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2016.05.06 ロードレース世界選手権 第5戦 フランス フランスGP プレビュー

フランスGP プレビュー

会場:ル・マン・サーキット  全長:4.2km
決勝:[MotoGP]28Laps  [Moto2]26Laps  [Moto3]24Laps
MotoGP レポート

第5戦フランスGPが、5月6日(金)から8日(日)までの3日間、ル・マン・サーキットで開催されます。フランスGPは、1951年に第1回大会が行われ、今年で53度目を迎えます。ル・マンでは、1969年に初めてグランプリが開催されました。その後、ポールリカール、ノガロ、マニクールなどを経て、2000年に再びグランプリの舞台となり、今年で17年連続、ル・マンでは通算29度目の開催となります。

パリの南西約200kmに位置するル・マンは、世界で最も有名なサーキットの一つです。自動車の24時間耐久レースは、市街地コースを一部利用するサルテ・サーキットで開催されます。そして、二輪の24時間耐久レースとグランプリは、一周4.185kmの“ブガッティ・サーキット”で行われます。

5月のル・マンは天候が不安定で、過去10年を振り返っても、07〜09年の3年間と、2012年と13年は、雨のレースとなり、レース中にマシンを乗り換えることができる“フラッグ・トゥ・フラッグ”が適用されました。過去2年はドライコンディションで行われていますが、この季節のル・マンは、シーズンを通して雨の多いグランプリとして知られています。

ル・マンは典型的なストップ&ゴー・サーキットで、俊敏な旋回性と、エンジンの鋭い加速性能が問われます。しかし、全体的にストレートが短く、パッシングポイントが少ないために、シケインが勝負どころとなり、激しいブレーキング合戦が見ものです。同時に、予選グリッドがとても重要になる大会のため、フリー走行から激しいアタック合戦が行われます。

4戦を終えて総合首位につけるマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、2年ぶりの大会制覇と今季3勝目を狙います。MotoGPクラスにデビューした13年はポールポジション(PP)を獲得し、雨になった決勝では3位でフィニッシュ。14年には2年連続PP(Moto2クラスから数えると3年連続)を獲得。オープニングラップで他車との接触を避けるために10番手までポジションを落としましたが、そこからすばらしい追い上げをみせて優勝しました。昨年は、MotoGPクラスで3年連続のPP獲得を果たすも、決勝ではタイヤの消耗に苦しんで4位でした。今年は、その雪辱に燃えています。

前戦スペインGP後にヘレスで行われたテストでは、ウイングレットやスイングアームなどニューパーツのテストをこなし、手応えある結果を残しており、その成果を試す戦いとなります。

チームメートで総合4位のダニ・ペドロサは、最高峰クラスで2度目の大会制覇を狙います。昨年は、右腕の手術からの復帰戦となり、予選8番手から決勝に挑んだものの、レース序盤に痛恨の転倒。再スタートを切りましたが、ノーポイントに終わる悔しい結果でした。ペドロサは、ル・マンでは、125ccクラスで1勝、250ccクラスで2勝、MotoGPクラスでは13年に優勝しています。今年は3年ぶりの大会制覇と通算5勝目に挑みます。

前戦スペインGPで11位になり、今季初ポイントを獲得したカル・クラッチロー(LCR Honda)は、今季ベストリザルトに挑みます。前戦スペインGP後に行われた公式テストでは、Repsol Honda Teamと同様にニューパーツを試し、大きな手応えを感じ取っていました。今年はウインターテストから好調でしたが、転倒が続いてなかなか結果につなげることができていないものの、スペインGPからは上り調子。昨年は予選4番手から決勝に挑みましたが、転倒リタイアという残念な結果に終わっており、今年はその雪辱に挑みます。

MotoGP2年目のシーズンを迎えるジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、第2戦アメリカズGPで負傷した右足の状態も徐々に回復し、今大会はほぼベストな体調で臨むことができそうです。昨年の大会はポイント圏内を走行するも転倒に終わっているだけに、今年はしっかり走りきって、開幕戦カタールGP以来のポイント獲得を目指します。チームメートのティト・ラバトは、前戦スペインGPで18位に終わり、今季初めてノーポイントのレースとなりました。今大会は、2戦ぶりのポイント獲得と第2戦アルゼンチンGPの9位をしのぐベストリザルトを狙います。

Moto2 レポート

接戦が続くMoto2クラスは、今大会も厳しい戦いが予想されます。昨年の大会では、PPから1秒差以内に17台という接戦になりました。今年はどの大会も昨年以上の厳しい戦いが続いているだけに、今年はさらなる混戦が予想されます。

4戦を終えて総合首位のサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)は、前戦スペインGPで今季初のポール・トゥ・ウインを達成。総合首位をキープするだけでなく、2位以下に対するリードを広げることに成功しました。昨年の大会では予選2番手、決勝4位。今年はどの大会でも昨年を上回るリザルトを残しているだけに、今季初のMoto2クラスの連勝が期待されます。

