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GO BEYOND ~勝利に向けた3チームの限りなき挑戦を追う~
#634 MuSASHi RT HARC-PRO. Honda

「新たな戦いの始まり」

40回という節目を迎えた鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)の決勝後、MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaのスタッフは歓喜に沸くピットロードを見つめていた。ただ、その表情に笑顔はなかった。

7月27日(木)、いよいよ鈴鹿8耐のレースウイークが始まった。3年ぶりの王座奪還を目指すMuSASHi RT HARC-PRO. Hondaは初日のフリープラクティスから順調なスタートを切った。

高橋巧

事前に行われた公開合同テスト後、本田重樹監督は「いい準備ができています。各ライダーと最終確認をして、本番に備えます」と話していた。その言葉通り、この日は中上貴晶がセッション2でトップタイム、総合でも2番手につける2分7秒756を記録していた。

予選でもチームが作り上げてきた新型「CBR1000RR SP2」の完成度の高さが見てとれた。今年から世界耐久選手権(EWC)に準拠した、3ライダーのベストタイムの平均で順位が決まる予選方式が採用された。3人とも2分7秒台に入れ、平均では3番手の2分7秒538。チームは順調にトップ10トライアルに駒を進め、高橋巧と中上に翌日の走行を任せた。

中上貴晶

高橋: 「赤旗でタイムを上げていたラップがリセットになってしまったのは残念ですが、3人ともタイムをそろえられているので悪くないです。満足できるところまでは仕上がっているので、決勝は楽しみにしていてください。明日のトップ10トライアルでは、これまでいい思いをしたことがないので、そろそろ結果を残したいですね」

ミラー: 「赤旗で記録は残らなかったけど、(高橋)タクミはとても速いタイムを出してたね。きっと明日のトップ10トライアルも期待できるはず。ここまで上手くいっているから、決勝もいい結果になると思うよ」

中上: 「3人とも2分7秒5という、悪くないペースで走れました。8耐は安定したラップを刻むことが重要で、そこはどのチームにも負けていないと思うので、決勝に向けて不安はありません。トップ10トライアルは決勝とは違う走りが求められますが、一番は決勝。明日は先輩の高橋選手にいいグリッドを取ってもらうつもりで、自分は決勝に備えます」

大きなトラブルもなく、チームの雰囲気は良好。ライダーも自信に満ちた表情をみせてくれた。

ここまでの鈴鹿は厚い雲に覆われ、時折雨が落ちてくる不安定な天候だったが、29日(土)はやっと日差しが差し込み、鈴鹿8耐らしさを取り戻す。そんな中、決勝上位グリッドを決める、トップ10トライアルが始まった。

高橋巧

ライダーが一人ずつコースに飛び出していき、そのたびに会場から大歓声が沸く。そして、MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaのピットに高橋が登場。マシンには予選用のソフトタイヤではなく、決勝で使用を予定しているタイヤがセットされていた。アタックラップを開始すると、セクター2で暫定トップタイムから、マイナス5秒。全体を2分6秒674でまとめ、その時点でのトップタイムを記録。この記録はすぐにライバルチームに更新されるも、走行後に「決勝レース用のパッケージで6秒台が出せて、気持ち的に楽になりました」と語った。

中上貴晶

続いて、初のトップ10トライアルに挑む中上がコースへ。タイヤはここまでセッションで一度も使用していなかった予選用。初めてのタイヤで一発勝負に出た。アタックを開始すると、会場のモニターにはセクター1でマイナス表示。会場からどよめきが起こった。結果は高橋を上回る2分6秒671。途中ミスもあったが、世界で戦うライダーの意地をみせた。

トップ10トライアルは総合5番手。他のチームも一発の速さは確かにあった。ただ高橋がレース用タイヤを選んだ通り、勝負はあくまでも8時間の決勝レース。セッション後のピットのムードは明るかった。

