レジェンド 小川友幸 Gatti - 全日本史上初6連覇への挑戦

2 6連覇への道半ば、苦戦が続いている

6連覇への道半ば、苦戦が続いている

第3戦九州大会は完敗、3位に

 CTJから3週間が経ち、全日本第3戦九州大会は5月13日、大分県の玖珠(くす)トライアルヒルズで行われた。当日は雨で路面が泥々になり、滑りやすい岩場や急斜面で苦戦が強いられる中、絶好調の野崎が圧勝。小川は黒山(2位)にも敗れ、まさかの3位となった。ポイントランキングでも黒山に逆転され2位にダウンと、小川にとっては、まさに完敗だった。悪天候で、足首の痛みも影響したのだろうか。

「脚の痛みもありましたが、それよりもペース配分に問題がありました。ライバルを優位にさせてしまったかな、と思います。競技中、セクションを走る前の下見の段階で、選手同士が互いに牽制しあって、だれかが走るのを待つという時間が長くなりました。あのように時間を費やすのは好きではないですし、見ているお客さんのことを考えても、だれもなかなか走ろうとしないのはなにもメリットがないですから。僕の走りを見たい(見てから走りたい)という気持ちは分かるけれど…。僕がセクションに入れば、皆入るので。黒山選手も野崎選手も、僕の走りを見て走った方が、作戦を立てられるし案も出てくるし。それで先に走った僕がミスをしたので、自分で墓穴を掘った感じでした。ライバルを調子に乗らせてしまいましたね」

小川友幸

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Hondaの日本GP壮行会に、黒山と野崎も参加

 第3戦で小川が無念の3位となった2週間後、2018FIMトライアル世界選手権第2戦「ストライダー日本グランプリ」に向けての「日本人ライダー壮行会」が5月27日にHondaウエルカムプラザ青山で行われ、藤波貴久と小川だけでなく、黒山と野崎も招いてトークショーやデモ走行が披露された。つまりHonda本社の桧舞台や玄関前で、招待されたYAMAHA FACTORY RACING TEAMのライダーとマシンが縦横無尽に走り回ったのだ。昨年9月の「トライアル・デ・ナシオン」(国別対抗戦)でHondaとヤマハが力を合わせて世界3位“銅メダル”を獲得したことをキッカケに、昨年11月の「Honda秋の祭典」(本田技術研究所二輪R&Dセンターで開催)に黒山を迎えて、藤波や小川らがトライアルショーを披露した。そのお返しとばかりに、今年の「ヤマハファミリージャンボリー」(5月20日/ヤマハ発動機本社にて開催)に小川が呼ばれて黒山と競演した。メーカーを問わず日本グランプリを盛り上げようというものだ。トライアルは、「自分との闘い」という競技性があり、もともと兄弟のように仲がいい4人の選手によって、楽しいトークと華麗な妙技が繰り広げられたのだった。こうした交流もまた、小川が望んでいたものであると言う。

「そうですね、あれは全日本とは区切りが違うので、僕的にはお祭りっぽい感覚です。メーカーの垣根を越えてなにかやりたいと、前から言っていました。朝霞(Honda秋の祭典)から始まったのですが、モーターサイクルショーでの競演もそうですし、ほかの業種ではないことですね。ライバル同士が同席するのはトークショーぐらいですよね。ライバルメーカーの選手が仲よく一緒にデモ走行するなんて、ありえない(笑)。トライアルならではのことですし、ライダー同士で『やりたいね』ということの一つでした。メーカーの方々の理解があって実現したイベントでした。トライアルは一緒に走らない(セクションは1人ずつ走る)ので、イベントなどでも腹を割ってできますし。ちゃんと楽しんで行動できるので、それが評価されるのかなと思います」

小川友幸

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世界のレベルアップを実感した2日間

「日本人ライダー壮行会」でのアピールも功を奏したのか、2018トライアル世界選手権シリーズ第2戦となる「ストライダー日本グランプリ」は6月2日〜3日に2日間合計18,400人の観客を集めて、栃木県のツインリンクもてぎで行われた。2日制で1日ごとに決勝があり順位がつけられる競技において、小川は1日目に足を負傷しながらも14位、2日目は13位と健闘した。昨年の小川は2日間とも20位だったので、その雪辱は果たしたことになるが、本人は一ケタ入賞を狙っていたことだろう(注・一昨年の小川は、2日間とも9位に食い込んでいる)。

世界選手権はセクションの中での停止が失敗(減点5)となるノーストップルールで行われており、停止が減点されない全日本とは大きく異なる。さらに金曜日に全日本にはない予選があり、そしてまた2日間とも決勝がある日本グランプリはセクションはもちろん、体力的にも難易度が高い。それだけに全日本ライダーの実力が試されるところでもあった。ともあれ、ここでの負傷が、さらに小川を苦しめることになったようだ。

「成績的には、いいところと悪いところがはっきり出たセクションが結構あって、乗れていないわけではなかったのですが、今の世界のレベルでは、ちょっとしたミスをしたら、一ケタ入賞は到底できないと実感した2日間でした。昨年に比べて、大きくレベルアップしていると思います。1日目に足をはさんで、右足の小指と薬指の骨にヒビが入ってしまい、足の甲のじん帯も筋を伸ばしてしまいました。これが思いのほか治らないので、右足首とともに精密検査をしました。完治はまだですが、よくなってきてはいます」

小川友幸

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逆転優勝するも、納得できない走り

 日本グランプリから1カ月半のインターバルをおいて、全日本第4戦北海道大会が7月15日、和寒町のわっさむサーキットで行われた。ここまでで黒山、小川、野崎の3人がそれぞれ1勝ずつする、三つ巴の接戦状態となっている。今回は黒山が世界選手権フランスGPの電動バイククラスに参戦するため欠場、小川と野崎のどちらが2勝目を上げるか注目された。競技は4時間の持ち時間で10セクションを2ラップしたあと、上位10名がより難易度の高い2つのスペシャルセクション(SS)に挑む。大会当日は第3戦に続いてまたも雨となり、泥々になった路面は非常に滑りやすく、泥の急斜面から岩を上るセクションなどがライダーたちの行く手を阻んだ。1ラップ目の小川は、トップの野崎と3点差で2位となっていたが、2ラップ目に小川が野崎を逆転。2ラップを終えた時点での結果は、トップの小川と野崎が2点差の僅差だった。SSは、一つ目のセクションで小川が野崎に7点差をつけて、最終セクションを待たずに優勝を決めた。第4戦終了現在のポイントランキングは、今季2勝目“一番乗り”を果たした小川が黒山を逆転して再びトップに返り咲いている。とはいえ、納得できない走りであったと言う。

「1ラップ目の2位から追う立場で、プレッシャーはありましたが、ギリギリ1位を取れてよかったです。でも内容的に、自分では納得できないですね。1ラップ目の第9セクションでの失敗は、足を1回着いて減点1でいけたところを勝負に出すぎて無理矢理やって転倒して、減点5になってしまった。試合のペースを自分で崩してしまったので、あそこは減点1で行くべきでした。第10セクションも得意の高い段差上りで、2ラップとも上がれずに落ちてしまった。それらの問題を見つめ直して、次戦は納得のいく走りをしたいと思います」

小川友幸

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