです。過去2年と今年は、何が異なっているのでしょうか。
「今までは良いモノが手に入らない状況で戦っていたのですが、今年に関しては、マシンは勝てる状態です。そういう意味では、ハード面はこれまでにない部分をちゃんと手に入れることができています。その反面、チームと充分にセットアップを積み上げきれていないのが、今年の現状です。セットアップが進歩しているフィーリングを感じられず、毎戦違うバイクになってしまっている。それが、今までと比べて厳しい環境になっている要因のひとつですね。去年までは、セッティングを変えなくても自分のライディングでどんどん良くしていくことができました。それこそアジアドリームカップは、ほとんどバイクの変更をできないレースだったので、そこがここ数年と今年の大きく違うところですね。でも、自分の対応の仕方やセットアップに頼らないという意味では、今年は去年よりも色々な走り方をできるようになっていると思います」
開幕前にはこれほど苦労するとは正直なところ思っていなかった、とも尾野選手は話します。「良いバイクで走れることがわかっていたので、もう少し良いポジションというか、表彰台も狙えるだろうなと考えていました」。しかし、期待どおりの結果を得られていないことに焦りを感じているわけではない、とも話します。「毎戦そうですが、バイクがピタリと決まってこないので、常にどこかで我慢をしながら走っている状況です。だから、スッキリはしていないですね。そのスッキリしない気持ちが、自分のなかでどんどん溜まっている状況です。この我慢とモヤモヤが吹っ切れて、楽しく走ることができるようになれば、自然と結果もついてくるようになると思います。だから、順位云々ではなく、まずはバイクと一体になって楽しく走れるようになること。それができれば、きっとタイムも上げていけるはず。でも、現状ではまだそうじゃなくて、去年や一昨年に実感できていた『よし、行くぞ!!』という感覚よりも、今は『大丈夫かな……?』というところから入っているので、そこを改善できれば成績も良くなってゆくのかな、と思います」
第10戦インディアナポリスGP(インディアナポリス・モータースピードウェイ) - 予選:14番手 決勝:26位
夏季休暇期間が終わり、2015年シーズンの後半戦は第10戦インディアナポリスGPから再開しました。アメリカ大陸中央部のインディアナポリスモータースピードウェイは、〈ブリックヤード〉の通称でも知られる米国モータースポーツの聖地です。このサーキットは全体的にフラットで高低差がほとんどなく、MotoGPのレースではインディ500で使用されるオーバル部分も一部コース内に取り込んで左10右6の計16コーナーからなる全長約4.2kmのコースで争われます。Moto3クラスを戦う尾野弘樹選手にとって、このコースは初体験です。
レースウィーク前日の木曜にはコースの下見を行い、金曜午前のフリープラクティス1回目はコース攻略を念頭に置いて臨みました。セッティングに大きな変更を加えず、まずは自分自身のライディングで対応するべくこのセッションに取り組み、30番手のタイムで終えました。コーナー立ちあがりでのリアタイヤのグリップに課題があったため、午後のフリープラクティス2回目では2速から5速のギアレシオをロングに振りました。これでリアのグリップも改善し、ラップタイムもトップと0.981秒差の12番手までジャンプアップしました。
フリープラクティス3回目は、すでに何周も走行したユーズドタイヤを装着してレースを意識したシミュレーションを実施。フィーリングも良く、自己ベストタイムを更新するペースで走行できましたが、同時に、うまく走れない区間やコーナーも明確になりました。セッションを重ねるごとに改善ポイントがはっきりとしてくるのは、決勝に向けてうまく内容を積み上げてきている証拠といえるでしょう。午後の予選は、走行開始直後から自己ベストタイムを更新。何度かのピットインでセットアップの微調整も行いながら、タイムアタックを続けました。40分間のセッションの最後の周回でさらに自己ベストを更新し、トップから0.709秒差につけました。わずかなタイム差のなかに多くのライダーがひしめく激戦のMoto3クラスで、尾野選手は14番手となり、5列目中央の14番グリッドから日曜の決勝レースを迎えることになりました。