本田重樹、高橋巧

決勝日、鈴鹿は再び厚い雲に覆われ、いつウエットになるのか分からない天候にピットも慌ただしかった。結局スタートまでに雨は降らず、ル・マン式のグリッドにはドライタイヤのマシンが並んだ。

11時30分、10カウントがコールされ、8時間の長い戦いが始まった。スタートライダーはチームの大黒柱である高橋。5番グリッドから飛び出し、1コーナーを2番手でクリア。ダンロップコーナーに差し掛かると、カワサキのマシンをかわしてトップに。こうして1時間のスプリントが始まった。

高橋巧

今年の鈴鹿の天気は難しかった。スタート後に西コーナーには雨粒が見られ、レース開始から30分もするとそれが強くなり、ラップタイムも10秒ほど落ちた。そんな中、トップを走る高橋は、ヤマハと一進一退のし烈な争いで会場を沸かせ、2番手につけていた。

12時30分、この日1度目のセーフティカー(SC)が導入。このタイミングで高橋はピットへ。黄色腕章をつけたMotoGPライダー、ジャック・ミラーがSCラン中のコースへ飛び出し、トップを走るチームと同一グループの集団につけた。SCランが解除されると、再びヤマハとのトップ争いに。ミラーは、多くのバックマーカーが絡む中でも、MotoGP仕込みの華麗なライディングで果敢に攻め、バックマーカーとヤマハを一気にかわしてトップに躍り出る。ただ、今年もヤマハは強かった。バックマーカーによるトラフィックが少なくなるとペースを上げ、ミラーをかわして引き離しにかかった。

ジャック・ミラー

ミラーは2番手をキープして中上にバトンを渡す。これぞMotoGPライダーという豪快な走りに会場からは大きな拍手が上がった。

この中上のスティントで、MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaに試練が訪れた。トップと1秒近くまで差を詰めていた中上がヘアピンで転倒。すぐに再スタートを切ったが、ステップが破損していた。中上はレース後に信じられない様子で、この転倒を振り返った。

中上貴晶

中上: 「トップと勝負ができるところまで迫っている最中で、自分でもビックリするような転倒をしてしまいました。問題なくコーナーに入ったのですが、フロントが切れ込んで……。」

がっくりと肩を落としてピットへ。チームスタッフはすぐにパーツ交換して、中上をもう一度送りだした。

MuSASHi RT HARC-PRO. Honda

本田監督:「思いもしないまさかのトラブルでしたが、まだまだあきらめていませんよ」


復帰後の順位は4番手。まだまだ優勝をあきらめる位置ではない。スタッフもモニターに映る中上の走りを真剣に見つめていた。

その気持ちはチームメートにも伝わっていた。中上からバトンを受けた高橋は、上位を走るチームより1~2秒早いタイムで周回を重ね、ミラーに交代。

そんな中、後ろにはトップを走るヤマハが。ここで抜かれたら周回遅れ。絶対に抜かれるわけにはいかない。前を走るF.C.C. TSR Hondaを追いながら、ミラーはポジションを守りきった。

中上貴晶

2度目のスティントを終えたミラーがピットに戻る。準備していたライダーは高橋。しかし、ピットからすぐにマシンは出ていかなかった。転倒の影響なのか、原因は不明だがヘッドライトの点灯が不安定になっていた。夜間走行もある鈴鹿8耐では、灯火類の装着が義務付けられており、ヘッドライトが点灯しない場合はペナルティーが課せられる可能性がある。

ピットガレージの前に止められたマシンはすぐにアンダーカウル、フロントカウルと外され修復作業が行われた。ここでロスした時間は2分以上。やっと高橋がマシンに乗り込み、コースに向かっていった。

ジャック・ミラー

レースはなにが起きるか分からない。この時点で4番手のMuSASHi RT HARC-PRO. Hondaと3番手の差は約2分、一周ほどの差があった。しかし、高橋はあきらめなかった。上位勢が2分9~10秒台で走る中、8秒台で周回。鬼気迫る走りで差を詰めていった。