総合2位につけるアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)は、第3戦アメリカズGPで今季初優勝、第4戦スペインGPで3位と表彰台の常連に定着してきました。今季のチャンピオン候補の一角につけるだけに、今大会はロースとともに優勝候補の筆頭です。昨年の大会はMoto2クラス初PPを獲得するも、決勝ではノーポイントに終わりました。今年は2年連続PPと今季2勝目の期待が寄せられます。

ディフェンディングチャンピオンで総合3位につけるヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)は、ホームGPを迎えます。昨年の大会は3位表彰台に立って地元ファンの声援に応えましたが、今年は表彰台のさらに高い位置で地元ファンの期待に応える意気込みです。

総合4位のトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)は、2年連続の大会制覇を狙います。総合5位のジョナス・フォルガー(Dynavolt Intact GP)は今季3度目の表彰台と今季初優勝に闘志。総合11位につける中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)もル・マンを得意とするだけに、今季初のフロントローと今季初表彰台を狙います。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、2年目のシーズンを迎えるホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)が首位から15点差の総合2位でフランスGPを迎えます。昨年の大会はルーキーながら予選2番手と、デビューして初のフロントローを獲得しました。しかし、決勝では転倒リタイアに終わっているだけに、今年はその悔しさを晴らすレースとなります。2年目の今年は、昨年のイギリスGP以来、11戦ぶりのPPと念願の初優勝に挑みます。

総合6位につけるニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)は、開幕戦カタールGPで優勝して幸先のいいスタートを切りました。しかし、不安定なコンディションとなった第2戦アルゼンチンGPで10位。第3戦アメリカズGP、第4戦スペインGPは転倒リタイアに終わっています。昨シーズンもアメリカズGP、スペインGPはノーポイントに終わりましたが、フランスGPから調子を上げました。今年もフランスGPからの巻き返しに燃えています。

総合7位のエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)は、スペインGP後に行ったトレーニングで右手首を負傷しましたが、手術が成功しました。完全な状態にはほど遠いものですが、ル・マンに赴き、メディカルチェックを受けて、出場するかどうかを決めることになります。昨年の大会では2位表彰台に立っていますが、今年は厳しい戦いを強いられそうです。

総合8位につけるヤコブ・コーンフェール(Drive M7 SIC Racing Team)は、前戦スペインGPで5位と上り調子。今大会は今季初表彰台を狙います。総合9位には、アルゼンチンGPで初優勝を達成したカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)で、今大会は今季2度目の表彰台を狙います。パウィのチームメートの尾野弘樹は、総合16位。前戦スペインGPは転倒リタイアに終わっているだけに、今大会はその雪辱と今季初表彰台に挑みます。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合1位)
「ル・マンは、さまざまな状況に備えなければいけないサーキットですが、コースは好きです。まずは天気。雨もよく降りますし、どうなるか全く分かりません。昨年は日曜日に気温が急上昇しました。そのため、レースではフロントのグリップにかなり苦戦しました。また、ストップ&ゴーのレイアウトで、低速コーナーがたくさんあり、ブレーキングと加速が非常に重要になります。オースティン(アメリカズGP)と同じように戦えるのか、もしくは、大きな挑戦が待ち受けているかも知れません。オースティンでは思った以上に低速コーナーからの加速がよかったです。この前ヘレスで行ったテストでは、もっとグリップが高められるように電子制御とシャシーのセッティングに取り組み、またウィリーを減らすためにマシンのバランス調整にも取り組みました。妥協しなければいけない部分はありますが、ル・マンに向けて役立つ情報は集められたと思います。冬のテスト以来、大きく前進しましたし、さまざまな状況にどれだけ素早く対応できるようになったかを感じています。自信があります。今大会が楽しみです」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合4位)
「ブガッティは楽しいサーキットです。そして、これまでル・マンではいい結果を出してきました。でも今年はいろいろ考えなければならないことがあります。前回のレースではストレートでリアタイヤがスピンしすぎたため、全開で走れませんでした。今週のル・マンも、どれだけタイヤがグリップするかにかかっています。通常、このサーキットはすばらしいグリップを発揮する路面ではありません。そのため、引き続きこの点に取り組まなければなりません。ヘレスのテストでは、コーナー出口のグリップ力を上げ、タイトなコーナーでもっと速く走れるようにサスペンションやそのほかの解決策を試しました。収集したデータがル・マンで実用的なレベルで役に立つことを願っています。そして最後に天候が味方することを願っています」