その決勝レースが行われた日曜日は、天候変化に翻弄される1日になりました。Moto3クラスのレースがはじまる直前に雨が降り始め、濡れた路面に対応するため、選手たちはウェット用タイヤを装着してサイティングラップを行いました。グリッド上で選手紹介が行われている時間帯に雨はあがり、路面はごくわずかずつですが乾きはじめてゆきました。レーススタート直前のウォームアップラップで数名の選手がピットへ戻り、スリックタイヤへ履き替えましたが、尾野選手を含む大半のライダーはウェット用タイヤのままで各自のグリッドへつき、レースが始まりました。空模様は微妙な状況でしたが、レースが始まっても雨は降らず、路面はどんどん乾いてゆきました。レーススタート後、数周もすると選手たちは続々とピットへ戻り、タイヤをスリックに交換。その間にも、最初からスリックタイヤを装着していた選手たちは着々と差を築いてゆきます。23周のレースを終えて、優勝者と2位の選手のタイム差は38秒。3位の選手は57秒差。4位以下は1分15秒以上という大きな開きがついていました。
タイヤ選択で明暗がくっきりと分かれてしまったこのレースについて、26位でチェッカーフラッグを受けた尾野選手は「初めて経験する状況で、周りの選手と同じようにレインタイヤを選んだのですが、それが大失敗の結果になりました」と振り返りました。「テレビで何度かこのような状況を見たことがありましたが、それを自分が経験して『今まで見てきたシチュエーションは、これなのか……』と実感しました。よりによって、このレースで経験することになるとは、とも思いました」。レース戦略の失敗を謙虚に反省しながら、第10戦の敗因を語りつつも、「でも、今回の経験は、自分の引き出しを増やすことにもなったと思います」と、尾野選手はレースから得た収穫を前向きに捉えていました。
第11戦チェコGP(オートモトドラム・ブルノ・サーキット) - 予選:18番手 決勝:リタイア
インディアナポリスから2週連続開催になった第11戦チェコGPの初日は10番手。順位はまずまずですが、トップとの差は1.061秒。「この1秒差ってところを、考えなければいけないですね」と尾野選手は走行後に話しました。
「インディアナポリスのセッティングからフロントのオフセットを若干変えて、切り返しなどが乗りやすくなりました。ただ、コーナー進入がなかなかうまくとれていないので、そこをもう少し安心して入れるようにしたいと思っています」
土曜日の予選はトップから0.978秒差。日曜の決勝レースに向けて、18番グリッドを獲得しました。「想定していたより後ろのグリッドになってしまいましたが、レース序盤のポジションアップが大事だと思うので、最初からプッシュし、攻めていきたいと思います」
日曜日の決勝は全19周で争われます。13万8752人の大観衆が見守るなか、レースは午前11時にスタート。尾野選手はオープニングラップから果敢に攻めて一気にポジションアップを狙おうとしましたが、スタート直後の3コーナーで運悪く後方から追突され転倒。このアクシデントが原因で、右足を痛めてしまいました。1コーナーでも多重クラッシュが発生しており、このためにレースは赤旗中断。あらためて12周で再開されることになりました。尾野選手はメディカルセンターに搬送され、右足第五中足骨骨折と診断を受けました。そのために、再開後のレースでグリッドにつくことなく、第11戦を終えることになってしまいました。現在は第12戦のイギリスGP参戦を目指し、負傷した足の治癒に専念しています。「約1週間のインターバルしかありませんが、最善を尽くします」
厳しい戦いが続きます。しかし、この苛酷な試練は、尾野弘樹選手をさらに逞しく強いライダーへ成長させるに違いありません。
第12戦イギリスGP(シルバーストーン・サーキット) - 予選:31番手 決勝:20位
天候の不安定さという点で、イギリスGPはオランダGPと双璧をなす、と言ってもいいでしょう。強い日が差していたかと思うと、あっという間に雲行きが怪しくなったり、汗ばむ陽気の翌日が肌寒い雨になったりすることも珍しくなく、温度条件も総じてほかのヨーロッパ各地よりも低くなることが多いようです。しかもイギリスGPの場合は、戦いの舞台であるシルバーストーン・サーキットがシーズン屈指のハイスピードコースであるという要素が、一層レースウイークの戦いを複雑にします。