残り1時間43分の時点で、中上と交代。最後のスティントを終えた高橋は、あとは任せたと選手控室に戻っていった。

中上貴晶、高橋巧

中上もあきらめずにプッシュを続けた。しかし、残り1時間が近づいてくるとき、タイミングモニターに映る「#634」のラップタイムに異変が。セクターごとに5秒以上遅い。中上はしきりにリア周りを確認している。通常では考えられないが、ホイールにクラックが入った。それによるスローパンクチャー。レーシングタイムで走るのは不可能だった。

中上貴晶、ジャック・ミラー

ほぼルーティンと同じタイミングでピットに入り、給油、タイヤ交換を行ってミラーが最終スティントへ。日が落ち、ライトオンボードが提示されると、サーキットには光輝くマシンがハイスピードで駆けていった。

周回数214、優勝したヤマハから2周の遅れ。王座奪還を誓ったMuSASHi RT HARC-PRO. Hondaの挑戦は、4位に終わった。

本田重樹

本田監督:「もっともっと、Hondaファンに喜んでもらい、希望を与えられるようなレースを目指していましたが、トラブルなどが出てしまい思うようなレース運びができませんでした。ライダーは全員ががんばってくれました。ハード面も含めて、もっといい環境でレースをさせてあげたかったですね。ただ、彼らもレーサー。与えられた環境の中で精一杯やらなくてはならないことを分かっているので、今後の彼らのレースの励みになると信じています」

MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaのピットは、チームカラーに光輝くグランドスタンド、そして歓喜で沸くピットロードとは対照的な雰囲気で、悔しさがにじみ出ていた。本田監督はスタッフ、ライダーと握手をして、「お疲れさま」と一人ひとりに声をかけていた。

MuSASHi RT HARC-PRO. Honda

高橋:「今年も運がなかったというか、やれることはやれたと思っています。もっと自分が速く走っていれば、トラブルや転倒がなければ……。終わってしまったことなので、今言ってもどうしようもないですが悔しいですね。チームワークもよかったと思っていたのですが、ちょっとした不注意ですべてが台無しになってしまうと改めて思いました。また来年も鈴鹿8耐はあるので、今回が新しいスタートと思って、がんばっていきます」

ミラー:「レースの序盤はよかったけど、終盤にはヘッドライトのトラブルやパンクなどがありアンラッキーだったね。でも、なんとか乗りきってフィニッシュ。その状況での4位は悪くないポジションだ。レースを終えたあとは肉体的にも精神的にもくたくたになった。チームのみんなが一生懸命やってくれ、初めての耐久レースへの挑戦は本当に特別なものになったよ。次に挑戦するときは優勝したい」

中上:「一言では言い表せない内容で、一番(悔しいの)は自分のスティントで転倒という、最大のミスを犯してしまったことです。本当にチーム、メーカーに申し訳ないです。ただ、初めてレギュラーライダーとして参戦して、人としてもライダーとしても、多くのことを学べました。結果については非常に残念でしたが、この学んだことを将来に向けて活かします。そしてチャンスがあれば、またこの場所に戻ってきたいです」

ライダー全員が悔しさをかみしめて、また鈴鹿8耐に挑戦したいと話した。

中上貴晶

本田監督:「レースは1人(1チーム)しか勝つことができない。我々も過去にそういう喜びを経験してきました。今回負けたことをまたモチベーションにして、来年こそはリベンジ。ぜひリベンジしたいです」

ヤマハの圧倒的な強さを目の当たりにしても、MuSASHi RT HARC-PRO. Hondaの勝利への炎は消えていない。新型マシンでの挑戦は今年が初めて。短い期間でここまで勝利を感じさせるマシンを仕上げたのは、さすが名門と言えるのではないか。

次こそは、必ず表彰台の頂点へ。
一つの目標に向かうチーム全員は決してうつむくことなく、次の戦いを見据えていた。

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