「マシンの特性が、かなりの走りの違いを生んでいると思います。これまで競技を見たことの無い方は、エンジン音や排気音違いはもとより、瞬発力のある2ストロークに対して最初の加速が鋭い4ストローク、そのへんをボウ選手と藤波選手がいかにコントロールしていくかを見るのも楽しみの一つでもあると思います。現代はとにかくマシンの軽量化が進んでいますので、トリッキーな動きになればなるほど2ストロークが有利と言われています。しかし、ボウ選手と藤波選手のマシンはファクトリーマシンですから、そのあたりはかなり作り込まれていると思います。2005年から投入されている4ストロークエンジンは完成度も高く、2ストロークが有利な部分での差をかなり縮めたポテンシャルがあると思っていますし、ライダーは2ストロークが強い場所でいかに勝負をするかという部分も訓練していると思っています」
「イギリス出身の選手とスペイン出身の選手との差というのは、はっきりしています。イギリスの選手というのは湿地帯がすごく得意で、条件が悪くなればなるほど、オーソドックスなスタイルで走り抜けて行く。スペインの選手はわりと乾いた路面でのトリッキーな動きが得意なので、そのあたりで選手の技術の差、得意分野を見ておくのも良いでしょう。この点で日本の選手たちは、グリップの悪いところも走れますし、上り一本なんて長いヒルクライムは日本人が最も得意とするところです。岩盤ゾーンなどは乾いていれば、もしかしたら日本人だけが上がることができるという可能性もあるわけです。藤波選手は特にアクセル全開で行くのが得意なので、ここでうまくいくと、その日の流れが変わるかもしれませんね」
「現在のトップ5にはスペイン人が多く、スペイン人選手もそれなりにグリップの悪いところを走りこなすようになっています。ただ、本当の勝負どころで条件が悪くなればなるほど、あっと驚くような走りを見せるイギリス人選手が『強いなぁ』と感心することがあります。トップ5にはスペイン人選手と藤波選手がいますが、6〜10位のランキングにはイギリス人選手がいますから、その日の天候次第では、イギリス人選手が間に入って来て、面白い戦いになるかもしれません」