前戦の第11戦チェコGP決勝ではレース開始直後に後方から接触されて転倒し、右足第五中足骨を骨折してしまいました。バルセロナで骨折部位をプレートで固定する手術を実施して臨んだ第12戦イギリスGPは、完ぺきではない体調がイギリス独特の難しいコンディションに翻ろうされ、尾野選手にとっては、さらに厳しいレースを強いられることになりました。「足は順調に回復しているので、走りに大きな影響はありません」と気丈に話すものの、コース攻略に苦しみ、金曜日の初日フリー走行は29番手。土曜日は午前のフリー走行3回目から午後の予選に向けて、さらに1秒ずつラップタイムを縮め、自身の走りは少しずつ改善していきました。しかし、予選は31番手に終わり、日曜日の決勝は11列目スタートとなりました。
金曜日と土曜日は、午前中は冬のような寒さだったものの、午後になると大気が日差しに温められて穏やかな過ごしやすい気温に。日曜にはその気象状況が一転、冷たい雨の降る一日になりました。午前中に20分間行われたウォームアップ走行は今回のレースウイークで初めてのウエットセッションになり、尾野選手は14番手とまずまずの位置につけました。雨の走行は足への負担が少なく、決勝レースもスタートから少しずつ順位を上げていきましたが、3周目の14コーナー立ち上がりでハイサイドによる転倒をしてしまいました。幸い、負傷部位をさらに痛めることもなく、再スタートを切ってレースに復帰しましたが、マシンの損傷もあり、20位でレースを終える悔しい結果になりました。レース後は「今回のレースで学んだ多くのことを、次のサンマリノGPに生かしたいと思います」と、第13戦サンマリノGPに気持ちを切り替えていました。
第13戦サンマリノGP(ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ) - 予選:10番手 決勝:16位
第13戦サンマリノGPは、今季2度目となるイタリア開催のグランプリです。このレースに先立ち、尾野選手はケガをした右足の抜糸を月曜日に行い、イタリアへと向かいました。会場のミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリは、イタリア選手権に参戦していた2010年にウエットコンディションのレースで3位表彰台を獲得した場所です。それだけに、今回のレースウイークは走り出しから調子がよく、金曜日の初日は8番手、土曜日午後の予選では総合10番手のタイムを記録しました。「ブレーキングからコーナー進入するまでの安定が、立ち上がりでの良好な加速につながり、ラップタイムの向上につながりました」と尾野選手は笑顔で話しました。抜糸をした足の様子は、前回のレースウイークよりも大幅によくなっている様子です。
「走り終わると少し痛いことを自覚しますが、走ってる最中は感じないですね。加重していくときにも痛みがなく、シルバーストーンのときよりもスムーズにマシンを操作できています」
しかしこの予選では、尾野選手がペースを落とした際に、タイムアタックをしていた選手のラインをふさいでしまったという理由でペナルティーを受け、グリッドを3つ降格となる処分を受けてしまいました。
「僕の前にも2人のライダーがいて、後ろからタイムアタックをしている選手が迫ってきたときに、彼らは右側へ避けて僕は左側に避けました。それが結果的に後ろの選手のレコードラインを塞ぐことになってしまったみたいです」
決勝レースでは予選順位よりも一列下がり、5列目13番グリッドからのスタートになりました。スタート直後は順位をキープしていましたが、周回ごとに集団のラップタイムが上がり始める一方で、尾野選手は十分なペースアップができず、少し離れた後方のグループに飲み込まれてしまいました。その集団の中ではバトルに競り勝って、最後は16位でチェッカー。ポイント圏内からは惜しくも一つだけ下の順位でフィニッシュすることになりました。
「序盤にペースを上げられなかったことと、ブレーキングで十分に勝負できなかったために、ポジションを落としてしまいました。ポイントを獲得できなかったのは残念ですが、最後に自分のいたグループではタイヤにもアドバンテージがあり、集団の前方で終わることができたのは良かったと思います」
レース翌日に実施した事後テストでは、今後に向けたセットアップの方向性でいい手応えをつかむこともできました。次の第14戦はスペイン内陸部にあるモーターランド・アラゴン。尾野選手にとっては、FIM CEVレプソルインターナショナル選手権や昨年のMotoGPへのワイルドカード参戦などで、すでに経験を重ねているサーキットです。今季ベストリザルトを目指し、レースウイーク初日から、いい走りを披露してくれることを期待しましょう。
第14戦アラゴンGP(モーターランド・アラゴン) - 予選:21番手 決勝:10位
