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MotoGP学科

タイヤの話

1限目

タイヤの割り当て方と公平性の確保

ここまでの説明からもわかるとおり、各レースではライダー1人あたりにつき、スリックタイヤ20本(フロント8+リア12)、レインタイヤ8本(フロント4+レイン4)の計28本が供給される。

このタイヤを各選手に割り当てる作業は、レースウイークに先んじて木曜日に行われるが、作為や不正が一切介在することなく平等性が徹底されるよう、チームやブリヂストンはこの作業に関与しない。具体的には、FIMの担当者が、サーキットに運び込まれたタイヤの山からスリックタイヤとレインタイヤをランダムに選択し、MotoGPクラス18選手のゼッケンが記されたステッカーを貼って割り当てを行う。

割り当てが終了すると、28本のタイヤの山を18名分に仕分ける作業は、ブリヂストンが担当する。こうして各選手に割り当てられたタイヤは、FIMがバーコード登録を行い、バーコードデータはFIMとブリヂストンが管理する。

レースウイークのフリー走行や予選、決勝レースなどで選手が使用するタイヤは、ピットボックス内でFIMがバーコードをスキャンし、あらかじめ登録されているものと一致することを確認する。

以上のように、FIMによる無作為なタイヤの抽出と綿密な照合という作業が行われることにより、各選手への割り当てタイヤに偏りがないことと、割り当て後のタイヤ交換などの不正防止が保証される。




タイヤワンメーク化によるレース戦略への影響

タイヤの使用本数は、昨シーズンもある程度の制限が敷かれていたが、実際は2社のタイヤメーカー同士が競争を行っている前提での制度だった。したがって、そこで使用されるタイヤは構造、形状、コンパウンドのいずれも様々な種類のものが用意されていて、選択肢も幅広く、マシン特性やライダーの好みにあったタイヤをいかに早く見つけ、見極めていくか、ということがレース戦略上でも重要視された。

しかし、タイヤワンメーク化の導入により、無限に近い可能性の中から最良のものを探り出す作業は、フロント、リアともに硬めと柔らかめの各2種類から妥当な組合せを選択する作業へと変わった。実際に、昨年までなら頻ぱんに耳にした「いいタイヤがみつかった」というライダーのコメントや、「早くタイヤの見極めを済ませてマシンのセッティングに進みたい」というチーム関係者のコメントは、今シーズンはほとんどといっていいほど耳にしない。これはつまり、タイヤ選択の幅が一気に狭まり、レース中の各セッションでは今まで以上にマシンのセッティング作業に集中している、ということだ。安定性・耐久性・グリップ力、というタイヤ性能を上手に引き出すマシンのセットアップが重視されるようになった、といってもいいだろう。

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