9月の声を聞くと、全日本選手権も終盤戦に入ります。全7戦中の第5戦の舞台は、広島県の灰塚ダムトライアルパーク。会場はコンパクトで、観客通路には起伏もなく、観戦は容易な会場です。ただし今回は、朝のうちから小雨が断続的に降り続き、ぬるぬると滑る中を移動することになりました。もちろんセクションはいっそう泥がこねられ、難易度を増しています。
序盤の4セクションをクリーンしたのは、小川友幸(TEAM MITANI Honda)と小川毅士(ベータ)の2人だけでした。しかし第5セクションで小川(友)、小川(毅)ともに1点、黒山健一(ヤマハ)がここをクリーンしたことで、減点1点のトップが3人となり、接戦模様となりました。
その後、小川(友)が第8セクションで5点、第9、第10でそれぞれ1点ずつ減点していくのを尻目に、黒山は第9セクションで1点を失った以外はクリーンを続けていきます。1ラップ目の10セクションが終了した時点で、小川(友)は黒山に11点差をつけられていました。黒山は減点2点、小川(友)は13点です。さらに野崎史高(ヤマハ)が小川(友)と同点となっていました。黒山今季1戦欠場しているため、今年の小川(友)のチャンピオン争いのライバルは野崎です。優勝争いへの注目はもちろんですが、小川(友)と野崎のどちらが上位を取るかが、タイトル争いの行方も左右することになります。小川(友)と野崎に1点差で小川(毅)が続き、2位争いは大接戦となりました。
2ラップ目、雨は降ったり止んだりで相変わらずの空模様でしたが、岩の上には泥がのって、コンディションは悪くなっていきます。このコンディションでほとんどのライダーが1ラップ目より減点を増やしてしまうことになります。1ラップ目は独走状態だった黒山も、2ラップ目には4つのセクションで減点5点となって、あるいは小川(友)の逆転優勝もありうるかという点差となってきました。
10セクション2ラップの戦いを終えて、黒山は22点、2位は野崎で29点、小川(友)は30点でこれを追います。4位小川(毅)は34点。SSの2セクションを残して、3位の小川(友)までに、計算上は優勝の可能性がありました。
SS第1は巨大なタイヤを越え、タイトなロックからU字ブロックに上がる設定。ここまで6位につけている柴田暁(ヴェルティゴ)が最後のポイントまで足つきなしでマシンを運びましたが、泥が乗ったロックはつるつるに滑り、柴田はここで5点。若い氏川政哉(ガスガス)が初めてここを2点で抜け出ることに成功しました。小川(毅)は同じく2点。次にトライするのが、ここまで3位の小川(友)。彼本来の抜群のマシンコントロールで、SS第1、初めてのクリーンが出ました。ここで小川(友)の3位以上が決定し、ライバルのトライを待ちます。
小川(友)に1点リードしている野崎は減点1。これで両者は点差なしの同点となりました。2位争いの流れは、小川(友)に向いてきました。最後にトライした黒山は2点。小川(友)、野崎との点差を6点として、この時点で黒山の勝利が確定的となりました。SS第2での注目は、小川(友)と野崎の一騎打ちの2位争いとなります。
SS第2、最後のセクションは巨大なヒューム管を越え、溝を渡って岩を越えて、最後はジャンプしながら大坂を登る設定です。なかなか難度の高いセクションで、柴田、氏川、小川(毅)と次々5点となり、トップ3のトライに期待が集まりました。
3人のうち、最初のトライは小川(友)。滑るヒューム管で向きを変える際に1点を失いましたが、あとはきれいに走りきってアウトしました。こうなると、2位争いのライバル野崎はクリーンする以外に勝ち目がありません。それが重荷となったか、野崎はヒューム管に登れず、5点となり、ここで小川(友)の2位か決まりました。
勝利はなりませんでしたが、小川(友)はここまで2勝してランキングトップ。ランキング2位の野崎には9ポイント差をつけています。残り2戦、小川(友)は7年連続の連覇記録に挑みます。
小川友幸(2位)
「序盤はよかったのですが、第8セクションで5点となってから減点が多くなり、5点が増えてしまいました。今日のような濡れて滑る路面は得意なはずなのですが、そこで多くの減点を喫してしまい、勝利はなりませんでした。2位獲得は、最低限守るべき結果というところです。ランキング争いとしては悪くない結果ですが、今回は不本意な戦いをしてしまいました。残り2戦、しっかりと戦います」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 24 | 15 |
2 | 1 | 小川友幸 | ![]() |
0 | 31 | 11 |
3 | 2 | 野崎史高 | ヤマハ | 0 | 35 | 11 |
4 | 5 | 小川毅士 | ベータ | 1 | 41 | 9 |
5 | 6 | 氏川政哉 | ガスガス | 0 | 52 | 7 |
6 | 4 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 57 | 7 |
8 | 18 | 武井誠也 | ![]() |
0 | 82 | 3 |
10 | 7 | 斎藤晶夫 | ![]() |
0 | 86 | 3 |
18 | 16 | 砂田真彦 | ![]() |
0 | 96 | 0 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|
1 | 小川友幸 | ![]() |
89 |
2 | 野崎史高 | ヤマハ | 80 |
3 | 黒山健一 | ヤマハ | 72 |
4 | 小川毅士 | ベータ | 64 |
5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 60 |
6 | 氏川政哉 | ガスガス | 54 |
7 | 斎藤晶夫 | ![]() |
39 |
10 | 武井誠也 | ![]() |
29 |
18 | 砂田真彦 | ![]() |
3 |