ヨーロッパラウンドもいよいよ大詰めを迎え、第14戦アラゴンGPがスペイン内陸部のモーターランド・アラゴンで開催されました。尾野弘樹選手はFIM CEVレプソルインターナショナル選手権に参戦していた2014年に、当地のレースで3位表彰台を獲得しています。つまり、サーキットの特性に対する理解や、Moto3バイクでのコース攻略がある程度進んだ状態でレースウイークに臨めるというわけです。これは、レースに向けた好材料と言えたでしょう。
しかし、経験豊富なライバルたちはやはり強力で、金曜日から土曜日午前の計3回のフリープラクティスと、土曜日午後の予選を経て、尾野選手は7列目21番グリッドからのスタートとなりました。全20周のレースは、後方グリッドからのスタートでは厳しい戦いになることが予測されました。ただ、日曜日朝のウォームアップ走行でマシンのフロント回りに少し修正を加えたことが、ポジティブな方向に働きました。「ステアリングが軽くなって旋回しやすくなりました。コーナリングスピードをかせげるようになったことで、ライディングをどんどん合わせていけました」そう語る尾野選手は、ウォームアップを9番手タイムで終え、決勝に向けた手応えをしっかりと得ました。
午前11時にスタートした決勝レースでは、マシンのいいフィーリングを生かして、序盤から着々とポジションを上げていきました。Moto3クラスは常に大きな集団でバトルが繰り広げられます。そんな中、尾野選手はライバルたちと互角かそれ以上の走りで、毎ラップ果敢に攻め続けました。最後は10台ほどの大集団の中、ほとんどの選手を押さえきってグループの2番手でチェッカー。レース全体では9番目のゴールでした。しかし、この激しいバトルの最中にイエローフラッグに気づかず、前の選手をオーバーテイクしてしまったため、順位が1つ降格となるペナルティーを受けてしまいました。そのため、正式なリザルトは10位となり、残念ながらシングルフィニッシュとはなりませんでした。それでも尾野選手はこのレースを振り返って「黄旗無視で降格となったのは残念ですが、ここまでのレースを考えると、第14戦は今年一番と言ってもいいほどの内容になりました」と、レースの手応えを語りました。そしていよいよ次の第15戦は、ツインリンクもてぎで開催される日本GPです。
「アラゴンまではマシンの状態があまりしっくり来ていなかったのですが、第14戦アラゴンGPをベストリザルトで終えられたおかげで、もてぎへ気持ちよく入れると思います」
そして、ややいたずらっぽく笑みを浮かべ、
「僕は関西人なので、関東でのレースはホームグランプリとはいえ、ちょっとアウェイ感があるのですが」と、ジョークを交えて次戦への抱負を語りました。
「アラゴンで達成できなかったシングルフィニッシュを目標にしたいです。アラゴンの決勝レースでの手応えから考えても、いけそうな気がします。日本でのレースなので、今季ベストリザルトを目指してとにかくがんばります!」
第15戦日本GP(ツインリンクもてぎ) - 予選:12番手 決勝:リタイア
たくさんの日本のファンに見守られ、尾野弘樹選手はツインリンクもてぎの日本GPで高いポテンシャルを発揮しました。
すっきりとした秋晴れとなった金曜日のフリープラクティス1回目で、尾野選手は好調な走り出しとなり、午前のタイムは総合9番手。セッション終了直前には勢い余って軽い転倒を喫してしまったものの、総じてこのプラクティスは順調に推移しました。
マシンの修復はすぐに完了。しかし、午後のフリープラクティス2回目は走行直前にエンジンを積み替えることになり、その影響でセッション終盤まで準備が整うのを待たなければなりませんでした。ようやくピットアウトできたのはセッション終了の数分前。このプラクティスで予定していたマシンのセットアップメニューを消化することはできませんでしたが、たった3周の走行にもかかわらず、トップから0.8秒差のタイムを記録したのは、翌日以降に向けていい材料と言えました。
「午後の走行で試したかったことができなかったのは残念ですね。でも、残り時間が少ない中で、たった3周をがむしゃらに走って気持ちよかったので、その面ではよかったかなと思います」
尾野選手は土曜日午前のフリープラクティス3回目で、前日のうっぷんを晴らすような走りをみせ、セッション序盤にトップタイムをマークしていました。このセッションは7番手で終え、午後の予選は、タイムアタックの際にコース上に大勢の選手がいたためにクリアラップを取れず、12番手タイムで終えました。日曜日の決勝レースは4列目からのスタートになりました。