ティト・ラバト(MotoGP 総合17位)
「このサーキットで僕が優先することは、マシンの感触をよくして、速く走れるようにすることです。もちろん、結果は重要ですが、マシンを仕上げることが、さらに力強い走りにつながります。ヘレスのテストでは多くのことを見つけました。特にMotoGPのラインの違いです。マルケスやペドロサといった速いライダーについていくことができました。そして彼らのHondaマシンがどのように機能するかを見ることができました。ル・マンではこうしたMotoGPマシンならではのラインを試したいです。準備はできています。いつものように100%でがんばります」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合18位)
「ル・マンへ向かうのはいつもいい気分です。シーズンを通して一番好きなサーキットではありませんが、過去に表彰台に上がったことがあります。昨年はプラン通りには全くいきませんでしたが、今週末は一生懸命マシンに取り組めることを願っています。Hondaは全力を尽くしているし、LCR Honda Teamとしてもいつものようにベストを尽くしたいです。フランス中のファンがル・マンに駆けつけてくる大きなイベントなので、楽しみにしています。ここからいい戦いができることを願っています」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合21位)
「ル・マンを楽しみにしています。このサーキットはヘレスのような右回りではありません。前戦スペインGPから約2週間、右足の回復に取り組んできました。毎日調子はよくなっています。ヘレスでのテストでは、いくつかのことにトライしました。あまりうまくいきませんでしたが、これから先の大会に向けて新しいセッティングを見つけられたと思います。このセッティングは、気温が低いコンディションでうまく機能すると思います」

Moto2 コメント

サム・ロース(Moto2 総合1位)
「ル・マンはとても楽しいサーキットです。このサーキットはストップ&ゴーのレイアウトで、ハードブレーキングが求められ、僕のライディングスタイルに合っています。チャンピオンシップでいいポイントを獲得するためにも、セッティングを進め、ここ最近のレースのように優勝争いに加わりたいです。アレックス・リンスは、このサーキットで昨年とても速かったのですが、昨年はリンスと同タイムでした。今年も彼といいバトルをしたいです。開幕が待ちきれません」

アレックス・リンス(Moto2 総合2位)
「ル・マンは、ほかのサーキットと全く違う特徴があります。そのため、大変なレースになると思いますが、レースウイークの初日からベストを尽くしたいです。今年はいいレースができていますが、サムやヨナス、そしてヨハンもここでは速いので、僕たちも一生懸命がんばらなければなりません。彼らについていきたいです。そして、最後にどんな結果になるのか楽しみです」

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合3位)
「昨年はル・マンで表彰台に立つことができました。地元フランス人のファンの前で達成できて本当によかったです。今週末、もし勝つことができたら、最高の気分でしょう。そうなるように戦います。この前のヘレスでは多くのことを学ぶことができたと思います。ル・マンではたくさんのイベントがあるので、うまくオーガナイズしたいです。ヘレスではロースがすばらしい走りをしていましたが、僕も同じレベルにいたと思います。ル・マンでは僕が一番強くありたいです」

中上貴晶(Moto2 総合11位)
「開幕から4戦、フリー走行、予選の走りをなかなか決勝につなげられず悔しいレースが続いています。前戦スペインGPは、路面コンディションの変化に対応できず、序盤にペースを挙げられなかったのが最後まで影響しました。しかし、レース終盤はペースを上げられたし、路面コンディションの変化に対応していくいい経験ができました。先週の金曜日に、一日カタルニアサーキットでテストを行い、新しいフロントサスペンションに重点を置いてテストをしました。限られた時間の中でしたが、いいテストでした。ル・マンは初めてPPを獲得したコースです。優勝を目標に挑みます」

Moto3 コメント

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合2位)
「ヘレスではもっといい結果を出したかったですが、4位でフィニッシュし、総合2位をキープすることができました。先週の金曜日、モンメロ(バルセロナ)でテストをしているときに転倒して肩を痛めましたが、ル・マンにはいい形で向かうことができます。初日のフリー走行は、ほぼ100%の状態で迎えられると思います。ル・マンのサーキットはストップ&ゴー型ですが、昨年の大会で経験を積むことができました。そのときは思ったようにいきませんでしたが、Estrella Galicia 0,0のクルーの知識が、金曜日のスタートに役立つと思います。日曜日のレースへ向けて、できる限り強くなりたいです」

ニッコロ・アントネッリ(Moto3 総合6位)
「ル・マンはとても好きなサーキットです。いつも楽しみにしています。昨年はいいレースができました。今年もレースウイーク初日からプッシュして、決勝に向けて準備を進めたいです。ここから先はミスを避けて、正しい方向で物事を進めることが重要になってきます。今大会も全力を尽くします」

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合7位)
「ル・マンに行き、レースに出る許可を得るため、木曜日にはメディカルチェックを受けます。サーキットに戻りたいですが、同時に不必要なリスクは負いたくないと思っています。もしレースに出る許可が得られたら、まずはマシンに乗った感触を確かめたいです。それから続けるかを決めたいです。いい結果を出せるコンディションであればがんばりたいです。そうでなければあきらめた方がいいと思います。ル・マンのサーキットは過去2年で常にとても速かったところなので、本当に残念です。今年もまたいい結果を出したいですが、ケガですべてが複雑になってしまいました。でも、大事なことはいつもやってみることです」

尾野弘樹(Moto3 総合16位)
「アメリカズGPのフリー走行で痛めた右足もかなり回復してきました。前戦スペインGPは右コーナーでステップワークがちゃんとできず、タイムをロスしていました。決勝では序盤の混戦の中で後続車にぶつけられて転んでしまいました。グリッドが悪いことがこういうアクシデントに巻き込まれる理由の一つなので、今大会はフリー走行からしっかり走って、いいグリッドから決勝に挑みたいです」