「前日の午後に走れなかった分も、今朝のフリープラクティスでうまく進めることができ、その流れをキープして予選に進めました。前日の遅れは取り戻せたし、アベレージタイムも安定しているので、明日は今季ベストリザルトを狙います」
尾野選手は力強い言葉でそう話し、決勝レースに向けて闘志をみなぎらせました。
決勝レースが行われた日曜日は、下り坂の気象予報であり、実際に未明から雨が降り続きました。ツインリンクもてぎ周辺は濃霧に包まれ、その影響で午前のスケジュールは順延。本来なら20分間のウォームアップ走行が10分間に、20周で予定されていた決勝レースは13周へと短縮されました。
ウエットコンディションで始まったレースにおいて、4列目12番グリッドの尾野選手はスタートをうまく決めて8番手につけました。その後も順調にポジションをアップさせ、1周目のうちに5番手まで浮上。さらに前をいく選手たちをあっさりとオーバーテイクしつづけ、3番手で3周目に入りました。1コーナーの進入では、前の選手のインを突いて2番手に浮上。いよいよトップを走行する選手に迫る態勢に入りかけた4コーナーで、尾野選手はハイサイドを起こしてしまいました。なんとか立て直そうとしたものの、その後グラベルに出て転倒してしまいました。再スタートを試みてマシンを引き起こそうとしましたが、レースへの復帰は難しい状態で、残念ながらそこでリタイアを余儀なくされました。
「レース中は余裕があったし、焦りもなかったのですが、急にリアタイヤが滑り、抑えきれずに転倒してしまいました」
言葉少なく状況を振り返る表情は残念そうでした。次戦での雪辱を期した尾野選手ですが、チームは転倒時の負傷を考慮し、次戦の欠場と代役選手の起用を発表しました。尾野選手の一刻も早いレース復帰を、日本中のファンが待ち望んでいます。
第16戦オーストラリアGP(フィリップアイランド・サーキット) - 欠場
3週連続開催の2戦目、第16戦オーストラリアGPを尾野弘樹選手は欠場しました。
前週の第15戦日本GP決勝レースで転倒した際に左足を負傷し、精密検査を行ったところ、第五中足骨の骨折が判明したのです。チームとも協議をした結果、最後の2戦を万全な状態で迎えるために、このオーストラリアGPを欠場して治療に専念する、という結論に達しました。このレースには、尾野選手の代役として18歳のスペイン人選手が参戦を果たしました。
第17戦マレーシアGP(フィリップアイランド・サーキット) - 予選:11番手 決勝:リタイア
日本とオーストラリアに続き3週連続で開催されるマレーシアGPは、今年で25周年を迎えます。日本GPで負傷した左足を早く治すため、日本で1週間の静養期間を過ごした尾野選手は、骨折の気配を感じさせないほど元気にセパン・サーキットに現れました。
「前回走れなかったストレスを発散するためにも、今回は初日からしっかりと走りたいと思っています」
尾野選手は、2012年と2013年にアジアドリームカップ(ADC)に参戦していましたが、その際にもこのセパン・サーキットを経験しています。ADC参戦初年度の2012年は、開幕戦として2レースが行われ、尾野選手はダブルウインを達成。翌2013年も同じくダブルウインを挙げています。
「だから、ここは印象もいいし好きなコースですね。知っているコースだから、ツインリンクもてぎのように落ち着いた気持ちで臨めます。今回のレースこそ、今シーズンまだ達成できていないシングルフィニッシュを目標にしたいと思っています」
その言葉どおり、尾野選手は初日のフリー走行からさっそく力強い走りを披露しました。
午前のフリープラクティス1回目はトップタイムの選手から1.934秒差の16番手でしたが、マシンのセットアップを日本GPのときの状態に戻して臨んだ午後のフリー走行2回目は、セッション開始直後から上位につける好調な走りになりました。セッション終了間際に多くの選手たちがタイムアップを狙う場面では、尾野選手もさらにラップタイム短縮を目指してアタックを開始しましたが、その矢先の9コーナーで転倒を喫してしまいました。
「コーナー立ち上がりでハイサイドになってしまいました。どんどん行けるセッティングだったので、最終ラップだったこともあってつい、気持ちがはやるあまり早くスロットルを開け過ぎちゃいました……」
と、やや苦笑気味に尾野選手はそのときの様子を振り返りました。この転倒でタイムを更新できなかったため、この日の総合順位は8番手になりましたが、トップとのタイム差は0.480秒で、内容面ではまずまずの初日だったといえそうです。
翌土曜日は午前にフリープラクティス3回目、午後に40分間の予選が行われました。この予選で、尾野選手は今までと少し違う戦略で臨みました。通常、選手たちはセッション中にマシンセッティングの変更やタイヤ交換などで数回のピットイン/アウトを繰り返しますが、今回の予選では、尾野選手はピットインを1回だけに絞りました。最初の走行でセットアップの確認などを行ってピットインをしたのち、セッション終盤の時間に渾身のタイムアタックを行う、という組み立てです。この作戦が功を奏し、最後の周回では自己ベストを更新。ポールポジションの選手からはわずか0.629秒の差でしたが、激戦のMoto3クラスでは多くの選手がわずかのタイム差の中にひしめき、尾野選手は4列目11番グリッドからのスタートになりました。
「1回のピットインにしたのは、集中力を保つ作戦でした。最後は混雑した集団の中に絡んでしまいましたが、そのなかでもスリップストリームを使えて、うまくタイムを出せたと思います。
ただひとつ気がかりのは、決勝レースに向けたアベレージタイムを自分で納得の行くまで充分にチェックできていないので、明日は午前のウォームアップでそこをしっかりと確認して、午後の決勝に備えたいと思います。予選タイムは上位陣と離れていないので、レースでしっかりとついていきたいですね」
日曜日の決勝は18周で争われます。レースは正午にスタート、尾野選手は15番手で1コーナーへ入っていき、トップグループの中で少しずつ順位を上げていきました。この1周目のうちに13番手、3周目は10番手、5周目のコントロールライン通過時には9番手へと着実にポジションアップを遂げます。
そして、その5周目の2コーナー進入のブレーキングで、前方数名の距離が詰まって混雑する気配を見せました。尾野選手の目前にいたチームメートのバスケス選手は、これを嫌って右側へ回避。尾野選手の真っ正面へ動く格好になったため、両選手が接触してともに転倒する結果になってしまいました。
バスケス選手の立場からすれば、前の混乱を避けて右へ避けたところ後ろから尾野選手が接触してきた、ということになります。一方、尾野選手にしてみれば、コーナー進入で自分とは異なるラインにいた斜め前方の選手がいきなり自分の真ん前に飛び出してきた、という格好です。レーシングアクシデントである以上、どちらかの一方的な過失、とはいえませんが、せっかく上位グループで走行していた両選手にとっては、チームメート同士で接触して転倒してしまうという残念な結末になってしまいました。
「前の選手が突然こちら側に寄ってきたので避けきれなかった、というのが正直なところです。自分のペースは悪くなくて、トップグループについて走れていたんですが、ちょっとあれは予想できないシチュエーションでしたね。レースなのでしかたない、と言ってしまえばそれまでなんですが……。
昨日言っていたとおり、朝のウォームアップではアベレージをうまく刻めて2番手タイムを出すことができ、決勝レースに自信を持って臨めていたので、なおさら残念な結果になってしまいました……」
次戦は長いシーズンを締めくくる最終戦バレンシアGP。尾野選手にはぜひとも良い内容で締めくくってほしいところです。新たなシーズンの戦いへつながる、ポジティブな走りを期待しましょう。
第18戦バレンシアGP(バレンシア・サーキット) - 予選:10番手 決勝:8位
いよいよ2015年を締めくくるバレンシアGPです。バレンシア・サーキットは、コース全体を観客席が取り囲むスタジアム形状で、ファンにとっては恵まれた観戦環境ですが、コース幅が狭く中低速コーナーが主体となるレイアウトであるために、選手たちにとってはラインの自由度も低く、オーバーテイクの難しいサーキットです。
尾野弘樹選手は、CEVレプソル選手権時代にすでにこのコースを経験しており、また、Moto3クラスのプレシーズンテストが開幕前の2月に当地で行われたこともあって、走行データと知識はすでに蓄積しているコースです。
しかし、尾野選手は「ここは知っているコースなんですけど、実はちょっと苦手で、自分には難しい部分もあるんです」と苦笑しながら正直に話しました。
「小回りするコーナーが多く、そこがあまり得意ではないのですが、そうはいっても今回がシーズン最終戦なので、いい形でシーズンを締めくくるためにベストの結果を出したいと思います。特にこの数戦は結果を残せていないので、まずは完走してポイントを獲得すること、そして、今シーズンの自己ベストリザルトで終えることを目指したいと思います」
最終戦のレースウイークは、11月上旬とは思えないほど温暖な気象状況になりました。季節柄、日の出は遅く、早朝の時間帯こそ少し冷え込む傾向がありますが、日差しが出てしまうと半袖でも十分に過ごせる陽気になります。路面温度も、午後は30℃近くまで上昇しました。
午前のフリープラクティス1回目で順調な走り出しを見せて3番手タイムにつけた尾野選手は、午後はレースを想定したユーズドタイヤでの走行に取り組みました。路面温度の上昇もユーズドタイヤでの走行という条件には厳しく、結局この日は総合18番手。
「午後は路面のグリップ自体は上がっていると思うのですが、ユーズドタイヤでの走行だったために、そのアドバンテージを活用することにはなりませんでした。明日は、ユーズドタイヤでもしっかりと好タイムを維持できる方向を見いだしたいと思います」
そう話していた通り、土曜は着実にセットアップを積み上げ、前日よりもマシンの仕上がりは着実に前進しました。その成果はラップタイムにも反映され、午後の予選で尾野選手が記録したタイムはトップから0.304秒、という僅差のパフォーマンスでした。しかし、このバレンシアサーキットでは上位選手たちのタイムが非常に接近しており、大勢の有力選手がわずかなタイムギャップの中にひしめいていたため、尾野選手の予選順位は10番手、4列目から決勝レースを迎えることになりました。
「今日は午前から午後にかけてマシンもよくなり、ラップタイムも詰めてトップまで0.3秒だったのですが、10番手という順位がちょっと悔しいですね。でも、アベレージタイムもコンスタントなので、明日はいいレースができると思います。上位陣はタイムも接近しているので、順位を上げるチャンスも多い反面、ミス一つで大きくポジションを落としてしまう可能性もあると思います。だから、難しいレースにはなるでしょうね」
好材料は、レース前に話していた苦手意識を克服しつつあること、とも述べました。
「ここまでのリザルトを見る限り、好きなコースと同じような位置につけているので、苦手な部分はさほど影響していないかなと思います。今シーズン一年を走ってきて、事前テストのときと比べてもだいぶうまく走れるようになった実感があります」
日曜の決勝レースは、全24周で争われます。早朝に霧が発生したために午前のウォームアップ走行は時間をやや遅らせることになりましたが、レースは予定通り、午前11時にスタートしました。サーキットを埋め尽くした大勢のファンが歓声を送る中、尾野選手は序盤からトップ集団につけて着々と周回を重ねていきました。
全周回の折り返し地点を過ぎた頃に、前との距離が少し開き始めましたが、尾野選手は慌てずに冷静なライディングで安定したラップタイムを刻み続けています。ところで、今回の最終戦は、尾野選手のチームメート、ダニー・ケント選手のチャンピオン獲得がかかった、彼とチームにとって非常に重要な一戦でした。ケント選手は序盤の周回で中段グループに沈んでいましたが、少しずつ順位を上げ、やがて尾野選手に追いつきました。チームメートの年間総合優勝に配慮して、尾野選手はケント選手をひとまず前に出し、その背後で再び走行を続けました。
最終ラップに臨むコントロールラインを通過したときには、ケント選手が11番手、尾野選手は12番手という位置でした。ケント選手のチャンピオン獲得が確実になったことを見定めてから、尾野選手は最後に自分の走りをするためにペースアップしました。ケント選手を安全にオーバーテイクして前に出て、チェッカーフラッグを受けたときには尾野選手は8位。ケント選手は9位フィニッシュで、年間総合優勝を達成しました。クールダウンラップで両選手は肩を抱き合い、お互いの健闘を称えあいました。
「ケント選手は抑えながら走っていたのか、予想以上にペースがあまり上がらなかったので、後ろから追いついてこないか少し心配しながら走っていました。最後は、チャンピオン獲得が確実になったので、自分のリザルトを優先しました。
途中でペースが落ちて前と少し離れたときは、タイヤが厳しくなっていて、いつもの自分ならそこで負けじとついていこうとしていたために転倒することが多かったのですが、今回は最終戦なのでしっかりと完走することを考えて走行し、結果的に今季自己ベストリザルトでフィニッシュすることができました。いい締めくくりになったと思います」
来シーズンの尾野選手は、Honda Team Asiaから引き続きMoto3クラスに参戦します。2016年は、アジアドリームカップから一歩ずつ確実に前進を遂げてきた尾野弘樹選手にとって、大いなる飛躍の年になることは間違いないでしょう。